見出し画像

「ディグディガ」元ネタ紹介:10.5話

これは、漫画「ディグインザディガー」10.5話公開に際して、原作の栄免建設と漫画担当の駒澤が淡々と元ネタ紹介をしていくコーナーです。

前半:栄免建設(原作)

Nas - Hip Hop Is Dead

画像1

NYを代表するMC、Nasの8thアルバム。2006年発表。文学的な歌詞でリリシストとしても名高く、DJ PremierをはじめQ-Tip、Pete Rockなどをプロデューサーに招いた1stアルバム「Illmatic」はHiphop史において最も重要な作品の一つとされている。Nasについて触れる機会はまたありそうな気がするのでこっからは本作「Hip Hop Is Dead」について。

このアルバムは長年Nasと"King Of NY"(ヒップホップ誕生の土地ニューヨークで、昔から議論される一種の”ネタ” )を争っていたJay-Zと和解し、彼のサポートのもとDef Jamよりリリースされた作品だ。客演としてKanye WestやSnoop Dogg、先月取り上げたThe Gameなどが参加。

タイトル曲「Hiphop Is Dead」は主に当時最も勢力が強かったサウス・ヒップホップをターゲットに、商業的なHiphop業界へのDissとなっている。

プロデュースはThe Black Eyed Peasのメンバーwill.i.am。Nas自身の楽曲「Thief's Theme」(2004) が元ネタで、ほかにも複数のサンプリングを使用。

まず、Incredible Bongo Bandから2曲。

Incredible Bongo Bandは70年代、映画のサントラ用に結成された架空のファンクバンドで、73年にリリースされた「Bongo Rock」収録『Apache』は、
最も有名なブレイクビーツの一つで「Hiphopの国家」とも呼ばれている。

原曲は50年代から活躍するバンド、The Shadowsの楽曲。

さらにIncredible Bongo Bandからもう1曲、というかこっちの方がメインで使われているんだけど、In-A-Gadda-Da-Vidaという楽曲が使われている。

こちら原曲はサイケデリックロックバンド、Iron Butterflyの楽曲。

他にもこれまた定番のブレイクビーツ、Billy Squier- The Big Beatや、MC Shanがリリックで登場する箇所でMC Shanの楽曲が使われていたりと、随所にサンプリングが見られる。

◆The Shamen - Make It Mine

画像2

イギリスのバンド、The Shamenによる12枚目のシングル。

80年代に結成すると、アシッドハウスムーブメントを受けたエレクトロニックミュージックの楽曲を続々リリース。中でもドラッグソングとしても有名な「Ebeneezer Goode」は、代表曲としてUKのチャート4週連続1位を記録。1999年の解散までに、合計で12枚のアルバムをリリースした。

今回紹介した「Make It Mine」では、ジャケットにタイトルを象徴する漢字「己」が描かれており、PVにも登場している。

今回はオチに使わせてもらいましたが、The Shamenのジャケは基本的に漢字を使用しており、3rdアルバム「En-Tact」は "巧"、「how Of Strength」では "力" と、内容を想起させるユニークな漢字が使われている。The Shamenのアーティストネーム自体には "吊" という漢字をあてているよう。ちょっと理由まではわからなかったので、もし知っている人が教えてください。

ちなみに「Make It Mine」には多くのリミックスがあり、その中には90年代Rave、その後の電子音楽ジャンルで高い人気を誇るMobyによるものも。

ジャケのインパクトでセレクトしたので、知らないバンドだと思って調べたらクラブで聞き覚えがあって驚いた。ぜひ皆さんも一聴してみてほしい。

KOTONOHOUSE

画像3

トラックメイカー、KOTONOHOUSEのお馴染みのサウンドロゴ。

サウンドロゴとは、主にトラックメイカーが使用する”音の署名”。主にアーティスト独自のものが使われ、「これが鳴れば知らない曲でも誰の作曲/編曲/remixかがわかる」。

普通はアーティスト名、ユニット名が多いが、KOTONOHOUSEの場合は「え アタシ!?」というセリフが用いられており珍しい。そのため、彼の曲が流れる際はアーティスト名ではなく、こちらが呟かれることも多い。

由来は案外単純で、自分のプロフィール欄にもともと書いていたものをそのままロゴにしたとのこと。

KOTONOHOUSEは、2010年代インターネットで爆発的に流行したFuture Bass、Jersey Clubなどのkawaii系ジャンルを代表するトラックメイカー。
しかし、ルーツは音ゲーのため、実はkawaiiだけでなくかなりハードなミュージックなど、幅広いジャンルの音楽を手掛けている。

割と共演する機会が多いため、よく話したりもする(ディグディガも読んでくれているらしい)。ここ最近は新しいジャンルにハマってるらしいので、今後のリリースが楽しみだ。

Discogs

画像4

世界最大の音楽データベースサイト。

Wikipediaと同じくアカウントがあれば編集することができ、レコードからCD、Bandcampなどデータでしか販売されていない楽曲も取り扱っている。バンドなど複数メンバーがいる場合それのソロのページに飛べたり、別名義も記載されていたり、ジャンルも細かく記載されているので音楽を勉強するのにも使えるだろう。

またレコードやCDを売買できる機能もあるので、ここでレア盤などやレーベル単位で購入しているディガーも多い。この解説note.を書くときもこのサイトはかなり利用させてもらっており、例えばリリース年などはここを参考にすることが多い。

後半:駒澤零(漫画)

