見出し画像

RED BLADE(仮題)vol.2

3人が扉を開け、廊下にでると片方の突き当りは行き止まりで一方方向にしか行けない仕様となっていた。左右を見てもお互いの姿が見えないことを確認するとそれぞれ中央ホールに向かって歩き出した。

廊下には10個ほどの扉があり、最後の扉の前を通り過ぎ、中央ホールにでる仕切りの部分にはなにやら人が通れるようになっている空港の金属検査ゲートのようなものが取り付けられていた。ゲートの上部には青字の明朝体で書かれた”正常”の文字が点灯している。

自分にやましいことなど何もない、Dinnerがなんの警戒もなくそのゲートをくぐり抜けたその直後、後ろにいた女性がゲートをくぐろうとした時、歪んだ警告音がなった。

”ビー!ビー!ビー! 不正検知、不正検知”

動揺した女性はその場で立ち尽くし、すぐさま周りから係員が駆けつけ、その女性は取り押さえられた。ゲートの上部を見ると先ほどまで青色の正常を示していた文字が、赤色の”異常”に切り替わっている。

”お客様、当パーティでは筋肉増強行為、いわゆるドーピングは固く禁じられております。申し訳ございませんが、別室にて強制ログアウト手続きをとらせていただきます”

「そんな・・・わたし何も・・・」

必死の抗議も虚しくその女性は係員に両腕をつかまれたまま、どこかへ連れていかれた。

ゲートをくぐった先を少し歩いているとそこは円形をくりぬいたようなドーナツ状になっていて、そこから各控室の廊下が放射線状に伸びた形になっていることに気づく。どうやらこの中央の部分が目的地のようだ。

気づくと遠くのほうでもちらほら警告音が響いている。

そんな状況に少々あっけにとられていると、後ろから威圧感を大いに含んだ元気な女性の声が聞こえてくる。

´ったくどこに目つけて歩いてんの!邪魔っ、はい、どいてどいて´

「Dinnerさん!ひっさしぶり!」
「ふたりとも抜け駆けなんてひどいんじゃない?私だって仲間でしょ??楽しいこと独り占めなんて許さないわよ」
右手でピースサインをかかげるシアラーの姿がそこにあった。

「あんた、どこ行ったってハチャメチャやるから黙っておいたのよ!!!」
その後ろからやってきたYUHがショートブルゾンのポケットに手を突っ込みながら、シアラーにツッコんだ。

「なーんだかんだいったっていつもフォローしてくれるじゃない???、ね!Dinnerさん??」

 「はぁ?煙バカがなに言ってんだか・・・フォローするこっちの身にもなりなさいよ」

Dinnerのヤレヤレ顔を満面の笑みを作りながら見つめるシアラー。

「ごめんね♡」

 「あんた、それ絶対思ってないでしょ」
  「アンタそれ絶対思ってないでしょ、つーか全く可愛くない」

先輩ふたりの意見がシンクロする。

「それにしても、結構な数の別室行きがいたもんね。そんなにまでしてもするものなの??6makerさんもなんだかものすごい気合が入ってるみたい。一体なにするのかしらね~Dinner」
YUHは周りをキョロキョロながら世間話をはじめた。

「そうね、ここまでするってことは賞金の類がもらえるとかじゃないの??つーかあんたがわざわざ来るってことはどーせそっちが目当てなんでしょ???」

体は正面を向きながらも目線をシアラーのほうに向ける。

「バ、バレた??? んまいーじゃんいーじゃん、ほら、ぼやぼやしてないで会場にいきましょ!」

シアラーは流れるような手つきでタバコに火をつけながら背を向けて歩いて行った。すれ違う他の参加者達の半ば軽蔑したような視線を感じながらもDinnerとYUHもそれに続いた。

円状の廊下に設置されたいくつかある、中央ホールへの扉を開けると2重扉になっていて、その狭く暗い空間に譜面台のような形状をしたタッチパネルがあった。バックライトの青い光が空間に異常な明暗のコントラストを産んでいる。

