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「ディグディガ」元ネタ紹介:第10話

これは、漫画「ディグインザディガー」第10話公開に際して、原作の栄免建設と漫画の駒澤零(と、たまにゲスト)が淡々と元ネタ紹介をしていくコーナーです。

原作担当:栄免建設

akaru records

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中古を中心に、ジャズ、ロック、ソウルからクラブミュージック(少数であるが)まで幅広く取り扱うレコード店。個人経営のレコ屋にしては珍しく、100〜300円ほどの特価レコードもかなりの量の在庫がある。そのため、懐事情が厳しい、四季乃のようなビートメイカーにもおすすめだ。

セールやWeb通販用のクーポン配布もよく行っている。詳細はぜひ各種SNSをチェック。自分も取材前にセール情報を見てまとめ買いしに行ったけど、このツイートのもの全部で500円ぐらいだった。

また、店主はakaru music名義で音楽活動も。

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◆The Pop Group - Y (最後の警告)

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イギリスのポストパンク・バンド、The Pop Groupの1stLP。70年代後半に起こったポストパンク・ムーブメントにおける名盤中の名盤。

ポストパンクは、ジャンル名上はパンクとついているが、実に様々な音楽要素を取り入れて成立しているジャンルで、本作もDubからフリージャズ、アバンギャルド色もにじませる。「The Pop Group」という名前に反して、どちらかといえば非常に実験的な作品になっている。そのダークで混沌とした音楽性は、のちにMassive AttackやPortisheadなどを中心とした90年代の流行、いわゆる"Bristol Sound"へと、大きな影響を与えた。

プロデュースはMatumbiのリーダーでUK Dub/Reggaeの重鎮、Dennis Bovell。彼は坂本龍一のDubを取り入れた2ndアルバム「B-2 UNIT」にエンジニアとして参加していることでも知られる。

2021年、僕はUKのBass Musicのルーツを辿っていく中でポストパンクに行きつき、The Slitsの「Cut」など何作か聴いていたんだけど、90年代のBristol Soundはもちろん、やはり現行のダンスミュージックに通じる部分も多い。だからこそ、普段クラブミュージック中心に聴いている人にも是非聴いてほしい作品だと感じました。

ちなみに2021年には、Dennis Bovell自らが、本作をさらに"Dubwise"した「Y in Dub」をリリースしている。

三毛猫ホームレス - そばが食べたい (feat.根本凪)

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mochilonとhironicaによるユニット・三毛猫ホームレスが、レーベル《Maltine Records》より2014年に発表した楽曲。

マルチネ初期から多くの楽曲を発表しつづけ、現在はchelmico、ぷにぷに電機など多数のアーティストに楽曲提供を行っている。

非常にオシャレでポップな楽曲を制作する一方で、お金が欲しいことを歌い上げる『KANEKURE』などユニークな楽曲も多く、本作もタイトル通り「そばが食べたい」を連呼したり、様々なそばの名称が登場楽曲になっている。

面白い歌詞に耳がいってしまうかもしれないが、トラックはjersey clubの要素を取り入れている。今でこそ珍しくないかもしれないが、本作がリリースされた2014年は米《Mad Decent》からTrippy Turtle - Trippy's Themeがリリースされた年。インターネットのBootlegを中心に浸透していたjersey clubが、オフィシャルなメジャーシーンでもちらほらと登場し始めた時期である。そうしたトレンドを取り入れながらも、きちんとポップスに落とし込む彼らのセンスが光る楽曲と言えよう。

2015年には、RemixEPである「三毛猫ホームレス - そばが食べたいリミックス」がリリース。Bassline House, IDM, Trapと幅広いジャンルのRemixを聴くことができる。特に「そばが食べたい (Masayoshi Iimori Remix)」は、原曲以上にクラブで聴く機会があったような気がする。

漫画担当:駒澤零

◆Japan - Tin Drum(錻力の太鼓)

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栄免さんより”80年代のニューウェイヴ”というテーマを提示されセレクト。当初は大好きなTalking HeadsやXTCやDevoを提案していたが……人数の都合であえなくボツ。

Japanは、1974年に結成されたイギリスのニューウェイヴ・バンド。David Sylvian(Vo/Gt/Key)と彼の弟 Steve Jansen(Dr/Key)、Davidの親友であったMick Karn (Ba/Sax)を中心に結成。初ライブは、Karnの兄の結婚式だった。

デビュー当初はアイドルとして宣伝されたものの、イギリスの音楽シーンでは殆ど人気がなかった。逆に日本では初来日でいきなり武道館での公演を行うなど、当時はかなり持て囃されていたようだ。ちなみにバンド名の由来に特に意味はなく、「なんとなくJAPANという響きが浮かんだだけ」とDavid本人が述べている。

本作「Tin Drum」は、ヴァージンに移籍後2枚目となる5thアルバム。解散時の4人で作られた別名義"Rain Tree Crow"を除けば、これがバンド最後の作品である。

