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イギリス政府、予算案公表。

ヨーロッパ経済ニュースEUROPE NNAは2024年03月07日に、イギリスのジェレミー・ハント財務長官(New U.K. Treasury Chief Jeremy Hunt)は2024年03月06日に、下院で春季財政報告を行い、2024/25年度の予算案を公表したと報告した。

総選挙前に行う最後の財政報告となるだけに、演説では「恒久的な減税」と「長期的な経済成長の支援」をアピールした。

国民保険料率の追加引き下げなどを打ち出したものの、国民の税負担は今後もなお増加する見通しである。

ハント財務長官は「インフレ率は減速に転じており、経済成長も間もなくプラスになる」と予想した。

金利はまだ高水準にあるものの、「今後は生活費支援だけでなく、恒久的な減税で家計を助けることができる。」と強調した。

ただOBR(Office for Budget Responsibility/予算責任局)は、GDP(Gross Domestic Product/国内総生産)に占める税金の比率が28/29年度には37.1%に達し、コロナ禍前の水準を4ポイント上回るとの見通しを示している。

支持率で与党・保守党をリードするイギリスの最大野党・労働党(Labour)の党首サー・キア・スターマー(Sir Keir Rodney Starmer)はこの予算案について「失敗した党の最後の悪あがき」と強く批判した。「国内経済はリセッション(景気後退)入りし、国家支出は予算を超過している。今回の措置を実施してもなお、税負担は過去70年で最も高い。」と指摘している。

予算案の骨子は以下の通り。

■減税

4月から国民保険の保険料率を10%から8%に引き下げる。ハント氏は昨年11月の秋季予算でこの料率を12%から10%に引き下げたばかりだった。不動産売却益への最高課税率は、28%から24%に引き下げる。付加価値税(VAT)課税の対象となる売上高の下限を8万5,000ポンドから9万ポンドに引き上げる。

■たばこ・アルコール・燃料税

電子たばこの原料に26年10月から輸入税を課す。同時にたばこ税も引き上げる方針。一方、アルコール税の凍結は25年2月まで延長する。燃料税を1リットル当たり5ペンス引き下げる措置も、3月末までの予定だったが1年延長。燃料税の凍結も1年延長する。

■税収拡大

税収増に向け、海外に拠点をもつ納税者の国外収入をイギリスで非課税とする制度を25年4月に改定。セカンドハウス購入者向けの印紙税免除と、民泊向け不動産の税制優遇は、いずれも廃止する。エコノミークラス以外の航空旅客税を引き上げる。石油・ガス会社の超過利潤税の課税を1年延長する。

■企業支援

設備投資を全額、税控除の対象とする措置の対象をリース資産にも拡大する。洋上風力発電や二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)などのグリーン産業支援に1億2,000万ポンドを振り向ける。

■成長率見通し

OBRはこの日、今年のGDPが前年比0.8%拡大し、来年は1.9%に成長が加速すると予想。秋季予算時の見通しからそれぞれ0.1ポイント、0.5ポイント、上方修正した。今年のインフレ率見通しは2.2%となり、来年には1.5%と、中銀イングランド銀行が目標とする2%を下回るとみている。

財政赤字額を示す公共部門純借入額(PSNB)は今後、減り続け、25/26年度には2.7%と、政府が目指す3%を下回る見通し。公的債務残高は、24/25年度に対GDP比で88.8%となり、27/28年度に93.2%でピークに達した後、28/29年度は92.9%にやや減ると予想している。

また、賃上げストが起こる。

https://europe.nna.jp/news/show/2633176
https://obr.uk/efo/economic-and-fiscal-outlook-march-2024/
https://obr.uk/docs/dlm_uploads/E03057758_OBR_EFO-March-2024_Web-AccessibleFinal.pdf

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