Dinnerがタッチパネルに近づくと表示画面が切り替わり、さらに明るい光が3人の顔を下から照らした。

—ご自身のNoとご希望の出場種目をひとつ、ご選択ください,,,---

タッチパネルの画面にはそう表示され、種目名の後ろには出場可能残枠が記されている。

「ふーん、、なんかスポーツ大会みたいなものかしら。楽しそうね。そうしたら3人別々の競技にでてみましょうよ」

Dinnerがそう提案するとYUHは「そうね~、Dinnerは何にする??」

「わたしはなんでもいいけど、FULLBODYってのはなんか痛そうだから嫌、しかも参加可能枠9って・・・シアラー、あんたコレいきなさいよ、得意でしょ?身体動かすの」

「なーーーんか言い方がひっかかるけど、Dinnerさんがそう言うならいいよーーー、んま、たしかにーーー?好きだしね。人ぶん殴るの。」
シアラーはまんざらでもないような表情で二人の肩の後ろから背伸びをしながら画面を覗いている。

「バカね、まだ殴るって決まったわけじゃないでしょ、したらYUHはLEGSいって、私はワンハンド。」

「OK♪」
YUHはそう言うとこなれた手つきでモニターを操作していく。

—No.167 Dinner Goodspeed ONEHANDMUSCLE ENTRY OK…—

—No.141 Yuh Yamada TWOLEGSMUSCLE ENTRY OK…—

「そーいや、シアラー、あんた飛び入り参加だけど登録されてんのかね・・・笑 ・・・あ・・・!”Noが分からない方はコチラ”ってあるじゃん・・・。シアラーっと、お!でてきたでてきた」

—No.999 Shearer Leene FULLBODYMUSCLE ENTRY OK…—

3人分の登録が終わるとそれぞれに入館証の4辺が光り始めた。Dinnerは青、YUHは黄色、シアラーは赤。どうやらこれで参加を簡単に区分けるようだ。

「3人で全部取ったら結構な額になるんじゃない???さて修羅場をくぐってきたPUNKSの意地、見せてやりましょ!!!」

シアラーは2人を鼓舞すると、中央ホールへの扉を勢いよく開けた。

—--

すり鉢状に広がる観客席、一番下の席の近くにアリーナに下る東西南北4つの階段があり、天井に設置されたやわらかな照明の光が階段を降りた先の中央のスペースを照らしている。スペースは八角形のオクタゴン状で野球の内野ほどの広さがあった。観客席の最上部の一角にはガラス張りの特別室のようなものも見える。

観客席はちらほら埋まっており、3人も空いた席に着座した。近況などを談笑していると、ほどなくして場内が暗転する。

天井のスポットライトが中央のアリーナを一直線に照らし、そこに立っている黒のタキシードスーツを着た男がマイクを片手に大きく声を発した。

『Ladies and gentlemen Hello everyone!,welcome to  Aesthetic body celebration!みなさーーーーん、ようこそいらっしゃいました。
 本日は~・・・6maker様の創作数、200点を達成した記念といたしまして、皆さまを素敵なパーティにご招待いたしました。
 審美的な筋肉の祭典、その名も~Aesthetic body celebration!!!、今日は皆さんの素敵な筋肉を精一杯披露してくださいませ!本日司会を務めさせていただきます、わたくしギャラクシー鈴木と申します!』

 ギャラクシー鈴木と自らを称した男。金髪のオールバックに赤縁のサングラス、タキシードスーツに合わせたであろう黒光りする先の尖った革靴が胡散臭さを倍増させている。

『それでは開会に先立ちまして、本パーティの主催者にしてスーパーインクレディブルフォトグラファー、筋肉を愛し、筋肉に愛され、これからも筋肉を追い続ける男、6maker様よりご挨拶を賜ります』

ギャラクシー鈴木がそう振ると、最上段にあるガラス張りの部屋の照明がつき、その中にぼんやりと人影のようなものが見えた。そこへ向け観客席にいる参加者たちの視線が一斉に注がれる

『君たち今日はよくきてくれた。私が見染めた君たちの、その偉大なる筋肉を今日はとくと見せてもらうよ。もちろん、各競技の最優秀者にはそれなりの報酬を用意している。大いに楽しいでほしい。今回は規模を大きくしての開催だからね、私も楽しみだよ。さぁパーティの始まりだ!!!』

”Oh----------ーーーーーーー”

スピーカーから発せられたメッセージに観客席から館内を揺らすほどのどよめきがおこる。

どよめきが徐々に収まるのを待って鈴木が再びマイクを握った。

『それではさっそく最初の競技をスタートいたします。最初の競技は~ONEHANDMUSCLEーーーーーーーーーーっ!!!入館証が青色の方は1階までお越しくださいませ~』

