二枚目から三枚目へ移行した北山宏光

筆者自身はここ十年まともにテレビを観ていないのでまったく知らなかったわけですが、ジャニーズ所属のグループ、Kis-My-Ft2のメンバーとして知られる北山宏光がグループからの脱退と事務所退所を表明していたようです。

なぜ今日になってそれを知ったのかというと、又聞きで『音楽の日』という番組で司会の中居正広がつっこんだという話を知ったからであり、それで気になって調べてみたら先月には退所を表明していたようです。

正直今のテレビは数ある選択肢の一つにすぎず、昔のように世界の全てでもあるかのごとく絶対的な存在ではなくなっているので、そこにだれかがいることもだれかがいなくなることにも興味はもてないわけです。

グループの結成そのものは2005年ということで歴史はあるようですが、CDデビューした2011年というのは既にAKB48など半素人が台頭して芸能界をかき乱していた時期であり、YouTubeなども話題になりつつあった時期でもあり、テレビの魅力は相対的に落ちていたといえるでしょう。

実際に筆者はグループのデビュー当初からインパクトに欠けるグループだなとは思っており、KAT-TUNのデビュー曲である「Real Face」のようなインパクトのある楽曲は一つも出せなかったグループなのではないかと思っています。

国民的アイドルグループというには地味な印象は拭えず、それは後続のグループにも同様にいえることではありました。

反面当時から勢いがあったといえるのがお笑い芸人であり、その犠牲になったともいえたのがKis-My-Ft2だったといえるでしょう。

芸人の社会的地位の向上、ジャニーズの衰退

2010年代というのはざっくりいってしまえば芸人の社会的地位が著しく向上した時代であるといってよく、特にダウンタウンの復権が目立った時代であるといえるでしょう。

ダウンタウンといえば『リンカーン』における「芸人の芸人による芸人のための番組」というキャッチコピーが象徴するようにお笑いが全てという存在であり、それゆえに芸能人に対してはつっかかるような姿勢が目立ち、それが芸人の社会的地位が低かった時代においては世間から嫌われる理由になっていました。

しかし2010年代に入りそれまで対立関係にあった芸人が傘下に入るような動きをみせるなど芸人の社会的地位の向上にあわせるように復権の動きがみえるようになり、世間もじょじょにそれに追随していったという流れがありました。

Kis-My-Ft2がCDデビューした2011年というのはそうした流れの端緒にあたるような時期であり、それまで芸人はジャニーズに対しては頭が上がらなかったわけですが、むしろジャニーズ側が下手に出るような態度をみせはじめるようになります。

そのジャニーズ側からしてみれば屈辱的ともいえる流れの犠牲になったのがまさにKis-My-Ft2だったわけであり、当初は北山宏光も木村拓哉ばりの二枚目のような印象を醸し出していた記憶が筆者にはあります。

二枚目から三枚目へと転身せざるをえなかった北山

筆者が北山にこだわるのはKis-My-Ft2のメンバーの中で最も印象に残る顔立ちをしていると感じていたからであり、当人もそれなりのプライドをもって当初は二枚目のアイドルとして活躍しようと考えていたのではないかと思います。

しかし、それをするには時代の流れがお笑いに向き過ぎていたわけであり、必然的にそうした音楽番組に出演すれば芸人顔負けのトークを披露せざるをえなくなるわけです。

芸人の力が強いのにジャニーズだからという理由だけで無言を貫くわけにはいかないですよね。
だからあの山Pでさえ2010年代以降は意外な素顔をみせるようになり、一部ファンをガッカリさせたことは知っている人もいるでしょう。

Kis-My-Ft2が悲劇的だったのは当初からそうせざるをえなかったということであり、2013年にフジテレビで放送開始された『キスマイBUSAIKU!?』はそうした流れを端的にあらわしたタイトルでも話題になりました。

二枚目が売りであるはずのジャニーズ事務所がブサイクって意味がわからないですよね。
ここに当時既に始まっていたジャニーズの苦境を垣間見ることができるわけです。

そして派生ユニットの舞祭組も結成されるわけですが、これも今になって考えてみるとひどい名前ですよね。これに憧れてジャニーズを好きになる女性ってどのくらいいるんでしょう?

でもそれをしなければ成立しないぐらいにお笑いの力が増していたということであり、イケメンとブサイクのはざまにあるKis-My-Ft2はある意味で時代の流れを捉えた存在だったとはいえるのでしょう。

当初は舞祭組を斜に構えてみていたはずの北山もいつしか二枚目のキャラクターを捨て三枚目に転身したように筆者にはみえていたものです。

しかし、結局それはジャニーズにはプラスに働かなかったわけであり、北山も当初の理想とする活躍ができなかったため、今回の退所にいたったのではないか、というのがおおまかな見立てではあります。

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