「ディグディガ」元ネタ紹介:第6話
これは、漫画「ディグインザディガー」第6話公開に際して、原作の栄免建設と漫画の駒澤零(と、たまにゲスト)が淡々と元ネタ紹介をしていくコーナーです。
原作担当:栄免建設
◆レコード音リンピック
7月3日~4日に、WISE OWL HOSTELSで開催された中古レコードの祭典。"DJ屋台サポーターズネットワーク"を主催に、10店舗以上のレコードショップ・個人が集った一大イベント。屋台型のDJブースがあったり、瓶釣りゲームが遊べたりと、小さなお祭り感もあって良かったです。
当日の様子は Twitter #レコード音リンピック や、アーカイブ動画で観れるので、気になった方は是非チェックしてみてください。
◆Yellow Magic Orchestra - 体操
Yellow Magic Orchestra中期の名盤「テクノデリック」からの6thシングル。YMOの演奏といえば大掛かりなシンセサイザーの印象が強い人が多いと思うが、この楽曲はミニマルなピアノの演奏が特徴。メガフォンでの一風変わった指示など、数あるYMO楽曲の中でもユニークな作品の一つだ。
PVやライブ映像も面白いので、是非一度チェックしてみて欲しい。
オリンピック=運動と考えた時、まず浮かんだのがこの楽曲だったので
入れてもらいました。
◆E.D.P.S - BLUE SPHINX
ギタリスト、恒松正敏を中心としたロックバンド・E.D.P.Sの1stアルバム。1983年発表。全編を通して力強いギターサウンドが鳴り響き、パンクの血脈と緊迫感を感じるアルバムとなっている。
恒松正敏は日本のロック史でも評価が高いFRICTIONの1stアルバム「軋轢」に参加、その後自身がギターボーカルを担当するE.D.P.Sを結成した。画家としての活動でも知られている。
ちなみに御子息は日本を代表するBreakcoreアーティスト、CDR。
◆東京JAP - TOKI色外人倶楽部
これは前知識一切なく、鮮やかなジャケに惹かれて買ってしまいました。
東京JAPは80年代に活動していた日本のバンド。1982年にロックンロールミュージカル劇団「ミスタースリムカンパニー」のメンバーで結成されると、翌年には松任谷由実がプロデュース・演出を手掛けたアルバム「東京JAP大作戦」をドロップ。
出世作となった本作では、「摩天楼ブルース」(小泉今日子初主演連続ドラマ「少女に何が起ったか」主題歌)を収録。時代の流行もあり、ニューウェーブやシンセポップ色が強い。個人的には、エキゾチックなメロディが心地よい「上海外人倶楽部」がお気に入りでした。
◆Viktor Vaughn - Rae Dawn
特徴的な仮面を被ったMC/Producer、MF DOOMのMCに専念した別名義 "Viktor Vaughn" の2003年作を、スウェーデン出身のプロデューサーKaman LeungがアブストラクトにRemixしたシングル。アートワークは松岡亮。
イギリス出身のMF DOOMは90年代から活動を開始。〈MF〉は〈Metal Face〉の略で、元ネタはマーベル・コミックスのドクター・ドゥーム。名前の通り、一度見たら忘れられない仮面がトレードマークの革新的存在だ。
"Viktor Vaughn" の他にも、同じくアンダーグラウンド人気の高いMadlibとのユニット"Madvillain"や、別名義”King Geedorah”など様々な形で数え切れないほどの名盤を作り続け、シーンに与えた影響ははかりしれない。
しかし2020年大晦日、49歳の若さで逝去。Hiphopはもちろん、多くのミュージシャンがその早すぎる死を悼んだコメントを発表している。
◆Fine Young Cannibals - I'm Not Satisfied
イギリスの三人組バンド、Fine Young Cannibalsの1990年シングル。代表作は1989年全米チャート首位を獲得した「She Drives Me Crazy」。日本では1990年代初期、ジョディ・フォスター出演のホンダ「シビックフェリオ」のCMソングとして使用されていた。
本作はそんな人気絶頂期の1990年に発表された「I’m Not Satisfied」の4バージョンを収録したシングルなのだが、購入した目的はその中でも(New York Rap Mix)及び(New York Singing Mix)のバージョン。
というのも私、栄免建設の名前の由来でもあるThe Winstons「Amen, Brother」をサンプリングしているのである。しかもブレイク部分(いわゆるアーメンブレイク)ではなく伴奏部分をサンプリングしており、ブレイクとしてはKool & the Gang(4.5話登場)の楽曲からサンプリングされている。
このバージョンは配信されていないようなので、気になる方は是非アナログを探してほしい。ちなみに、クボタタケシのミックステープにも収録。
◆Melissa Manchester - Singin'
アメリカのSSW・Melissa Manchesterの77年作。邦題は「雨と歌えば」。Michael JacksonやSly & The Family Stoneの楽曲のカヴァーが収録されている6枚目のアルバム。1996年には山下達郎とのデュエット曲「愛の灯~STAND IN THE LIGHT」を発表するなど、日本でも活躍していた。