ギターのDeanは本作の完成前に脱退したため、最後のツアーでは当時一風堂の土屋昌巳がリードギターを担当した。Japanはライブの再現性にこだわっていたことで有名で、ライブではシーケンサーを使用せず、演奏不可能なトラックはオープンリールのMTRを用いてドラムにヘッドフォンでモニターしていたそう。

初期は黒人音楽をポストパンク的に再構成したようなダウナーな音楽性が特徴だったが、ヴァージン移籍後はアフリカやアジアの音楽的要素を取り入れ、本国でも高い評価を得た。バンド最高のヒットを記録した『Ghosts』収録。1982年解散。自分はYMO繋がりで存在を認知していた(4thアルバム表題曲「Gentlemen Take Polaroids(孤独な影)」に坂本龍一が参加している)。

keisuke yoshida - Knight jacket

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バックデザインが特徴的なkeisuke yoshidaの19年コレクションより駒澤私物のジャケットです。おなじような紐付きデザインのコートもあってかっこよかったんですが、肩幅広めすぎるのでくもみにはジャケットかなと。

くもみの私服はいつも「人に勧められて着てるそこそこいいシンプルな服」というテーマで選んでいるのですが、今回はちょっと欲が出たかも。でもGパンは流行りの裾広フレアジーンズにしてみたりしてます…。

◆DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG) - アイアンマウンテン報告

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2021年4月2日の新木場STUDIO COAST公演で解散を発表したDC/PRGの1stアルバム。2001年リリース。

DC/PRG(DCPRG、dCprG)は、ジャズミュージシャン・菊地成孔の率いる11人編成のビッグバンド。1999年に「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN」名義で結成。70年代エレクトリック・マイルスを主軸に、ジャズ/ソウル/ファンク/アフロ/現代音楽と、いくつものジャンルをボーダレスに取り入れながら、テーマとするのは「ダンス」というのが本当に好き。楽曲としてはポリリズムを多用し、難解な拍子や構成のものが多いが、形式に捉われず人々を踊らせる。それは菊地がイベント「HOT HOUSE」などでジャズ史におけるダンスを復興させようと試みたことや、そもそもの彼の音楽を身体性で捉えているところに客や空間が共鳴してる感じがする。昔の映像や文献を見ても本当にそう思う…。ぜひライブに足を運んでみてください!と言いたいところですが、解散してしまったのが残念。菊地さんのほかの活動も素敵なのでよかったらチェックしてみてくださいね。

ディグディガでは2話でくもみの部屋にDC/PRGの20周年記念BOXを描いたりしていましたが、盤としては初登場です。(菊地ペペは1.5話で描いてますが…)

代表作ともいえる『CATCH 22』をはじめ、ライブの締めで定番の『MIRROR BALLS』、ジミヘンで有名なナンバー『HEY JOE』など珠玉の構成。わたしがDCPRGを人に勧めるときはいつもこれか「構造と力」を選ぶことが多いです。

昨年11月にLP化。初回限定生産なので気になる方はチェックを!

◆Ortance - Escargot

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元DCPRG/東京ザヴィヌルバッハの坪口昌恭が率いるミクスチャーユニット。メンバーは坪口昌恭(Key)、西田修大(Gt)、大井一彌(Dr)の3人。

守家巧のセッションで出会い、近いながらもそれぞれ異なるルーツを持つことと表現に対するストイックさで意気投合し結成したそう。Ortanceとは、画家のポール・セザンヌの妻の名前「Hortens」(スペイン語でアジサイを意味する"Hortensia"からきている)をもじった造語。

個人的にザヴィヌルバッハの「AFRODITA」がずっと好きで、西田さんも君島大空合奏形態や、中村佳穂、石若駿のサポートなどで存じ上げていたし、大井さん所属するDATSもyahyelも普通に聴いていたので、その組み合わせ!!?!と、結構驚きながらライブに向かった記憶がある。

ライブではFlying Lotus『L.A.』の全曲カヴァーが定番だが、本作は全曲坪口のオリジナル。リリースはCRCK/LCKS、SMTKなどをリリースするAPPOLO SOUNDSで、個人的にもアツい…。LP版/CD版とあるので、ぜひ一聴を。

◆FKJ - Time For A Change

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フランスのマルチプレイヤー、FKJ(French Kiwi Juice)による2013年作。当初デジタルのみのリリースだったが、15年に自身のレーベル≪Roche Musique≫よりフィジカルリリース。持ち味のメロウなグルーヴと耳馴染みの良いシンセサウンドが魅力。

自分は2020年のEP『Ylang Ylang』でFKJを知ったのだが、セッション動画のチル具合といい、脱力して内省的な気分に浸れる音楽性がすごく好きで。本作はもっとディスコチックな4曲入りEPだが、長年レア盤だったのが昨年リプレスされたそうなので選んでみた。

今回のプレイリストはこちら。

以上、ディグディガ10話の元ネタ紹介でした。ありがとうございました!
























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