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大きな犬、小さな犬:イヌの大きさの違いは突然変異による。

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Nature Briefingは2022年01月27日に、この遺伝子変異は、おそらく古代のオオカミに由来するものだと言う。

チワワからグレートデーンまで、犬は地球上のどの哺乳類よりも大きさが異なる種である。このような変異の背景には、古代のオオカミという意外な原因があることが判明したと報告した。1

この突然変異は、IGF1と呼ばれる遺伝子の近傍に存在する。

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https://time-az.com/main/detail/76138

この遺伝子IGF1は、家畜の体格の変化に大きな役割を果たしているとして、15年前に研究者たちが注目したものである。しかし、この遺伝子変異の原因を突き止めようとする努力は空振りに終わっていた。

メリーランド州ベセスダの米国国立ヒトゲノム研究所の遺伝学者エレイン・オストランダー(Elaine Ostrander, a geneticist at the US National Human Genome Research Institute in Bethesda)は、「IGF1は我々の悩みの種でした。

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過去3万年の間にオオカミから家畜化された古代の犬は、ある程度大きさに違いがあった。しかし、最大種は最小種の40倍にもなる現在のような極端な大きさの違いは、人類が近代品種を確立した過去200年の間に出現したのである。

オストランダーと、フランスのINSERM-レンヌ大学の遺伝学者ジョセリン・プラッセ(Jocelyn Plassais at INSERM-University of Rennes, France)を含む共同研究者たちは、古代の犬、オオカミ、コヨーテ、230種の現代の犬を含む1,400種以上のイヌ科動物のゲノムを分析した。

IGF1遺伝子の周辺領域の変異と、イヌや野生のイヌ科動物の体格を比較したところ、ある変異が際立っていることがわかった。

この変異体は、ロング・ノンコーディングRNA(long non-coding RNA)と呼ばれる分子をコードするDNA領域に存在し、強力な成長ホルモンであるIGF1タンパク質のレベルを制御することに関与しているのである。

研究者らは、この変異体には2つのバージョン、すなわち対立遺伝子を同定した。

すべての犬種で、一方の対立遺伝子を2つ持つ犬は体重が15kg未満の傾向があり、他方の対立遺伝子を2つ持つ犬は体重が25kg以上の犬に多くみられた。それぞれの対立遺伝子のコピーを1つずつ持つ犬は、中間の大きさになる傾向があるとエレイン・オストランダーは言う。

大型の対立遺伝子を2コピー持つイヌは、「小型」の対立遺伝子を2コピー持つイヌと比較して、血液中のIGF1タンパク質のレベルも高かった。

研究者たちが他のイヌ科動物のゲノムを調べたところ、同様の関係があることが判明した。「これは単なる犬の話ではないのです。オオカミやキツネやコヨーテの話でもあり、あらゆる話です。犬全体の話なのです」とエレイン・オストランダーは言う。

研究者らは、小さな体に関連する対立遺伝子は、進化的には大きな体の対立遺伝子よりもずっと古いと考えている。

コヨーテ、ジャッカル、キツネ、その他ほとんどのイヌ科動物は「小型」バージョンを2つ持っており、これらの動物の共通祖先にこのバージョンが存在したことが示唆される。

大型の対立遺伝子がいつ進化したかは不明である。

研究者らは、約5万3,000年前にシベリアに住んでいた古代のオオカミが、このバージョンのコピーを1つ持っていることを発見した。他の古代のオオカミや現代のハイイロオオカミは2つ持っている傾向があり、この大型対立遺伝子はオオカミにとって有益であった可能性が示唆される。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の進化生物学者であるロバート・ウェイン(Robert Wayne, an evolutionary biologist at the University of California, Los Angeles)によれば、「以前は科学者の間では、小さな体格は比較的新しい遺伝的変化と関係があり、家畜の犬に特有のものである可能性があるという見解が主流であったとのことである。」「今回の発見は、その話を覆すものです。それがこの研究の素晴らしいところです。」

ウースターのマサチューセッツ大学チャン医学部の遺伝学者エリノア・カールソン(Elinor Karlsson, a geneticist at the University of Massachusetts Chan Medical School in Worcester)によれば、この研究は、犬が現在の灰色オオカミの集団とは異なる、より小さな体のオオカミから家畜化されたことのしるしかも知れないとのことである。

「犬につながったオオカミがどのような姿をしていたのかさえ、わかっていません」と彼女は言う。

研究者たちも、犬の大きさに関する話はまだ完全ではない、と注意を促している。

ジョセリン・プラッセは、この変異体がIGF1タンパク質のレベルにどのような影響を及ぼすかを解明したいと考えている。

IGF1遺伝子そのものが、犬種間の変異の約15%を占めているのである。

エリノア・カールソンは言う、「我々は、狼がチワワサイズになるような突然変異の話をしているのではありません。」「我々は、少し小さくなる傾向がある多くの変異の一つについて話しているのです。」
と言う。

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