見出し画像

タイ産ドリアン、マレーシア産ドリアン、ベトナム産ドリアン狂想曲。

アジア経済ニュースNNA ASIAは2022年04月20日に、タイで「果物の王様」と呼ばれるドリアン(durian)が中国で人気になっていると報告した。中国では輸入ドリアンの9割をタイ産が占めるという。

タイ政府は中国の旺盛なドリアン需要をさらに取り込もうと、これまでのトラックを使った輸送だけでなく、鉄道の活用や空路による輸送にも力を入れようとしている。

しかしその一方、タイ国内向けのドリアンが値上がりするなどの弊害も生まれている。

中国の英字新聞「チャイナ・デーリー(China Daily)」によると、中国は2021年に82万1,500トンのドリアンを輸入した。2017年と比べて3.6倍に相当する規模で、主な調達先はタイだという。

タイにとっても中国は最大のドリアンの輸出先となっている。

https://time-az.com/admin/edit/76778

業界関係者によると、タイのドリアンの今年の生産量は74万トンとなる見通しで、うち7~8割が輸出されるがその9割が中国向けになるという。タイ政府は今年、ドリアンを含めた中国向けの果物輸出を金額ベースで前年比65%増の1,800億バーツ(約6,840億円)と設定している。

タイから中国への輸送手段を見ると、トラックを使った陸路の割合が最も多い。タイ政府の最新データである22年02月01日~04月07日の輸出量を見ると、陸路輸送が全体の50.6%を占めた。ラオス北部を経由するルートのほか、ラオスを通過してベトナムを経由するルートがある。

陸路を使う場合、中国とラオスとの国境にある検問所を通過しなければならない。中国側は現在、新型コロナウイルス感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ(Zero Corona)規制」を取っており、ドリアンの鮮度が失われてしまう懸念がある。

しかし、上海での混乱から。北京政府も「ゼロコロナ規制」を中止した。

そこで中国へのドリアン輸出をさらに拡大したいタイ政府が大きな期待を寄せているのが、鉄道を使った輸送である。

タイ産の果物が3月末、2021年12月に運行が始まったラオスのビエンチャンと中国国境を結ぶ「ラオス・中国鉄道(中老鉄路)」で、初めて中国に輸送された。

40トンのドリアンと20トンのココナツはコンテナ3台に分けて積まれ、東部ラヨーン県を出発し、東北部ノーンカーイ県で列車に積み替えられた。ノーンカーイ県(Nong Khai province)のメコン川の対岸にはラオスの首都ビエンチャン(Vientiane)がある。ラオス入りした後は、中老鉄路が運行する貨物列車で中国に到着した。

ラヨーン県から中国の雲南省昆明市までの輸送に要する期間はわずか4~5日。輸送手段として鉄道が最速とみられる。

中老鉄道は、ビエンチャンから北部のルアンパバーン(Luang Prabang)県、ウドムサイ(Udom Sai)県を越え、ルアンナムター(Luang Nam Tha)県のボーデン(Boden)までを結ぶ。ビエンチャンと昆明(Kunming)までの所要時間は約10時間である。

タイはドリアンの空輸にも力を入れている。
2022年02月01日~04月04日の輸出量のうち空輸が占める割合は42.9%だった。タイ国際航空は2022年03月は39便の果物専用の貨物便を運航。うち27便が中国・広州向け、4便が中国・昆明向け、8便が昆明からインド・デリー向けだった。タイ航空は2022年04月に入ってからは、果物専用の貨物便の運航を計58便に増やした。

一方、海上輸送は全体の6.5%だった。割合は小さいが政府関係者によると、新型コロナの影響でこれまで以上に重要性が高まっているという。

パソコン世界大手の聯想集団(Lenovo Group/レノボ・グループ)の親会社である聯想控股(Lenovo Holdings/レジェンド・ホールディングス)傘下で、農業・食品分野への投資を担う佳沃集団は毎年、タイで400台の車両を使ってドリアンを港まで運搬。

チャイナ・デーリーによると、ベトナムとの国境に近い広西チワン族自治区の欽州港に10日間かけて船で運んだ後、陸運に切り替えて中国全土に配送する。佳沃は中国国内では600台以上の車両を活用したコールドチェーン(低温物流)を構築している。欽州港で昨年取り扱ったドリアンは2万70トン。うち9割がタイ産だった。

もう、タイ国内に良質のドリアンがないのではないだろうか?

中国で大人気のタイ産ドリアンだが、中国への輸出が増えたことでタイ国内では弊害も発生している。ドリアンの価格高騰である。

いっそのこと、タイ産ドリアンを食べたくなったら、中国に行った方があもしれない。

以前、中国が栄えると、世界中で餓死者植えるという統計があった。

まさに、それがドリアンで起こっている。

タイ政府によると、2022年01~03月の1kg当たりのドリアンの国内卸売価格は平均196.67バーツと、2018年同期と比べて63.9%上昇した。SNS(Social Network Service/会員制交流サイト)のフェイスブック(Facook)e上には「1kg当たり100バーツを超えれば、さすがに手が出ない」などという消費者の悲痛な書き込みが上がっている。中国による「買い占め」に対する批判の声も聞こえてくる。

これを予測した米国の経済学者は、中国を裕福んしてはいけないと言っていた。

マレーシアから空輸される冷凍ドリアン人気も懸念材料である。冷凍ドリアンはこれまでは主に、収穫期である05~08月以外の需要を取り込んでいた。ところが最近では、その価格競争力の高さと安定した供給力を武器に、年間を通じた需要が高まっているという。

ベトナムも中国市場への本格参入を狙う。
国営VNA(Vietnam News Agency/ベトナム通信などによると、同国のドリアンの収穫量は年60万トン。タイ産と競合するため、頭脳派であるベトナムは、ドリアンの栽培地や出荷地を明確にすることでブランドイメージを高めようとしているという。

タイ国内にも課題がある。シーズン前に高値で販売してひともうけしようと、成熟前のドリアンを出荷するタイ農家が後を絶たない。
タイメディアによると、04月には東部チャンタブリ県(Chanthaburi, Thailand)のある倉庫で、出荷基準に満たないドリアン50トンをタイ当局が押収した。最近では「まずくて食べられない」などといった中国人消費者からの苦情が増えており、放置すればタイのブランド価値の低下を招きかねない状況のようである。

私もタイで、成熟前のドリアンを購入したことがある。

2022-04-12---中国のロックダウンでマンゴーが売れない。
2022-04-12---日本のNXHD、中国―ラオスで複合輸送サービスを開始。
2022-03-02---メコン川のデータ共有がインパクト測定の鍵。
2022-02-01---早くて、安いラオス・中国鉄道の貨物利用国が急増中!
2022-01-05---ベトナムとタイの果物からコロナウイルスを検出。
2020-08-17---ミャンマーからのマンゴー輸出、シンガポール向けが急増!
2019-01-17---ドリアンの種!シンガポールの南洋工科大が食用安定剤に活用。
2018-06-02---タイは、宇宙食として「フルーツの王様」ドリアンを宇宙に送る。
2017-10-09---果物の王様「ドリアン」のゲノムほぼ解読。
2015-07-10---フィリピンで、ドリアン風味のキャンディーを食べて、1300人に食中毒。
2015-07-06---2015年がなぜ、ドリアンに良い年か!?
2014-05-29---極端に反応される果物『ドリアン』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?