製品の小型化や高速化を実現する化合物半導体。

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アジア経済ニュースNNA ASIAは2021年12月10日に、世界的に脱炭素化に向けた動きが強まる中、製品の小型化や高速化を実現する化合物半導体(Compound semiconductors)への注目が高まっていると報告した。

EV(Electric Vehicle/電気自動車)やグリーンエネルギーのほか、第5世代(5G)移動通信システムなどに関連する産業で、化合物半導体の応用が進む。

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自社開発したEVの試作車を2021年10月に発表したEMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手、鴻海精密工業も生産拡大に乗り出すと伝えている。

https://time-az.com/main/detail/75825

自動車の軽量化や、充電の快速化といった性能の向上につながるため、鴻海の新興技術研究拠点「鴻海研究院」の半導体研究所の郭浩中所長は、「EV開発で化合物半導体材料の窒化ガリウム(GaN)と炭化ケイ素(SiC)は欠かせない。」と語る。

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世界的にEVシフトが進む中、鴻海はパワー・化合物半導体の関連技術を重視していると説明した。

鴻海は、SiCウエハーの生産・研究開発(R&D)拠点とするため、EVのSiC技術の発展に向けて2021年08月に台湾メモリー大手の旺宏電子(マクロニクス)から新竹科学園区(竹科)にある6インチウエハー工場を取得すると発表した。取得額は25億2,000万台湾元(約103億円)。

竹科工場のSiCウエハーの目標月産能力は1万5,000枚で、EVおよそ3万台に応用できる見込み。まずは少量生産から始め、2024年にも量産を開始する予定で、鴻海が発表したEV向けに供給する。

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鴻海の担当者によると、SiCの需要は今後も拡大するとの見方で、鴻海は自社生産のほか、欧米企業との提携も引き続き強化する方針を明らかにしている。

台湾政府系研究機関のITRI(Industrial Technology Research Institute/工業技術研究院/工研院)も化合物半導体の発展に向けて動きだしている。2021年09月に化合物半導体エコシステムの構築を目指す「南方雨林計画」を始動した。

「南方雨林計画」では、台南市六甲区と沙崙地区にR&D拠点とテストセンターを設置する。台湾で化合物半導体の専用エリアが設けられるのは初めてである。域内外からの民間投資を促進し、車載用化合物半導体の国際的なサプライチェーン(調達・供給網)を構築したい考えという。

工業技術研究院の産業科技国際策略発展所(産科国際所)の蘇孟宗所長によると、工業技術研究院は高雄市でも専用産業エリアの設置計画がある。南部もハイテク産業が集中する北部の新竹地区のように発展させたい考えを明らかにしている。

蘇孟宗所長は台湾の強みとして「化合物半導体の応用が進むとされるEV、通信、グリーンエネルギー産業などの発展に向けて力を入れており、台湾企業にとっては参入しやすいのではないか」と分析している。

台湾で化合物半導体の発展に向けた機運が高まる一方、技術不足などが課題だといわれている。
鴻海研究院半導体研究所の郭所長によると、化合物半導体のSiC技術は日本や米国、ドイツが進んでいるという。台湾では材料や設備面での後れも指摘されている。

生産能力では中国などが先行するとみられている。SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International/国際半導体製造装置材料協会)が2021年10月に発表した予測では、2023年の世界パワー・化合物半導体ウエハー工場の生産能力のシェアは、中国が33%と最大だった。これに対して日本(17%)と欧州・中東(16%)が続き、台湾は11%になるとみている。

つまり、台湾は乗り遅れている。

台湾は技術が成熟したシリコンベースの半導体生産に強みを持つ。
工研院産科国際所の蘇所長は「台湾のシリコンベース半導体企業も化合物半導体に注視しており、将来性についても理解している。」とコメントした。蘇所長は台湾での化合物半導体の発展に向けて、日本や欧米と協力する可能性も視野に入れている。

もう、コロナに付き合っている時期ではない。


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