地方の構造エンジニアの自邸建築日記④

前回の投稿から早くも半年以上が経過・・・そして土地を購入してから2年が経過・・・いやぁ,放置が過ぎますよね。
本当に本当に忙しくて,なかなか設計に手を付けられていないのですが,何もやっていないわけではなく,隙間時間にコツコツと思いを巡らせています。
何とか時間を捻出しまして,構造の骨格までは概ねFIXというところまで来ましたので,忘れないうちに備忘録として文字起こしすることにしました。

前回のプラン

こちらが前回の日記に書いたプランAというやつですが,色々と迷いましたが最終的にはこちらのプランをベースに設計を進めています。
理由は色々とあるのですが,施工的な制約によるところが大きいです。
とにかく崖地ですから,まともに造成工事をするとお金がいくらあっても足りません。ですから,2015年に軽井沢の案件で行ったように,崖地に杭を施工し,人工地盤を構成することで造成工事を省略し,コンクリートすら使わないで建築をつくるというのが大前提になってきます。
その際,いかにして急斜面に杭を打つかが重要になるのですが,杭屋さんに色々とヒヤリングをした結果,造成とまではいかないが,ある程度は平場をつくらないと杭を敷地内に連続的に打っていくのは難しいとのこと。前回のプランBの場合だと,かなりの数の鋼管杭を施工することになり,施工費を圧迫することになりそうでした。
一方で,プランAの場合は,既に平らに造成がなされている隣地(2023年10月現在まだ空き地)を借りることができれば,そこから杭打機が届く範囲においては準備工事無しで直接杭を打つことが可能であることが分かりました。
そのようなことからプランAで基本設計は固めに行くことにし,構造的にはひし形の崖下側に杭を2本施工し,崖上側は直接基礎で地山にランディングさせることで,2点支持のようなメガストラクチャを構成することにしました。
崖地に大きな橋をかけるイメージです。その決断をした段階で,この建築はとにかく見上げの見せ方(魅せ方)がすべてだなと感じました。
ひし形のサイズはスパン20m近くにもおよび,かなりの大スパンなので,純木で構成するのは難しい。どちらにしても鋼管杭をそのまま伸ばして柱にする以上は部分的に鉄骨造となることは避けられない。
そこで,崖地をかけ渡す橋については,鉄骨トラスで合理的につくることとし,その橋を頼りに木造で空間を形作っていくこととしました。
そして,木造部分については,4m以下の製材のみで構成することで,県産材の市場流通の製材のみの利用にこだわることとしました。
しかしながら,スパンは20mに及びます。鉄骨の橋が架かっているとはいえ,とても4m以下の製材のみで構成するようなサイズ感ではありません。
小さな部材の集積で大きな架構を構成するために,木造部分についてはレシプロカル構造を採用することにしました。
そして,その架構を全面に見せることで,見上げとしての建築たる存在感を出すことにしました。
とりあえず勢いで言語化しましたが,忙しいので具体的な架構のイメージはまた別の機会に書きます。
とりあえず,
・崖下にだけ鋼管杭を打ち,そのまま柱として伸ばす
・崖上は地山に直接ランディングさせる
・鉄骨トラスによるメガストラクチャで崖地に橋を架け,その2点を結ぶ
・橋を土台にして4m以下の製材のみで構成されるレシプロカル構造の床をつくり,大スパンを支持する見上げの架構として魅せる
という構造デザインで進めています。

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