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7万年以上の年縞が残された「奇跡の湖」

朝日新聞は2024年07月16日に、気候が不安定になっていることを私たちはすでに体で感じている。

その秘密を解き明かすカギが、福井県の湖にあるという。

日本海に臨む福井県美浜町と若狭町に、五つの湖が集まる名勝、三方五湖(みかたごこ)はある。

この湖には1年に1枚ずつ薄く堆積(たいせき)する縞(しま)模様の泥が45メートル以上の厚さで存在している。
これを『年縞(ねんこう)』と言う。

堆積物が湖底に乱れずに沈殿するには、いくつもの条件が必要で、洪水で大量の土砂を運ぶ川が直接流れ込んでいない。水深が深いため底部に酸素がなく、生き物が泥をかき混ぜない。湖底が沈降を続け、堆積物で埋まることがない。そんな偶然が重なった結果、7万年以上の年縞がこの湖に残されたという。

7万年のタイムマシン。

年ごとの縞々(しましま)を数えるという極めて単純な方法で、時間を精密に計れる。水月湖の年縞で、数万年前の出来事が世界で最も高精度に分かる。

通常、岩石の中には数百年から数万年分の時間が混ざっているが、年縞があれば1年ごとの時間を切り分けることができる。人間にとって切実な時間感覚で当時の状況を分析でき、人間の営みの時間に、地質学がつながった。

その完全に連続した年縞の採取に2006年に成功し、12年に世界で使われる年代の世界標準のものさし(IntCal)に採用された。地質学におけるメートル原器のような存在になった。

1990年代、まだ年縞研究が確立していなかったころに、水月湖から採取された年縞を5年かけて全部数え上げた先輩研究者がいた。当時の技術的な限界から誤差が生じ、惜しくも国際標準として採用されることはなかった。

それを引き継いで、イギリス政府からもらった限られた研究予算で掘ろうとした時、長崎県のボーリング会社が利益度外視で作業を請け負ってくれた。そうして採取された年縞を、今度は各国の研究者と共同で綿密に1年1年数え上げ、多くの人間が限られた人生の時間を費やし、年縞が人々の目に触れるようになった。

水月湖から採取された「年縞」の展示は、福井県年縞博物館にある。

その「年縞」には、1586年、豊臣秀吉の時代に発生した天正の大地震による痕跡も見つかっている。

約7300年前、現在の鹿児島県沖にある鬼界カルデラが噴火した際の火山灰。

九州南部の縄文文化を壊滅させた過去1万年で最大の火山災害など、年縞によって、気候変動や火山噴火の歴史が目に見えるという。

まさに、人間にとって大きな脅威である劇的な気候の変化を目で見ることができるという。

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福井県美浜町と若狭町にある、五つの湖が集まる名勝「三方五湖(みかたごこ)」の一つ「水月湖」の緯度、経度。
35°35'04.2"N 135°52'57.3"E
または、
35.584508, 135.882583

福井県年縞博物館の緯度、経度。
35°33'32.5"N 135°53'49.9"E
または、
35.559031, 135.897206

https://www.asahi.com/articles/ASS7C4JWZS7CUPQJ003M.html?linkType=article&id=ASS7C4JWZS7CUPQJ003M&ref=opinion_mail_top_20240722

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