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リモートでも息をぴったり合わせるには?eスポーツのプロチーム「Rush Gaming」がしていること

「ニューノーマル」なんて呼ばれる、新しい働き方が求められはじめた今。
仲間と離れて、一人で働くこともめずらしくなくなりました。そこで、私たちデジタルホールディングスは「一人だけど、孤独じゃない」さまざまな働き方を取材。チームや組織で働く意味を、見つけていきたいと思っています。

今回ご登場いただくGorouさんは、さまざまな対戦型ゲームで勝敗を競う“eスポーツ”のプロ選手。選手育成やストリーミングなど様々な活動を行う企業​​「Rush Gaming」に所属するeスポーツチームのリーダーです。4名のチームメンバーは全国に散らばっており、日々の練習やミーティング、試合には、オンラインで取り組んでいます。

Gorouさんが所属するチームの専門は「Call of Duty」というガンシューティングゲーム。銃撃戦で敵を首尾よく倒すには、メンバー同士の連携がとても大事だといいます。離れた場所で、力を合わせて戦う面白さやチーム運営の工夫をうかがいました。

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Gorou
富山県出身。趣味はボードゲーム、得意なものはパズル。好きな事は、「勝つ為に努力すること」。
2012年発売のCoD BO2からCoDをプレイし始め、2018年Call of Duty が日本で初めて本格的にプロeスポーツ化されたシーズンから競技シーンに登場。初めて出場したesportsルールの大会でBest4入賞し頭角を現した。直後にプロチームSunsisterに所属し、2018年 第2回プロ対抗戦に出場。翌2019年にRush Gamingに移籍し、以降不動のチーム指揮官、そしてメインARとして活躍。2020年度シーズンから、Rush Gaming CoD部門のリーダー及びキャプテンを務める。


メンバーとはオンラインで毎日2回、かならず顔を合わせる

デジタル五郎

――Gorouさんがプレイする「Call of Duty」は、FPS(First Person Shooterの略。一人称視点で進めていく3Dガンシューティング)のゲームですよね。いろんなゲームがあるなかで、どうしてFPSにハマったんですか?

FPSって、すごく複雑なゲームなんです。銃を撃っているだけに見えて、じつはブレを制御しながら銃を構えたり、動く敵に照準を合わせたり、マップ全体を見て戦略を練ったりと、いろんなことを同時進行しています。各スキルを磨きつつ、マルチタスクも上達させていかないと、まともにプレイできない。難しいからこそ、練習してうまくなったら面白いだろうなと思い、のめりこんでいきました。

――いまでは「Call of Duty」の第一線で活躍するプロチーム「Rush Gaming」で、リーダーを務めているGorouさん。チームは、1年を通じてどのように活動していますか?

「Call of Duty」は年1本くらいのペースで新作が出るので、そのリリースに合わせて1年のスケジュールが進んでいきます。新作が出たらその練習をはじめ、数ヶ月すると国内外で大会が開かれる……といったイメージですね。「Call of Duty」の大会は主に4~5人1組のチーム戦で行われるので、本番までに各チームで練習を積んでいます。

大会がない時期でも毎日かならずやるのは、16~18時のミーティング。ここでは前日の練習の振り返りや、新しい作戦の共有などを丁寧に話します。そのあと、21~25時は実戦形式の練習です。

――毎日2回、メンバー揃ってオンラインで顔を合わせるわけですね。

そうです。あえて1日2回に分けてみたら、なんだかコミュニケーションが円滑になった気がしていて……短い時間でも繰り返し接すると、「単純接触効果」というもので相手への印象が良くなるらしいんですよ。僕らも後から知りましたが(笑)。


指示出しや返事は、離れているからこそはっきりと

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――チームで戦っているとき、Gorouさんはどんなポジションなのでしょうか。

僕はだいたいうしろから援護する役回りなので、銃を撃ちながらも、次の動きについてメンバーに指示を出すことが多いですね。ただ、いまのRushは基本的に「作戦を思いついたやつが喋る」スタイル。僕だけに限らず、全員がプレイしながら「ここを攻めよう」「あっちへ行こう」などと指示を出しあっています。

――敵と銃を撃ちあいながら、瞬時に作戦を考えて共有し、すばやく動いていく。操作も大変ですが、オンラインだと単純に、指示がかぶってしまったりしそうです。

そういう意味では、少しでも早く指示を発したメンバーに従うのが基本のルールですね。判断のスピードが勝敗に直結してくるので、「正しい判断」よりも「早い判断」を大切にしているんです。

あとは、指示のフレーズをわかりやすくすることもポイント。「3.2.1.Go」と簡潔にカウントをとったり、「行くよ」「OK」くらいの短いやりとりをしたりして、クイックに動いています。

――離れていても、チームの連携がとても大切だということが伝わってきます。

そうですね。FPSは、1対1だとただの撃ち合いにしかならないので、勝率は五分五分なんです。でも、チームが連携して2対1に持ち込めれば、一気に有利になる。メンバーと息を合わせられたら、違う位置から同じタイミングで敵を撃てます。でも、タイミングがずれると敵に当たらないどころか、味方同士で撃ち合ってしまいかねません。

――息をぴったり合わせるために、どんなことに気をつけていますか?

