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イギリス政府は、北アイルランド議定書を一方的変更。

ヨーロッパ経済ニュースEUROPE NNAは2022年05月18日に、イギリス政府は2022年05月17日に、EU(European Union/欧州連合)離脱協定に含まれる「The NI Protocol(北アイルランド国境問題にかかわる議定書」に一方的に変更を加える国内法案を近く議会に提出すると発表したと報告した。

北アイルランドの親イギリス強硬DUP(Democratic Unionist Party/民主統一党)が同議定書に抗議し、政権復帰を拒否していることが背景にあるという。

法案では、イギリス本土から流入する製品のうち、北アイルランド内で消費される製品については通関検査を免除するとしている。

When was the Northern Ireland Protocol agreed?
Can I travel from Ireland to Northern Ireland?
Is there an open border between Ireland and Northern Ireland?
What is Article 6 of the Northern Ireland Protocol?

https://time-az.com/main/detail/76893

リズ・トラス(Liz Truss/Elizabeth Mary Truss)外相は下院での演説で、北アイルランド住民の一部が同議定書を支持していないため、北アイルランド自治政府が機能不全に陥り、1998年のベルファスト合意(Belfast Agreement 1998)が緊張にさらされていると指摘した。

この法案の狙いは同議定書を破棄することではなく、ベルファスト合意に基づく同議定書の目的を果たすことと強調した。

国内法案では、同議定書の条項のうち、南北アイルランド間のヒトの移動の自由や単一電力市場に関する部分など円滑に機能しているものは残す一方で、製品の移動や基準、VAT(value added tax/付加価値税)、国家補助規制、欧州司法裁判所の管轄権など問題となっている部分を解決するとしている。

中でも、イギリス本土と北アイルランド間の製品移動については、北アイルランド内にとどまる製品向けの「グリーンチャンネル(Green Channel)」を新設し、通関手続きの負担を軽減する方針。また、北アイルランド向けの製品については、企業がイギリスとEUの製品基準のいずれかを選べるようにするとしている。

イギリスはかねて、同議定書の大幅な改定を要求していたが、EUは内容の再交渉には応じない姿勢を示していた。EUは2021年10月に、通関手続きの簡素化や検査の削減など実務面の見直し案をイギリスに提示したが、イギリス政府は先に、これを拒否する姿勢を示していた。

北アイルランドでは、親アイルランド派のシン・フェイン党(Pro-Irish Sinn Féin party)が同議定書を支持する一方で、DUPは破棄を求めている。
2022年02月には、DUPのギバン首相(DUP Prime Minister Givhan)が同議定書に抗議して辞任した。DUPは先の北アイルランド議会選挙でシン・フェイン党に史上初めて敗れ、第2党に転落。ベルファスト合意に基づき、新政権では副首相を輩出することになっているが、同議定書を巡る問題が解決するまで、政権復帰に応じないとしている。

DUPのジェフェリー・ドナルドソン党首(DUP leader Jeffrey Donaldson)は、リズ・トラス外相の演説について「遅すぎたものの歓迎する」とコメント。早急に法案を提出するようイギリス政府に求めている。一方、シン・フェイン党のメアリー・ルー・マクドナルド(Mary Lou McDonald)党首は、政府は「法律違反を法制化しようとしている」と批判した。イギリス国の最大野党・労働党のステファン・ダウティ影の欧州と米国担当相(Stephen Doughty, Shadow Minister for Europe and the Americas)も、同議定書を含む離脱協定を交渉し、これに調印したのはジョンソン首相自身であり、政府がこれに違反することは深刻な問題としている。

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