鈴木のコールとともに1階の床の一部が次々と逆ハの字に抜け、その下から数台の頑丈なスタンディングテーブルがせり上がってきた。普通のスタンドテーブルと違うのはテーブル上に片手で握れる程度の対角線上に設置された2つの棒がついていることだ。

「さて、いってくるわね。」
Dinnerが腰をあげながらそう言うとYUHが心配そうなトーンで声をかける。

「あれ、どうみても腕相撲よね。あんたその手で大丈夫なの??」

「だいじょうぶかって??フフ♬ それ、私の対戦相手に言ってあげたら??んま見てなさいって」
そう言いながらDinnerは階段を降りて行った。

「Dinnerさんってそんなに力強いイメージないけど、、YUHさん知ってる?」
どうやらシアラーもDinnerの義手のことが心配なようだ。

「今では完全な事務方、つーか技術者だからね、あんまりが戦ってるとことかケンカしてるとこ、見たことないのよね。。昔はあの刀で最前線で戦ってたみたいなことがWAGMIのマスターから聞いたことはあるけど・・・」

「ふーん、そうなんだ。どうなることやら、だね♬」
シアラーは頭の後ろで手を組み、足も組んだまま天井を見上げた。

ステージには様々な衣装を着た女性たちがスタンドテーブルの前に列をなしていた。一番左のテーブルの最後尾にWAGMIのベストを脱ごうとしているDinnerの姿が見える。

各テーブルには審判がつき、テーブルの状態を入念にチェックしている。

『さぁ!!!ONEHANDMUSCLEをスタートします。この競技は上腕と肩、大胸筋などの美しさとその瞬発力を競うarm wrestling、そう!腕相撲です!』

『ルールは簡単。みなさんご存じですね!”READY GO”と審判が発声したら、相手の手の甲をテーブルにつけるだけ!注意点としては、右手の肘はテーブルに、両足は必ず地面につけておいてくださいね~、さぁ鍛え上げられた筋肉を大いに見せつけてください!!!! それではスタートです!!!!』

ギャラクシー鈴木の号令とともに次々と各テーブルでONEHANDMUSCLEがスタートする。

”READY GO!!!”

各テーブルのレフリーの号令が響く。

試合はほんの数秒で決着がついていく。力強く拳を掲げる勝者と腕をさすりながらステージから去っていく敗退者。勝敗は明白だ。

ステージに残るONEHANDMUSCLE参加者はどんどん少なくなっていく。

Dinnerの最初の対戦者はツインテールに髪を結い、こんがり焼けた肌にフリルのついたメイド服を着た女性であった。メイド服の上半身は下着のみ着用しており、同性のDinnerでも目のやり場に困るほどだ。

『あのーお客様、これは・・・義手ですか??』
レフリーが心配そうな目をしながらDinnerに話かけてきた。

「そうよ、なにか問題でも??特別な機能がついているわけではないわ?むしろ身体との連動性が少ない分、不利じゃない??つーか完全なディスアドバンテージよね?」

『たしかに・・・そうですな。失礼いたしました。それではセットしてください。』

Dinnerは左手で卓上の持ち手をしっかり握った後、ツインテールの女性とテーブル上で手を組み、目を合わせた。相手も目をそらさない。二人だけの間で数秒間の沈黙が流れる。

『READY GO!!!』

勝負は一瞬だった。
Dinnerの傾けた腕は相手の手の甲をテーブルに完全に押し付けた。

『勝者、No.167 Dinner!!!』

ツインテールの女性は苦虫をつぶしたような顔をしながら地面に膝をつき、へたり込んだ。

「ごめんね、痛い思いさせちゃったかしら??相手が悪かったわね。」

(---フフ、Dice-Kさんの義手はそんじょそこらの義手と違うんだから---)

他のテーブルも次々と勝負は決していく。

「Dinner!!!!ファイトーーー!!!いけるいけるーーー!!!このままやっちまいなー!!!ほら!シアラー、あんたも応援しなさいよ!」

自分の座っていた観客席のほうを見るとYUHが嬉しそうな顔をして飛び跳ねている。笑顔を作り、手を降るとYUHもそれに気づき手を振り返してきた。

(---さすがにここまでくると、ちょっときつくなってきたわね---)