第5話のゲストディガーをしてくださったDJ Pideon氏が紹介していて、気になったので購入した。僕もこのジャケは雨降りすぎだと思う。
アメリカ・ロサンゼルスのHiphopレーベル。Matt DikeとMichael Rossにより1987年創立。レコードにかぶり付く特徴的なロゴが有名。根強いファンを持つため、最近出たアパレルにもロゴがあしらわれている。
音楽レーベルとしても優秀で、Tone Loc「Wild Thing」、The Pharcyde「Runnin' 」など、初期から大ヒット作をリリース。
この漫画でたびたび登場するJ Dillaも所属しており、サイトでグッズ購入も可能。ちなみにThe Pharcyde「Runnin' 」は、1995年にJ Dilla(当時はJay Dee)がプロデュースしたもの。
2015年には、Delicious Pizzaというピザ屋も開業している。
漫画担当:駒澤零
こんにちは。栄免さんに「レコード音リンピック」を紹介しておいて、現地に行けなかった駒澤です。はやく車の運転できるようになりたいですね。
◆Mega Shinnosuke - Sports
Mega Shinnosukeを初めて知ったのは、HOLIDAY! RECORDSのツイートで聴いた「桃源郷とタクシー」だったと思う。Tempalayが好きなので、(当時まだサポートメンバーだった)AAAMYYYのコーラス参加に惹かれて聴いたら余りにも良くて、すぐに「momo」を購入した。たしか当時17歳。
それから時は経ち、ぼく脳やブレイク前のフワちゃんを迎えたMV「O.W.A.」がドロップされると、中毒性のある楽曲とMega自身がiPhoneで制作したローファイな映像に夢中になったものだった。
その後は地上波で若手トラックメイカー特集が組まれようものなら一時期は諭吉佳作/menと一緒に真っ先に紹介される存在であったように思う。どう考えてもバンドサウンドが根幹だし、ライブパフォーマンスも全然違うので最近は一緒にされなくなってきた気がする?けど…。前に一度新宿LOFTで観たライブが良かったのを覚えてる。サポのsooogood! 色が大分強かったけど。
オリンピックを題材にするにあたって、表紙で一番違和感がないジャケットだと思ったのでセレクト。
◆東京事変 - スポーツ
最初の表紙候補案。ラフの段階で、メンバー5人に対し登場キャラクターが3人しかいないことに気づき、断念。今回は表紙スペースにセリフが入ってしまうため、元ネタジャケを選ぶのがけっこう難しかった。
東京事変は2003年、SSWの椎名林檎を中心に結成された5人組バンド。2012年の武道館公演をもって活動終了したが、昨年「再生」と称し当時のメンバーで再始動を発表、紅白歌合戦の初出場を飾る。そして本年6月に、10年ぶりとなるアルバム『音楽』をドロップしたばかり。
『スポーツ』は4枚目のアルバムで、2010年リリース。2008年末にアルバムタイトルの案が出ると、翌年末まで制作が続いたという。あえてギリギリまで歌詞を考えずに、言葉との兼ね合いをまったく無視したアレンジも構成、音の快楽を追求した。刄田綴色(Dr)が叩くフレーズをすべて譜面に書き、スポーツでいう”規定演技”に徹していたというエピソードが好き。
見ての通りLP映えしそうなジャケットだし、人気からしても絶対LP出てそうだが、未発売。ちなみにM8「絶体絶命」は、私がベースを始めようと思った思い出の曲です。
ラスサビ前の亀田誠治のソロがほんとかっこいい。この曲がなかったら、おそらく漫画も描いてないんじゃないかな(漫画描き始めたの2020年だし)。
◆笹口騒音&ニューオリンピックス - 2020
ロックバンド・うみのてをはじめ、ソロやユニットなど幅広い活動で知られるSSW・笹口騒音氏の活動の中で、私が一番好きなバンド。
この曲とこのMVが好きすぎて……色々怒られそうなネタは満載ですが(笑)。
2018年夏に改名し、現名義は「NEW OLYMPIX」。東京オリンピックの開催された今夏に新譜をリリースしたばかりだ。
ちなみにニューオリ名義のGt、ムルアイさんがやってるFILMREELというバンドもおすすめです!(余談ですが駒澤はFILMREELトートバッグを元バイト先の先輩が使っているのをみて一目惚れし、以来365日愛用しています)
◆J・A・シーザー - 国境巡礼歌
『国境巡礼歌』は、1973年2月3日、4日の2日間に渡って日本青年館で行なわれた "J・A・シーザーリサイタル" の模様を収録したアルバム。発売40周年の2013年に、演奏順や実時間を当時のままに再現し、未発表曲を加えた『国境巡礼歌 完全盤』も出ています。
J・A・シーザーは1948年生まれの日本の作曲家。寺山修司の劇団「演劇実験室・天井桟敷」や、「少女革命ウテナ」などの音楽で知られる。
1983年には「演劇実験室◎万有引力」を旗揚げ。2012年5月に40年ぶりとなる「J・A・シーザーコンサート」を行ったり、天井桟敷・万有引力・アジアンクラックのプレミア音源が復刻したりと、近年精力的に活動している。
くもみ購入物以外の盤は「歌謡曲」「オールドロック」「和モノ」辺りのテーマで自由に選んでいいと言われたので、選びました。私の所属していたサークルでは定例行事としてJ・A・シーザーのコピーが行われていたので、そこではじめて聴いた (歌った) のがきっかけです。「慈悲心鳥」が一番好き!
