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ヨーロッパで最初のホモ・サピエンスか?

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Nature Briefingは2022年02月09日に、考古学者は、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)が南フランスのロックシェルター(rock shelter)で短期間生活し、その後謎の消滅を遂げた証拠を発見したと発表した。

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新しい研究によれば、特徴的な石器と一本の子供の歯が、約54,000年前に短期間滞在したホモ・サピエンスのものであり、その前後数千年間そのロックシェルターに住んでいたネアンデルタール(Neanderthals)人のものではないと言う。ホモ・サピエンスの生息期間はわずか数十年と推定されており、ヨーロッパにおけるホモ・サピエンスの最古の痕跡よりも約1万年古いものである。

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022年02月09日に米国の科学雑誌サイエンス(Science)の姉妹誌、「サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)」のオンライン版で発表された研究1では、特徴的な石器と一本の子供の歯が、約54,000年前に短期間滞在したホモ・サピエンスによって残されたと論じている。その前後数千年間、このロックシェルターで暮らしていたネアンデルタール人によるものではなかった。

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このホモ・サピエンスの生息期間はわずか数十年と推定されており、ヨーロッパにおけるホモ・サピエンスの最古の痕跡よりも約1万年古いものである。

https://time-az.com/main/detail/76264

しかし、研究者の中には、その石器や歯がホモ・サピエンスによって残されたものであるかどうか確信が持てない者もいる。

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フランスの国立研究機関CNRSとボルドー大学の旧石器時代の考古学者であるウィリアム・バンクス(William Banks, a palaeolithic archaeologist at the French national research agency CNRS and the University of Bordeaux)は言う、「私はこの証拠はあまり説得力がないと思っています。」と言っている。

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CNRSとトゥールーズ・ジャン・ジョレス大学の文化人類学者であるリュドヴィク・スリマク(Ludovic Slimak, a cultural anthropologist at CNRS and the University of Toulouse-Jean Jaurès)を中心とするチームは、過去30年間、ローヌ渓谷のグロット・マンドラン岩窟(Grotte Mandrin rock shelter in the Rhône Valley)を発掘調査してきた。その結果、約7万年前から4万年前までの数万個の石器や動物の骨、9本のヒト科の歯が発見された。

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石器のほとんどは、ユーラシア大陸のネアンデルタール人の遺跡で見られる「ムステリアン技術(Mousterian technology)」に分類される遺物に似ているとスリマックは言う。
しかし、このシェルターの考古学的レベルの一つ、E層と呼ばれる56,800年から51,700年前のものには、研いだポイントや小さな刃物など、初期のホモ・サピエンスの技術により典型的な道具が含まれているのである。
スリマクによれば、E層の石器は、製作者不明の南フランスのもっと若い遺跡で見つかった石器や、ホモ・サピエンスに関連する中東の同じような年代の遺跡で見つかった石器に似ているとのことである。

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ボルドー大学の古人類学者クレマン・ザノリ(Clément Zanolli, a palaeoanthropologist at the University of Bordeaux)が率いる分析によると、E層にある唯一の人類の歯、おそらく子供の臼歯は、最後の氷河期にユーラシア大陸に住んでいたホモサピエンスの歯と形状が似ていることが分かった。マンドリン洞窟(Grotte Mandrin)で発見された他の歯はネアンデルタール人の歯に似ている。

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研究者たちは、E層の歯がホモ・サピエンスのものかネアンデルタール人のものかを確認するためのDNA抽出は、まだ試みていない。
スリマクによれば、未発表の分析で、他の研究者がE層より古い堆積物やマンドリン洞窟の若い層の歯からネアンデルタール人のDNAを発見しているとのことである。

しかし、研究チームは、E層を含むロックシェルターで見つかった馬の歯からは、保存状態の良いDNAをあまり抽出できなかった。

そこで、遺伝物質をそのまま取り出せる可能性の高い技術を利用できるようになるまで、E層のヒト科の歯からサンプルを採取するという破壊的なプロセスを控えることにしたのである。

「この歯は非常に貴重で、DNAが保存されている可能性があります。」とスリマックは言う。

もしホモ・サピエンスが道具と歯をE層に残したとすれば、彼らはマンドリン洞窟に長くはいなかったということになる。

スリマックは、シェルターの天井が割れて他の考古学的資料と一緒に堆積した破片の分析から、その居住期間は約40年だったと推定している。
天井には毎年2回、雨季になると白い鉱物である方解石が付着し、シェルター内の火災で出たすすで黒い跡がつくため、1年以内にヒトが住んでいたことを特定できる「バーコード」のようなものである。

研究者たちは、「ホモ・サピエンスの最後の火は、次のネアンデルタール人の火より1年以上前に消えたと結論づけた。」「両者は何らかの形で出会ったのでしょう。しかし、この2つの集団の間には、石器の類似性など、文化的交流の明らかな痕跡は見つからなかった。」とスリマック氏は言う。

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