Dinnerは順調に勝ち上がっていき、気づけば残り4人、準決勝まで勝ち上がっていた。

笑顔とは裏腹にDinnerの義手は悲鳴を上げ始めていた。ムリもない、試合を重ねるにつれ強敵になっていく筋肉隆々の相手との連戦。それは他の選手達も同様であろうが、義手と他の筋肉を繋いでいるつがい部品に力が集中し、今にも外れそうだ。

準決勝の相手は真っ赤なリングコスチュームを着たプロレスラー風の女性だ。鍛え上げられた上腕は今までの対戦者とは比べ物にならない。下手すると貧弱な男性の脚くらいの太さである。

準決勝からは司会者 鈴木の紹介コールが入る。

『義手というハンデを背負いながらここまで勝ち抜いてきた猛者!!!この細い身体のどこからそのパワーが生まれてくるのか~ ワンハンドテロリスト、Dinner Goodspeed~!!!』

『対するは~』

『 プロレスラーとは?そう、どんな時も最強でなければならない!負けるわけにはいかないのだ、絶対王者に私はなる!!! イザベラ・ムーア~!!!』

イザベラ・ムーアとコールされた女性は両腕をくの字に曲げガッツポーズを決めた。上腕二頭筋の隆起が女性のそれではない。

“WAーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!”

観客席の盛り上がりも最高潮に達している。

スタンドテーブルを挟んで対峙する二人。身長はDinnerのほうが小さいため、相手を見上げる形となった。

『SET!!!』

互いに一歩ずつ距離を詰め、テーブルに右ひじをつき、手を合わせる。
この時ばかりは観客席の声援やざわつきも声をひそめ、勝負が始まる瞬間を固唾を飲んで待っている。

手を合わせながらも最初は目を合わせていた二人も自分の左手と右手の間のスペースに目線を落とし、一番力の入りやすい態勢へとモーションを変更した。

『READY・・・』

GOサインまでの短い時間、審判は二人の手の上に両手を重ね、タイミングをはかる。Dinnerの額からひとすじの汗が右目の外側を通って顎につたう。

手を合わせる二人の呼吸音が聞こえそうなほど静まり返る館内・・・Dinnerは腰を落とし、両の足で地面をつかむように構えをとった。

『GOっっ!!!!!』

”はぅぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!”

試合がスタートした瞬間イザベラが奇声をあげ、一気に右手を掌屈、そのまま体重をのせようと身体を左に寄せる!!!

Dinnerもそれに応戦!!!一度は手の甲を折られそうになるも、五分のところまで手首を戻す。最大限の力をふり絞る二人の両腕はプルプルと震え、硬直状態に入る。

堰をきったように館内に声援があふれ、両者の戦いを応援し始めた。

「Dinner!!!!!!!!やっちまえーーーーーー!!!!!!!」
YUHは興奮しているのか少々語気が荒んでいるようだ。

硬直して10秒弱、動きがあった。

”てめーーこのやろーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!”

プロレスラー特有の気合を入れたイザベラは右ひじの位置を数センチ横にずらし、別のベクトルから体重をかけようと試みる。

(---ヤ、ヤバい・・・---)

歯を食いしばり懸命に堪えるもその時点での自分の筋力より相手の筋力が上回っていることを直感した。

負ける。Dinnerがそう感じた瞬間。

「…HeavyBoost mode on」

義手の一部から音が鳴り、義手が右ひじから手首に向けて徐々に熱を帯び、かすかに蒸気を吹き始めた。館内の熱気や歓声に埋もれ、審判を始めこの変化に気づくものはDinnerを含め誰一人いなかった。

するとさっきまで押し込まれていたはずのDinnerの腕が突然、ピタリと動かなくなる。直前まで勝ちを疑っていなかったイザベラの顔は困惑の表情で滲む。

(---?! 私が負けるはずが・・・---)

『っ・・・コノヤロウ・・・!』

—--

『・・・勝者っ・・・イザベラ・ムーーーアーーーーーーーーーーーーっ!!!!』

審判のコールに我に返ったDinner。自身も驚きの表情を隠せない。
何が起きた?!「負ける」そう思った瞬間、一瞬記憶が飛んだ。何が起きた???しかも相手は床に膝をついている。

