見出し画像

ユダヤ人の文学的遺産を育む。

イスラエルの国立図書館「The National Library of Israel(イスラエル国立図書館)」は2022年03月01日に,ユダヤ文学部門の一つであある2016年サミ・ロア賞(2016 Sami Rohr Prize)を受賞した作家リサ・レフ(Lisa Leff)が、「過去への扉のようなもの」であると考えるユダヤ教研究図書館が果たす重要な役割について考えを述べたと報告した。

ユダヤ人の歴史家として、何十年もかけて世界中を旅し、ユダヤ人の古い本や貴重な本を所蔵する研究図書館で読んできた。物理的な書物は壊れやすいものであり、専門家にとって、これほどまでに素晴らしいものはない。

縫い合わされ、糊付けされ、表紙に綴じられた紙の束には、解読されればユダヤ人の過去の声とつながる文章が、不気味なほどダイレクトに感じられるのである。そのため、長年にわたって本を管理してきた司書がいなければ、私たちはその本に込められた声にアクセスすることができないことを忘れがちである。


https://time-az.com/main/detail/76526

昔は、絶版になった本がどこにあるのか、調べるのも大変だった。しかし現在では、イスラエル国立図書館をはじめとする研究図書館の大規模な目録デジタル化プロジェクトにより、インターネットに接続できる環境であれば、誰でもその情報を入手することができるようになった。しかし、何世紀も前のヨーロッパで、ユダヤ人作家によって書かれた本が、どのようにして長い年月を経てきたのかは、相変わらず謎のままである。 そして、なぜこのような書物が、執筆・出版地から遠く離れたヨーロッパの地で、イスラエル国立図書館をはじめとする主要なユダヤ人研究図書館の蔵書となったのか、その理由も同様に謎である。

ナチスとその同盟国によるユダヤ人の生命と財産の大規模な破壊、そしてユダヤ人図書館が略奪の対象として選ばれていたことを考えると、これらの書籍が全く残っていなかったという事実は、本当に驚くべきことである。この本が生き残ったのは、決して偶然ではない。ホロコーストの間、ヨーロッパのユダヤ人は自分たちの図書館や書庫を守るために、時には自分自身や家族を危険にさらしてでも、できる限りのことをしたのである。

例えば、ヴィルナの紙旅団(Vilna’s Paper Brigade)の英雄的な奴隷労働者たちがそうであった。彼らは貴重な書物をナチスから隠し、救おうとしたのである。同様に、フランスでは、パリ・コンシストリの指導者(leaders of the Paris Consistory)たちが、ロスチャイルド家のシャトーの壁(the walls of the Rothschild family’s chateau.)の中に書庫を隠し、ナチスの略奪から自分たちの書庫を保護したとされている。

このように、ユダヤ人のコレクションを保護するための努力がなされたにもかかわらず、ナチスはヨーロッパのユダヤ人の書物や書類を何百万冊も手に入れ、ドイツに持ち込んでしまったのである。終戦後、連合国がこれらの蔵書を偶然発見し、所有者の特定が容易なものだけを返還することを提案したとき、ニューヨークやエルサレムのユダヤ人文化活動家たちは恐怖におののいた。というのも、ヨーロッパのユダヤ人図書館のほとんどが破壊され、多くの蔵書が失われてしまったからだ。連合国の方針も知っていたため、彼らは最悪の場合、これらの本がユダヤ人のほとんどいないドイツに残ってしまうことを恐れていた。

そこで、ユダヤ人の文化活動家が結集し、ユダヤ人の新しい居住地で使用するために、ユダヤの書物を保存することにした。ユダヤ人国立大学図書館(Jewish National and University Library/NLIの前身)の代表としてゲルショム・ショーレム(Gershom Scholem)は連合国占領下のドイツに赴き、多くの貴重書や写本を持ち帰った。現代のユダヤ人作家は、古書を読むという行為を通じて、ある意味、往時のユダヤ人作家と交流することができるのである。

サミ・ロール・ユダヤ文学賞(The Sami Rohr Prize for Jewish Literature)が新進作家にスポットライトを当てるのは、これらの作家がそのキャリアを通じて、新しい世代にユダヤ文化の解釈と伝達を行う上で重要な役割を果たすことを、創設者たちが理解しているからである。イスラエル国立図書館(National Library of Israel)のような、ユダヤ人の過去の声を次世代に伝えるための図書館がなければ、ユダヤ人作家がこの重要な仕事をすることはできません。

イスラエル国立図書館とサミ・ロール賞は共に、ユダヤ人の過去の声を保存すると同時に、活気に満ちたグローバルなユダヤ文学文化の未来を保証する才能の育成に取り組んでいる。

サミ・ロア ユダヤ文学賞とイスラエル国立図書館は、このほど、活気ある国際的なユダヤ文学文化とコミュニティをさらに発展させるという共通のビジョンを推進するために、新たな協力関係を結ぶことを発表した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?