まずは、細かいシチュエーションをいろいろと想定して、チームで練習を重ねること。それから、当たり前だけど返事をすることがすごく大切です。たとえば試合中に「あの敵、なんとかできる?」と誰かが尋ねていたら、ちゃんと声を出して「できる」「無理」などと反応する。プレイ中に限らず、ミーティングや日常生活でもそうです。返事や挨拶ってふつうのことなんだけど、オンラインだと意外とおろそかになってしまって……マイクやカメラでもちゃんと拾えるように、徹底してリアクションすることを心がけています。でもそのおかげか、いまではメンバーの声のトーンを聞くだけで「機嫌が悪いな」とか「今日はテンション高いぞ」ってわかるようになりました(笑)。

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――すごい! 以心伝心ですね(笑)。

4人がそれぞれ通じ合って、自分の役割をきっちり果たさないと、やっぱり勝てないんですよね。連携も一人ひとりのプレイもおろそかにできないのは、大変なところでもあるし面白いところでもあるなと思います。でも、頑張ってみんなで考えた戦略がうまく決まる瞬間は、それだけでもうれしいです。


メンタルコーチングや目標の共有で、チームをより強く

――プレイのほか、ミーティングなどで気をつけていることはありますか?

戦略や方針などを伝えるときは、テキストではなく口頭で話すようにしています。昔は文字にまとめて送れば間違いなく伝わると思っていたんですが、じつはそうでもないんですよね。テキストだと細かいニュアンスまで伝わらないし、長い文章になればあまり読み込まない人が出たりもする。だから、全員が集まる毎日のミーティングで、必要に応じて画面共有などもしながら、話す時間をとるようになったんです。結果、作戦の勘違いや連絡ミスはだいぶ減りました。

――一般的には文字連絡のほうがミスを減らせるように思えるけれど、チームに最適なのは音声だったんですね。ほかにも何か工夫している取り組みがあれば、教えてください。

外部のメンタルコーチを呼んで、チームと個人でがっつりコーチングを受けています。たとえば、一人ずつ同じ質問に答えて、それぞれ回答が違うところを見る、とか。当たり前だけど、お互いの価値観が違うんだなってことを理解する機会になるんです。もっと具体的なところでは、練習中などに「難しい」という言葉を使わないと決めました。「難しい」と言うと、そこで思考停止しがち。だから「簡単じゃないね」「どうしようか?」など、答えを導けるような言い方に変えるんです。こうした細々とした方法を、コーチから学んでいます。

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メンタルコーチングの様子

――いろんな工夫をされているんですね……! 離れていても力を合わせるために大切なことって、最終的には何だと思いますか?

「明確な目標の共有」です。今期のRushは「日本一の成長率を誇るチームになること」という目標を掲げています。定義は「強さ」「メンタル」「魅力」の3本軸。「強さ」はシンプルに戦績で見ます。「メンタル」は、コミュニケーションや一人ひとりの心の強さがどうだったか。「魅力」は、SNSやYouTubeなどのフォロワー数やPV数で目標値を設定しています。

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シーズン開幕時に実際に共有されたスライド(作:Gorou、Kurutami)

対戦ゲームをしているから、どうしても試合で勝つことに固執しがちなんですけど……つねに一発勝負で勝ち続けるって、やっぱり難しい。だから「勝つこと」じゃなくて「成長して強くなること」にフォーカスして活動したほうがいいと思って、こういう目標をつくりました。それからは1回の負けに気持ちを左右されにくくなったし、いいムードで歩めていると感じています。


チームが少しずつ強くなっていくことが、いまは楽しい

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――チームで活動することで、Gorouさん個人はどんな成長ができていますか?

プレイしているときもそうでないときも、少しずつ周りを見ながら動けるようになってきました。今期からはリーダーになって、メンバーのことを考える時間も増えましたね。昔は自分の成長だけに必死になっていたし、それが一番楽しかったけれど、いまはチームの成長にフォーカスを当てて、ひとつずつ丁寧に強くなっていくことを楽しく思えています。ゲームの面白さは、もしかしたらチームに入りたてのときよりいまのほうが大きいかもしれません。

――最後に、これからGorouさんはどんなふうに活動していきたいですか?

まずは、チームのメンバーや応援してくださっているファンの方々に「この人がリーダーでよかった」と思われる存在になっていきたいです。それから、やれるところまでこの仕事を続けていきたい。「Call of Duty」は反射神経が必要なゲームなので、25歳くらいまでで引退する選手が多いし、昔は自分もそのくらいで辞めるつもりでした。でもいまは30歳くらいのプレイヤーも増えてきて、可能性が広がっています。

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ただ、ずっとゲームで食べていくためには、業界やコミュニティの発展も欠かせません。
僕は自分が成長するのが楽しくてゲームを続けてきたから、ほかのプレイヤーにもその面白さを味わってもらえるように、Youtubeで解説動画の配信をはじめました。それを見て「うまくできるようになりました」とか言われると、すごくうれしい。そんなふうにチームや業界などの周りにまで目を向けて、自分のできることをやっていきたいと思っています。

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一瞬のチームワークが勝敗を左右しかねない、eスポーツの世界。しかし、敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。Rush Gamingのメンバーはそれぞれ違う場所にいても、お互いのことを信じてコントローラーを握っています。


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このインタビューは、株式会社デジタルホールディングスが主催しています。
リモートワークやフリーアドレス、副業など、さまざまな働き方を取り入れているデジタルホールディングスでは、離れていてもチームでひとつの目標に向かい、仲間と一緒に頑張れる環境があります。

離れていても働けるいまだからこそ、チームで動く意味がある。
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インタビュー/執筆:菅原さくら
編集:広瀬唯(株式会社ヒャクマンボルト)
企画:サカイエヒタ(株式会社ヒャクマンボルト)


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