審判がイザベラの元に勝ち名乗りを上げようと移動する。イザベラは審判に肩を借り、苦悶の表情を浮かべながら左こぶしを高々とかかげた。

(------どういうこと.....???-------なんであっちの勝ちなの??.....-------。)
(------やっば.....スタンドテーブルまで壊れてるじゃん-------。)
(------奇跡の大逆転ってやつ??-------。)
(------あきらかにDinnerって人が勝ってたよね???.-------。)
(------なんか反則でもしたんじゃないの???.-------。)

館内のあちこちが疑惑で支配された。そんなどよめきを背中で感じながらDinner自身もわけがわからずその場に立ち尽くした。

試合をジャッジしたレフリーが鈴木にポータブルパッドを用いながら状況説明をし、勝敗理由を理解した鈴木がそのままマイクを握った。

『観客の皆様!ただいまのジャッジにつきましてご説明申し上げます!!!こちらのスクリーンを御覧くださいませ!!!』

巨大なスクリーンには先ほどの試合が審判の目線で明瞭に映し出されていた。

場面はイザベラが「テメーーーコノヤロウ!」と叫んだその時、そのまま一気に押し込まれそうになったDinnerの右腕がピタッととまる。
次の瞬間、限界まで伸びきったゴムが放たれたごとくのスピードでそのままイザベラの甲をテーブルに叩きつけた。その勢いは凄まじく、叩きつけた勢いで床に固定しているはずのスタンドテーブルが傾き、イザベラもろともなぎ倒していた。

スクリーンは勝敗を決した部分のスローモーションに切り替わる。Dinnerの腕がイザベラの腕をテーブルに叩きつけた瞬間が拡大され、繰り返しスローで再生される。

『御覧の通り、イザベラ選手の甲はたしかにテーブルに着手いたしましたが、その前にDinner選手の右ひじがテーブルから離れ、また右足も床から離れております!!!!従いましてDinner選手の反則負けによりイザベラ選手が決勝戦への進出となります!!!!!』

“WAーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!”
館内はあらためてイザベラの決勝進出を祝福する。

「あーあ、負けちゃった。なーーーにやってんのよDinner!!!反則なんてもったいなすぎるーーーーー!!!」
YUHは自分ごとのように悔しがっている。

「Dinnerさんのことだから、なにか理由があったんじゃないかな???一瞬だけど様子がおかしかったように思えたけど??」
シアラーは冷静に試合を観察していたようだ。

ステージではもうひとつの準決勝が終わり、決勝戦を迎えようとしていた。その試合に背を向け、Dinnerが階段をのぼり、二人の元まで帰ってきた。

「ごめん、負けちゃった、ちょっとダサかったわね」

Dinnerはむりやり笑顔を作り二人に声を発した。

「ホントよ!!!なにやってんのよ反則なんて!!!腕相撲の基本でしょ!!!ひ・じ・は・テー・ブ・ル・!!って。ねぇシアラー!」

 「ちょっと私に振らないでよ・・・にしても大丈夫??Dinnerさんちょっと顔色悪いけど・・・」

   「えぇ 問題ないわ。連戦連戦で最後の方は頭の血管ちぎれそうだったけどね。ちょっと座ってればだいじょうぶよ。ほらYUH、次はあんたの番でしょ、さっさと準備しなさいな」

「わかってるわよ、わたしはアンタみたいなヘマはしないんだからね」

 「はい、はい。あんたの負けず嫌いはPUNKS No.1。ゆっくり観戦させてもらうわ」

  「YUHさんがんばって~」

シアラーは相変わらず両足をプラプラさせながら煙草を吸っている。

Dinnerが観客席に腰掛け、YUHとシアラー言葉を交わしている間、ONEHANDMUSCLEの勝者が決まっていた。Dinnerに辛勝したイザベラは戦いで痛めた右手が災いして決勝戦で崩れるように負けていた。

『・・・様、おめでとうございます!!!皆様、盛大な拍手を!!!なお各競技の優勝者には全競技終了後6maker様より直々にお写真を撮っていただき、その場で副賞が授与されます。トロフィーは後日NFT化され、6makersChainに永遠に刻まれることになります。』

優勝した選手がトロフィーを片手にガッツポーズをかかげ、全方向にアピールする。それに呼応するように観客たちは拍手と歓声を送った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?