映画路線の実現に必要な高スペック

先月発売された『ファイナルファンタジーXVI』は事前に「神ゲー」などと期待されながらもその期待にはこたえきれなかった作品との評価で落ち着きつつあるわけですが、ようするに人々はゲームらしいゲームとしてのFFを期待していたわけであり、かつての国民的RPGとしての姿を思い浮かべたがゆえの「神ゲー」という前評判であったと考えられるわけです。

それはおそらく任天堂時代のFFを指した表現であったと考えられ、今作はVII以降に選択された映画路線を連想させる作風であったことから、一転して酷評の嵐にさらされてしまったのだと思われます。

しかし、VII以降のFFはおおむね映画路線を選択しており、今作もその路線になるであろうことは容易に想像できる話でした。

それでも事前にあれほど期待されたのはMMORPGとしてのXIVを新生させた吉田直樹プロデューサーの作品であったからであり、吉田プロデューサーならユーザーの気持ちをくみとってくれる、という淡い期待があのような過大な評価につながったと解釈できるわけです。

しかし、しょせん吉田プロデューサーはオンラインゲーム畑の人間にすぎず、従来型のオフラインゲームの世界においては新人に等しい存在にすぎなかったがゆえに、今回のようなやや破綻した作品になってしまったと考えられるわけです。

結局オンラインゲームの市場に国民的という言葉は似合わなかったわけであり、その分野においては卓越した手腕を発揮した吉田プロデューサーであっても、手も足も出なかったというのが実態なのでしょう。

なぜFFは任天堂を選択しない

今回の失敗によっても明らかなように、市場の小さいPlayStation 5において新たに国民的RPGを誕生させることは困難というか不可能であったといえるでしょう。

それにもかかわらず次世代機戦争で騒がれたVII以降FFのナンバリングタイトルは全てプレステをメインプラットフォームとするかたちで展開されているわけであり、その時代全体をとおしてFFは国民的RPGとしての地位から転落していったといえるわけです。

そういった状況に嫌気がさしたのがあのカプコンだったというのは有名な話であり、元々はプレステで展開されていたバイオハザードシリーズが2000年代に入り任天堂に移行したことはゲーマーならば知っている話といえるでしょう。

そして、皮肉にもそのカプコンは常に新作がゲーマー目線であるとして今でも評価されているわけです。
スクウェア・エニックス(というかスクウェア)とは好対照であるといえるでしょう。

そして今作です。

その異常なまでの「神ゲー」という事前の評価もまた、そうしたゲーマー目線が期待されての話だったわけであり、FFXIVを新生させた吉田プロデューサーならそれをわかってくれるはず、とみな期待していたわけです。

PlayStationがプラットフォームとして選択されているにもかかわらず。

事前に任天堂のドット絵時代のFF全6作品がピクセルリマスターとして絶大な支持をうけていたことも、そうした評価につながったのでしょうか。

それならばSwitchをプラットフォームとして選択すればよかったのに、と思う人もいるでしょう。

しかし、これはテクニカルな理由から、実は不可能な話であったのです。
それがスペックの問題でした。

映画路線の実現に必要なPlayStationのスペック

普通のユーザーはゲーム機の性能になど興味を示さないでしょうが、これはゲーム機に限らずだれもが手にするスマホにも関係する話であり、知っておいて損はないでしょう。

基本的に高度な作業を実現するにはパソコンやゲーム機側に高い性能が必要であり、安価で低い性能のパソコンやゲーム機でそれを実現することは困難であります。

たとえば家計簿作成などの軽作業用に購入したノートパソコンにゲームを入れてみたくなって入れてみたものの遊べなかった、という経験をした人は多いのではないでしょうか。

たとえばY!mobileや格安SIMなどにゲームアプリを入れてみたものの、まったく動作せずに遊べなかった、という経験をした人は多いのではないでしょうか。

もちろんゲームにもよりますが、それは機械そのものの低い性能に原因があり、そうしたゲームを遊びたければ、最新のiPhoneやAndroidなどが必要になるわけですが、当然のことながら10万円を超す価格になるわけであり、庶民にとっては手の届きにくい選択であるといえるでしょう。

パソコンであればゲーミングPCなどという主婦層には無縁のものが必要になるわけです。

そこまでして最新のゲームを遊びたいと思う一般人はそう多くはないでしょう。

そうした問題に目をつけたのが任天堂だったわけであり、高性能を売りにするPlayStation 3に対抗するかたちで、低スペックであるものの安価で手をだしやすいWiiを投入して大成功をおさめたことは記憶に新しいといえるでしょう。

しかし、これには一つだけ問題があり、その性能の低さゆえに、必然的に高性能を要求する最先端のゲームは提供できなくなってしまうわけであり、必然的にVII以降映画路線を選択して高い性能を要求するようになったFFシリーズは発売できなくなってしまうわけです。

そもそもVII自体それが原因でNINTENDO64には提供されなかったわけですが。

ちなみに、2000年代以降PlayStationではなく任天堂を選択するようになったカプコンも、当時の新作であった『バイオハザード5』をWiiではなくXbox 360向けに発表していますが、これもスペック上の問題からそうした選択にならざるをえなかったという側面はあるようです。そこでXbox 360を選択するというあたりが当時のカプコンとPlayStationの確執を反映しているようですが。

いずれにせよVII以降FFが選択した映画路線にはPlayStation並みの高性能が要求されるようになったわけであり、そこで性能的に大差ないはずのXboxではなくPlayStationにこだわるのは、当時のカプコン同様に現在のスクウェアなりの意地があるからと解釈することはできるでしょう。

総括すると、現在のFFがPlayStationを選択し任天堂を選択しないのは映画路線によってスペック上そうしなければならなかったからであり、PlayStationを選択してXboxやパソコンを選択しないのは意地の問題と考えられるわけです。

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