博士

旅のスタイルはひとそれぞれ【スマホ博士のひとり旅:山根康宏】

第0回

携帯電話研究家で香港在住の山根博士による、ケータイやスマホ以上に“こだわり”の多い、“ギーク”な目線の旅コラム。

第1、3、5金曜日更新
<著者:山根康宏>

「旅が好き」。そう、自分は旅するのが大好きである。学生時代は時刻表を毎月購入し、周遊券片手にあてもなく日本各地を旅していた。目的は観光地へ行くとか名物料理を食べるとかではなく、知らない土地に行って街歩きをする、そんな旅を繰り返していた。移動の計画を立てるのも面白かったし、トリッキーな乗り継ぎ方法を時刻表で調べては実際にそれを試したりしていた。もちろん学生旅行だからホテルにも泊まらず夜行列車と駅寝の繰り返し。気の合う友人と行動を共にすることもあったが、基本は一人旅だった。

現在はフリーランスの携帯電話研究家、ジャーナリストとしてほぼ毎月海外各地を訪問している。とはいえ今は計画もなく旅をすることはほとんど無く、海外のどこかで行われる展示会に合わせて取材を兼ねた旅行をすることがほとんどだ。ということは人から見ればこれは「旅」ではなく「出張」となるのかもしれない。

そもそも「旅」とは何だろうか。日常生活から離れ、自分探しに出るのも旅だろうし、お金をためてショッピングやグルメなど贅沢三昧するのも旅だろう。ただし後者は「旅行」と表現したほうがいいのかもしれない。バックパック片手に気ままに各国を移動する、そんな姿がもっとも旅らしい、という考えもあるだろう。

自分の場合はその土地を訪問する目的が「展示会取材」や「記事のまとめ作業」あるいは「取材後の休養」など何であれ、現地に行けば携帯電話ショップやキャリアのお店、家電量販店などを必ず訪問している。それらのお店があるのは観光地よりもその土地の繁華街であることが大半だ。つまり携帯電話を追い求めれば、自然とその土地の人々の生活するエリアを歩き回ることになるのである。そんなエリアには地元のマーケットがあり現地の食材が売られていたり、あるいは学生の集まるカフェがあったりなど、意外な発見がありそれはそれで面白い。

また闇で輸入されたスマホや裏ルートで開通したSIMカードが販売されるような店は、繁華街からちょっと離れた怪しいエリアに集まっているケースが多い。一見すると危険な場所なようだが、実はそこでは活発なビジネスが行われているため意外と安全だったりする。店の関係者も移民であることが多く、外国人が訪問すると歓迎を受けることも多い。とはいえカメラ片手に観光気分で行く場所ではなく、あくまでもスマホやSIMカードを買う「客」として店を訪れた場合の話だ。

SIMカードを売る屋台の店員や果物屋のおばちゃんなど、そんな地元の人と仲良くなると「あそこの店は美味しいよ」とか「ガイドブックには出ていないけどその先にある史跡は見ておいた方がいい」なんて地元の人ならではのアドバイスを受けることもある。それを頼りにお店に行ってみたら実はハズレだったなんてこともあるが、それも「旅」の醍醐味、いい思い出だろう。時にはスリに囲まれたり、旅行者が入ってはいけないエリアに足を踏み入れ慌てて逃げてきたという失敗談もある。そんな時は自分の気のゆるみを改めて引き締めたりする。

ガイドブックを見ないわけではないが、初めてモスクワを訪問した時は日本からわざわざ取り寄せた地球の歩き方を香港の自宅に忘れてしまった。それでもモスクワの街中はふらふらと動き回るだけで毎日が楽しかった。約1キロメートルの長さに携帯電話ショップが連なるアーケードを発見できたのも、事前情報無くそれっぽいエリアに足を踏み入れた時に自分の嗅覚がフル回転したからだろう。

場所はどこであれ、普段の生活の中では見つけられない、新たな発見や出会いと遭遇できる、それが楽しくて自分は旅を続けているのだろう。普段生活している香港ですら、実は毎日が新しい体験の連続だ。旅が終われば香港の生活が始まり、そして再び旅に出る。今の自分の生活は刺激に満ちた、飽きることのない日々の連続なのだ。

なお今回は第一回のネタなので、無償で全文を公開している。この下に「この続きをみるには」と表示されているが、この先には文章は無し。次回以降から有償コンテンツとなるので、気に入った方はぜひ購読していただければと思う。

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