◆割礼 - ネイルフラン
どうも、たぶん日本で唯一の、家の鍵に割礼キーホルダーつけてる女です。
割礼は1983年、宍戸幸司を中心に名古屋で結成されたサイケデリック・ロック・バンド。当初のバンド名は、「割礼ペニスケース日曜日の青年たち」。他に類を見ない音楽性とインプロビゼーションを取り入れたライブパフォーマンスで多くの根強いファンを持つ。
割礼の特徴は、何よりも歌であろう。信じられないくらいスローなボーカルと、プログレッシブかつ隙のない構成が、聴き手の情緒を巧みに揺さぶる。その独自性が決定づけられたともいえるのが、このメジャーデビュー作『ネイルフラン』だ。
1989年リリースの本作では、早川岳晴によるチェロやウッドベース等の弦楽器が折り重なり、オルタナ色の強い前作から一変した重厚な世界観を構築している。メロウなギターのグルーヴとどこまでも緩やかに流れる音楽。一聴する以外に言葉にできない。
あともう一つ驚いたのがジャケット。自分は後追いだったのでCDやサブスクでしか聴いていなかったのだが、なんとLP版とCD版でジャケットが異なる。
上がLP版、下がCD/サブスクのリマスター版だ。トリミングとデザインが微妙に異なり、上のほうが少し禍々しい印象を受ける。
LPではないですが、1988年頃から20年以上の年月を経て進化してきた15分超の名曲「リボンの騎士」や、「ルシアル」といったライブナンバーの録音音源が収録された『星を見る』が本当にお勧めです。ぜひ聴いてください。
全然関係ないですがリイシュー版のマスタリングをPEACE MUSIC中村宗一郎さんが担当してらして、私の好きなアルバムの中村さんマスタリング率本当にヤバイなと思いました。余談です。
◆ハルメンズ - ハルメンズの近代体操
「食べたい程の盤ってなんだろう?」と考えて真っ先に思いついたのが割礼だったのですが、一番好きな『星を見る』がCDなのと、割礼のLPはそこそこレアなので2枚買いのハードルが高すぎる、という理由でハルメンズに。
好き度合いだとヤプーズ、パール兄弟、ハルヲフォンあたりでも良かったのですが、アーバンギャルド浜崎やでんぱ組.incの古川&夢眠、桃井はるこ、テンテンコ、鈴木慶一など多方面からゲストを迎えた『21世紀さんsingsハルメンズ』『35世紀』の存在や、日本のニューウェイブ・シーンにおけるサエキけんぞうの啓蒙活動を鑑みると、ここはハルメンズが相応しいかなと。
『ハルメンズの近代体操』は戸川純歌唱で有名な「レーダーマン」「電車でGO」「母子受精」をはじめ、「リズム運動」「モーター・ハミング」といったポップでキュートな楽曲が並んだ名盤です。原曲全然違って面白いです。
サブスクにあるのはリバイバルで発売された「+8」版で、多重録音のデモがボーナス・トラックとして収録されています。これがまた素晴らしい!
