アップサイクルを加速させるデジタル戦略(前編)
こんにちは、資源循環DXスタートアップのdigglue 中谷です。
2024年2月28日から3月1日かけて開催されたサーキュラーエコノミ―EXPOの初日に、”アップサイクルを加速させるデジタル戦略 DPPの活用法”というタイトルで講演をさせていただきました。
本日は、その内容をテキストにてまとめましたのでご覧ください。
アップサイクルとは?
アップサイクルとは何でしょうか。そう聞かれると、穿かなくなったジーンズからバッグを作ったり、古くなったシャツをアレンジしてオシャレなデザインのシャツに変えたりする例を思い浮かべられると思います。そういった衣料品のアップサイクルがイメージしやすいと思いますが、もう少し広く定義すると、元の製品価値に対し、製品価値と環境価値をアップグレードするプロセスと位置付けられると思います。
アップサイクルを加速する4つの方法
では、アップサイクルを加速するために、考えられる方法は何があるでしょうか。本講演では、デジタルと絡めて、4つの方法をご紹介しました。
1.規格をつくる
2.分別し品質を上げる
3.再生材として証明する
4.消費者に訴求する
それぞれについてこの後説明していきます。
1.規格をつくる
アップサイクルの必要性は何でしょうか?マテリアルリサイクル材は、その製造コストに見合わないほど品質が低下し、使用用途が限定されがちです。これにより、製品の市場価値は低くなりがちです。そのため、製品価値を高めるアップサイクルが求められます。
異物が混入したり、元の品質より下がってしまうことによって、材料としての価値が下がってしまいます。また、製品として市場に出されたものを回収しなければ、リサイクル材にはなりません。そのため、流通する量が限られてしまいます。結果、再生材として作れる製品が限られてしまい、多くは物流現場で使われるパレットなどに利用されているのが現状です。
ポイントは、リサイクル材の特徴を理解して、使いこなすことです。これを達成するためには、リサイクラーとメーカーの協力が必要です。具体的には、製品として使用可能なリサイクル材の品質基準を明確にし、必要量を明示することが重要となります。
再生材を製造する過程における基準として、材料基準とプロセス基準の確立が不可欠です。
材料基準は、リサイクル材の出所や特性など、材料としての情報をまとめたカタログのようなものです。これに対して、プロセス基準は再生材の製造方法、トレーサビリティの確保、情報の即時提供能力、教育体制の整備などを総合的に評価する基準です。
これらを組み合わせることで、どのような環境で作られた、どんなSPECのリサイクル材であればメーカーが購入するかが明確になります。結果として、リサイクラーはこれらの材料をより容易に調達できるようになります。
材料としてもとめられる品質基準が明確になったら、それをどれだけ使うのかの表明が、市場を作るうえでは必要です。
欧州だと、目標値が各種政策などで明確化されたり、ブランドオーナーが再生材の利用に関してコミットメントを表明したりしています。
これらの品質基準と目標値の表明が、再生材の利用を促すのに必要な前提になると考えています。
2.きちんと分ける
マテリアルリサイクル材は、基本的に素材が混ざってしまうとその価値が下がってしまいます。そのため、廃棄をするタイミングで、きちんと分けることが必要です。家庭から出てくるPCR材と、工場などの端材であるPIR材で話は異なりますが、基本はきちんと分別することが重要になります。
例えば、一般家庭から出てくるPCR材の場合だと、そもそも何をどう分別して捨てればよいかわかりづらいという問題があります。そのため、例えば商品についたバーコードを専用のアプリから読み取ることで、その素材をどのように捨てればよいのかということを見極める分別アプリを提供するといった解決策が考えられます。
また、分けたものはきちんと見える化して、その効果を訴求することが重要です。我々は、神戸市の実証などでMateReというサービスを使っています。これは、排出物の可視化を行うもので、それにより資源循環や脱炭素の効果を見えるかすることができます。
後編に続きます。