今回は自分語りがそこそこ増えてしまったので適当に読んでください。

◆にゃにゃんがプー - ニュー餅太郎

画像5

画像8

にゃにゃんがプーは静岡県浜松市在住のトラックメイカー。可愛いボーカルとニューウェイブ要素をふんだんに盛り込んだ楽曲が特徴。ポストって言い方あんまりしたくないけど、個人的に現代の戸川純だと思ってる。

ニュー餅太郎」は2015年発表のEPで、現在はbandcampでの販売のみ。今サブスクで聴けるのは2019年にリリースされた配信EP「イルカちゃんの推理はあてにならない」だけかも。これは折坂悠太、さとうもかなどの作品を手がける中村公輔がエンジニアを担当しており、クセの多い曲が多い彼女の作品の中でも誰もが聴きやすいキャッチーな楽曲だと思う。

わたしがにゃプさんを初めて見たのは下北沢GARAGEの「なまう」だった。パソコン音楽クラブの柴田さんによるこのイベントは、柴田さんのほかにトムアトム、ナナビット、そしてにゃにゃんがプーの4マン。

画像7

ナナビットことhikari togawaさん、にゃにゃんがプーさんはインターネットでなんとなく認知していて、いつか拝見したいなと思っていた矢先、何より「わたしの誕生日に柴田さんがイベントやるって、そんなん行くわ!!!」って気持ちでGO。柴田さんには「大事な日に…いいんですか…」みたいなこと言われたけど、最高ですよ?ちなみにこの日VJも柴田さんで嬉しかった。

歌唱こそアイドル風なんだけど、どの曲も面白いしかわいいし予想外の方向に進んでいくので、ライブがとても楽しかったのを覚えている。

終演後、戸川さんが昔のシンセの説明書を大量に持ってきていたのでわからないなりに色々眺めていたら、YMO好きを名乗るお客さんが私に「FM音源興味あるならDX7の実機よりもReface DX買いなよ」と勧めてくれた。翌日に某オーディションから "2次選考通過したよ決勝ライブ出てね" というメールが来てたので、即購入して爆速で1曲作った。隙あらば自分語りですね。でもrefaceはにゃプさんも使ってらした気がする。

今回取り上げたEP「ニュー餅太郎」を出してるインディーズレーベルDANGBOORURECORDが主催するイベント「tiny pop fes」が上野の水上音楽堂であって、にゃプさんがなまうでチケットを手売りしていたんだけど、わたしは入江陽さんとSNJOさんが対バンだし、ディガー集団lightmellowbuも嚙んでてオモロやなと思い即購入した。その後に横沢俊一郎&レーザービームスに友達が所属してると知ったり、後にめっちゃ仲良くなる長谷川白紙くんが追加で出演発表されたり、現地で全然ライブ来なそうなサークルの先輩に2人も会ったりとかいろいろあるんだけど、それはまた別の機会に。

改めて調べていたら、禁断の多数決ほうのきさんと菊地成孔feat.岩澤瞳「フロイドと夜桜」をカバーしてる音源を見つけ、しかも同じアカウントで田島ハルコさんが「東京は夜の七時」をカバーしてて、良すぎて脳が混乱した。

聞けば、新潟の信濃川あひるさんという方が2014年より開催しているグループ展「ファンシーショップあひる展」のアカウントだったようで、お二人は2017春のテーマソングを担当していたようだ。田島さんも同じく。

◆tofubeats - おしえて検索(feat.の子)

画像6

tofubeatsの2013年作。メジャーデビューシングル「Don't Stop The Music」のカップリングで、同曲に続いてMVが公開された。

tofubeatsは兵庫県神戸市出身・在住のトラックメイカー。中学生の頃よりインターネット上で音源をリリースしており、その作品の1つがimdkmのWebサイトで紹介されたことでMaltine Recordsの存在を知り、dj newtown名義で参加するように。これを機に着実に知名度を上げてゆき、日本の代表的なテクノ・レイヴ、"WIRE" へ史上最年少での出演を果たす。

2012年、代表作ともいえる「水星」をリリース。翌年には「Lost Decade」がiTunes Store総合1位を記録。「Don't Stop the Music」はこの次にワーナーミュージック・ジャパンより出た作品である。

当時マルチネを中心にネットレーベルを聞き漁っていた私は、神聖かまってちゃんのの子がゲストということに非常に驚いたが、彼もまたインターネットの寵児という意味では共通するものがあるのかもしれない。両者のいいとこどりの楽曲かつ、SNSを通じて知り合いが地元に全くいないところから目覚ましい活躍を遂げたtofubeats/インターネットでバンドを組んでメジャーシーンにまで乗り込んだ神聖かまってちゃん という彼ら自身にも重なるような歌詞で、それが本当に最高。今でもトーフさんの楽曲の中で一、二を争うレベルで大好きです。

tofubeatsはその後多数の楽曲提供や、佐々木希、YUKI、ももいろクローバーZなどのリミックス、ドラマ「電影少女」主題歌(「ふめつのこころ」)、映画「寝ても覚めても」主題歌/劇伴(「RIVER」他)など多岐にわたり活躍。自身のレーベル「HIHATT」からもクリティカルな作品を精力的にリリースしており、いまや時代を牽引する存在と言えよう。

最新シングル「CITY2CITY」もめちゃくちゃいいので聞いてください…!

今回のプレイリストはこちら。

以上、ディグディガ10.5話の元ネタ紹介でした。ありがとうございました!











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?