サエキさん、パール兄弟、ソロ、ヤプーズ、PSY・S、インド大話術団、ジョリッツ………と本当に活動が幅広すぎて把握しきれないくらいなんですけど、最初に1枚聴いてくれというなら間違いなくこのアルバムです。ぜひとも。
◆稲垣次郎とソウル・メディア - Funky Stuff
YouTubeで適当に70年代の邦ジャズを漁っていた時期に見つけたアルバム。「菊地成孔の粋な夜電波」やジャズ入門書で絶賛有名どころを浚っている最中なのですが、そういえば日本のジャズシーンって知らないなと。現在ですと武田理沙、石若駿、魚返明未、けもの、CRCK/LCKS、松丸契、松木美定、MIKISARA、ものんくる、WONK…とそれなりに名前が思い浮かぶのですが。
この辺りのアルバムは多くがサブスクに無いうえ、フィジカルも脳死購入するには値が張るので、digのハードルはやや高め。まあ、楽しみが沢山あると思えば!個人的には、猪俣猛とか今田勝トリオなどが気になってます。
◆South Penguin - bubbles / mad love
South Penguinはアカツカによるソロプロジェクト。
2014年東京で4人組として結成し、FUJI ROCK FESTIVAL'16「ROOKIE A GO-GO」などに出演するが、2017年の台湾公演をもってアカツカ以外のメンバー3人が脱退。その後はサポートメンバーを迎え活動している。
マジで極上のインディーポップ。異国情緒的なサイケデリックサウンド。「美しさ」というテーマに対する回答として完璧なアプローチともいえる楽曲群は、メロウなグルーヴと胸がきゅんとするようなメロディが印象的で、Gotch(後藤正文)やtofubeatsが絶賛するのも納得という感じだ。
本作は、2020年6月にドロップされたバンド初の7inch。先日晴れ豆の企画へ偶然お伺いした際に購入して、とても良かったので!描きました。
◆頭脳警察 - 頭脳警察1
よく見ると描いてあるよ。
頭脳警察は、パンタ(中村治雄)とトシ(石塚俊明)による日本のロックバンド。1970年結成。特徴的な名前はFrank Zappaの楽曲「頭脳警察ってのはどいつらなんだよ? (原題:Who Are The Brain Police?)」が由来。
『頭脳警察1』は1972年発売の1stアルバムで、政治的に過激な歌詞により発売中止になった問題作。ジャケットの男性は、3億円事件犯人のモンタージュ写真。『頭脳警察セカンド』中の3曲も放送禁止になった。なのでサブスクには3以降しかない。前衛的なライブパフォーマンスによって出禁になったという逸話もある。1stのライナーノーツによれば、ライブでマスタベーションをしたこともあるらしい。
赤軍派の拠点校であった関東学院大学で音楽をやっていたパンタが、上野勝輝『世界革命戦争宣言』を読んで衝撃を受け、翌日のコンサートでアジテーション調のシャウトを取り入れたことから、「左翼のアイドル」として祭り上げられたそう。1975年の解散後、1990年、2001年と再結成をしている。
自分はアーバンギャルドが好きなので、最初は「戦争を知りたい子供たち」「コミック雑誌なんかILLかい」の元ネタとして聞いたのがきっかけでした。頭脳警察の名前も知らなかった頃、一度PANTAソロも観たことがあります。
◆SAPHO - JANIS
栄免さんからもらった資料写真の中で気になったレコード。
Saphoは「フランスのニナ・ハーゲン」の異名を持つ、モロッコ出身のパンクシンガー。フランス人として初めてCBGB(*1)でライブを行った実力派。
アーティスト名の由来はギリシャの詩人・サッフォーのオマージュ。
フランス語をはじめ、アラビア語、英語、スペイン語、ヘブライ語と語学に堪能で、ジャーナリストとしての社会的関与から詩、小説、ドローイングと多岐に渡る活動をしている。「貧困」「人権」「女性の権利」などをテーマに掲げることが多く、人種差別と性差別に対する声明としてのレコード3部作をドロップしたり、ユダヤ人とアラブ人、パレスチナ人とイスラエル人の結びつきをテーマに楽曲を制作するなど、その歌詞はしばしば「サッチャー的」と評される。初期は白塗りがトレードマーク。
本作は1980年リリースの2ndアルバム。表題曲「JANIS」は彼女が多大に影響を受けた60年代後半のアメリカ人女性ロック・シンガー、Janis Joplinに捧げたもの。ロンドンで録音され、 TelevisionのドラマーBilly Ficcaが参加している。日本では車のCMに楽曲が使われたことで知られていた。
*1)CBGB……70年代~80年代のNYのパンク・シーンを牽引したライブハウスで、Televisionを筆頭に、Ramones、Talking Heads、Patti Smith、The Dead Boys、Richard Hell など多くのバンドがライブを行った場所。2006年閉店。
◆Batsu
以前clubasiaでお会いした時に「描いてくださいよ~」と言われたことを思い出したので、描きました♪ MU2020の消えるDJ未だに忘れられないなあ…
◆諭吉佳作/men
実は「すなばピクニック」MVの諭吉さんのつもりで描いてました!
崎山蒼志さんとの共作「むげん・」から滅茶苦茶やられてしまって、ソロを観に行くために愛知遠征したのをめっちゃ覚えてる。本当に声が好きです!先日リリースされたアルバムを聴きながらつくづく思った。
今回のプレイリストはこちら。
以上、ディグディガ6話の元ネタ紹介でした。ありがとうございました!