ディーゼル・エンジン世界最大手「カミンズ」と、気候変動の戦場。

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Forbes JAPANは2021年11月21日に、化石燃料で駆動するトラック・エンジンの最大手メーカー「カミンズ(Cummins)」には100年の歴史がある。

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その「カミンズ」のCEOトム・リネバルガー(Tom Linebarger)が、コットランドのグラスゴーで開催された気候変動対策を協議する会議「COP26(26th Conference of the Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change/国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)」に出席したと報告した。

https://time-az.com/main/detail/75663

トム・リネバルガーは、パートナー企業や顧客に対し、二酸化炭素の削減を図るため、バッテリーや水素で駆動する車両への転換を支援する方針を表明した。

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乗用車市場は、EV(Electric Vehicle/電気自動車)の集中しているが、今後は物流トラックや建設車両、鉱山用重機などの大型商用車や、電車、船舶、航空機などが、どこへ向かうのか、大きな話題になり始めた。

トム・リネバルガーは、現状では軽量自動車と大型車両では異なる電動パワートレインが必要だという。

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「気候変動は危機的問題であり、バッテリーの方が燃料電池より優れているといった議論は不毛だ」とリネバルガーはグラスゴーで述べた。

確かに、EVには、電気の供給でいずれ限界が来る。

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特に、電気の確保で化石燃料を使えば、最悪の循環になる。

テスラのCEOイーロン・マスク(Elon Musk)は、バッテリーに比べて水素燃料は効率が悪く、水素と酸素から電池を作る燃料電池スタックは高コストだとして、水素の利用を強く批判している。

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しかし、長距離を走行するトラックや商用車のメーカーは、重量が数トンあり、充電時間が長いリチウムイオン電池が最適なソリューションだとは考えていない。マスクは、スペースXのロケットにはバッテリーでなく、灯油と液体酸素を利用しているが、これは温暖化の原因となる黒い炭素粒を排出する。

実際の問題として、両陣営とも。低価格で高効率のエネルギー確保に問題を抱えている。

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COP26の主要テーマは、脱石炭だった。
共同宣言の草案では、化石燃料への補助金の段階的廃止が盛り込まれ、歴史的な突破口になると思われたが、石油会社やガス会社が補助金の維持を求めたため、2回目の草案では表現が弱められた。

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バッテリーが電気を蓄えるのとは異なり、燃料電池は水素と酸素の化学反応によって必要な電気を発電し、副産物として生成されるのは水のみだ。インディアナ州コロンバス(Columbus, Indiana)に本拠を置く「カミンズ」以外にも、トヨタや日野自動車、現代自動車、ボルボ、ダイムラー、ニコラ、ゼネラルモーターズ、ナビスターなどが大型車両に水素燃料電池を搭載しようとしている。

テスラのEVトラック「セミ」は、重量が数トンもあるバッテリーを搭載しているという非現実的なマシンになっている。

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メーカー各社は、1日に数百キロ走行する大型トラックにはパワートレインがより軽く、ディーゼル車と同等の時間で燃料が充填できる燃料電池の方が適していると考えている。

「カミンズ」は、同様に長い距離を移動する必要のない小型で軽量な車両にバッテリーは適しているが、遠隔地に住んでいる人や、大型車を必要とする人には実用的でないと考えている。

「持ち運びが可能な水素に比べ、バッテリー充電ステーションを全ての農場やあらゆる用途に導入するには驚くほど高いコストが掛かる。反対に、自宅で充電ができる場合には、水素を持ち運ぶのは効率が悪い」とリネバルガーは言う。

「カミンズ」のニューパワー・セグメント(New Power Segment)部門でプレジデントを務めるエイミー・デイビス(Amy Davis)は、

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「このカンファレンスには大手フリート業者が数多く参加した。彼らのサステナビリティ推進責任者からは、『これらの目標をどうやって達成するのか? より早く目標を達成するためにカミンズはどのような支援をしてくれるのか?』といった質問を受けた。 『今の充電設備では、3台のトラックを同時に充電することすらできない。』といった声もあったが、このような場合に、燃料電池ドライブトレインがバッテリーを補完できる。」と話す。

電動パワートレインの技術は進化しているが、短期的には他の選択肢を見落とすべきではないとリネバルガーは指摘した。

「我々に残された時間は少ない。だからこそ、内燃機関向けには、今ある低炭素燃料や天然ガス、再生可能天然ガスの利用を開始するべきだ。やるべきことは簡単だ。大気中に炭素を放出したら、回収することができないため、できることは全てやるべきだ。」とリネバルガーは述べた。

さらに、今後どのように水素を安く作るかというテーマも、まだある。

どこにたどり着くかもわかっていない。

2021-11-19---2050年に「NEV(新エネルギー車)」の比率9割。
2021-11-13---COP26最終合意達成。
2021-11-02---COP26の会場では、日本企業が脱炭素技術などを世界に披露。
2021-11-01---スコットランドで開催中の「COP26」首脳級会合開会。
2021-09-02---EV特許の競争力、トヨタ首位。
2021-09-02---トヨタがアップルカーを作るかもしれない。

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