台湾のTSMC、熊本県に新工場を建設する方針で固まった。

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日本経済新聞 電子版は2021年06月10日に、ファウンドリー(半導体の受託製造)世界最大手の「TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Limited/台灣積體電路製造公司/台湾積体電路製造)」が、本格的に分散型を検討し始め、米国への生産移管に続き、日本で初めてとなる半導体工場を熊本県に建設する検討に入ったと報告し、日本中が沸き立ち、北海道、長野、筑波なども一斉に立候補した。

このニュースを見た時、最初は、キヤノンの御手洗の故郷を思い出したが、すぐに否定した。

そして、日本経済新聞 電子版は2021年10月11日に、TSMCがソニーグループなどと協力し、日本の熊本県に新工場を建設する方針が固まったと報告した。多くの国がTSMCに熱烈なラブコールを送るなか、研究開発を起点に関係を深くしてきた日本は、生産面の提携に手がかかった。工場の国内誘致を契機に、半導体産業の基盤を立て直すには課題も多い。

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場所は、熊本県菊陽町にあるソニーの工場の隣接地に、新工場を建設することを視野に検討を進めていることが分かった。

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2019年に実現した東京大学とTSMCのアライアンスで、AI(Artificial Intelligence/人工知能)などで高い能力を求められる先端半導体に向けて、開発面での協力体制を築き、TSMCは試作サービスを提供し、東大は研究開発に同社のチップ設計用のインフラも採用し、日本とTSMCとの提携が大きく前進した。

日本とTSMCは、材料や物理、化学などの最先端領域での技術者交流などにも取り組んでいる。

https://time-az.com/main/detail/75362

これらの連携を受け、五神真東京大学総長(当時)は「かつて類をみない密度と深さで国際連携を進める決定をしたことをうれしく思う」と、コメントしている。

TSMCは2021年02月、茨城県つくば市に開発拠点を開くと発表し、つくば市にはTSMCの拠点を誘致することにも成

半導体の性能向上をけん引してきた微細化に頭打ち感が出ている中で、チップを積み重ね高い性能を出す「3次元パッケージ」技術を開発するのが狙いだと言う。

「後工程」といわれる半導体の製造プロセスで求められる技術領域で、ウエハーに回路を形成する「前工程」を経て、チップに切り分け、電極と接続し、樹脂で封止する技術などを指すと言う。

後工程で使う素材や新たな製造装置で日本勢が高い競争力を維持していることもあり、研究開発の分野で踏みこんだ連携にこぎ着けた。

日本がTSMCとの関係を深めてきたのは、同社がロジック(演算用)半導体に関して世界で最先端の生産技術を有しているからである。半導体の進歩や周辺産業の研究開発は、製造技術と密接に結びついている。半導体産業に携わる産官学の関係者は、日本に高度な演算半導体の生産ラインがないことに口をそろえて危機意識を示してきた。

高度なロジック半導体の生産拠点をもたないことは、海外に生産能力を依存する調達面だけの問題ではない。先端の製造プロセスに携わる機会を逸したままでは、これまで日本の半導体産業が培ってきた製造プロセスにまつわる知見や人材といったレガシー(遺産)が断絶しかねない。

高い競争力を持つ半導体装置・材料メーカーなども中核機能を海外に移すリスクも抱えることになる。

経済産業省の戦略検討会議座長も務めた、産学官横断の研究拠点TIA運営最高会議議長の東哲郎(東京エレクトロン前社長)は「日本で先端ロジック半導体に関する基盤は失われている。製造プロセスやそれを支える人材、開発エンジニアが欠かせない。10年はかかるイメージで戦略を組みながら前工程を強化していく展望になる 。」と指摘していると報告している。

TSMCが日本で検討しているのは回路の線幅が20ナノ(ナノは10億分の1)メートル台の工場だと言われている。
最先端の半導体技術は3ナノメートルで、世代としては10年近く前の生産技術となる。それでも、今後は自動車や産業用途などでの需要が拡大していく領域であり、日本勢では断念してきた先端の製造ラインとなる。

もちろん、工場誘致が単純に日本の基盤強化につながるほど甘い話ではない。

しかし、工場運営のエンジニアや、サプライチェーンの企業は、この製造ラインに直接携われるようになる。国内に先端ロジック半導体の技術基盤を確保する上では欠かせないピースになる。

自動運転やIoTなど半導体需要の拡大が課題
TSMCの拠点誘致を最大瞬間風速で終わらせないために、取り組むべき課題は少なくない。まずは、日本企業が需要家として存在感を示せるか。家電やパソコンなどの電機分野は失速したものの、自動運転や電動化が続く自動車や、無数のセンサーから情報を集めるIoTを活用した「スマート工場」など半導体需要の有望市場は大きい。この市場を刈り取れるスピードを高められなければ、半導体の売り先としての価値は墜落していく。

さらに事業運営をどのように支えるかも焦点になる。中国や韓国などの半導体企業は政府の助成などをうけ、工場の運営コストが割安とされる。競争をしていく上でイコールフッティング(同等の条件)を確保しなければ、結果として生産量を定着させていくことが難しくなっていく。

つまり、TSMCにおんぶに抱っこではなく、日本の人材教育と確保が不可欠で、日本が先導できる環境を求められる。
経済産業省は2021年06月に示した「半導体・デジタル産業戦略」で「民間事業支援の枠を越え、国家事業として取り組む」とする方針を掲げた。

市況や技術動向の変化が早い半導体産業で、一度落ちたら這い上がれなくなる産業ということを自覚する必要がある。
産官学が目線をそろえ、腰を据えて半導体産業を立て直せるか?TSMCの開発拠点に続き、工場誘致も実現すれば、立て直しへの¥足がかりとなると報告している。

熊本県菊陽町の熊本ソニー(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社 熊本テクノロジーセンター)の緯度、経度。
32°53'26.4"N 130°50'16.6"E
または、
32.890661, 130.837947

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