見出し画像

逆噴射小説大賞応募作品を完成させてみた

去る2023年10月に開催され、12月に結果が発表された逆噴射小説大賞。

「面白い小説の冒頭800字」

その完成度を競い合うこの催しに自分も参加させていただきました。

結果は入賞も出来なかったのですが、このたびその作品を完成させました。1万字程度の短編として

無数の銃弾Vol.08

逆噴射小説大賞前回覇者しゅげんじゃ氏ほか、同大賞の参加者による短編小説を集めたパルプ雑誌。こちらに掲載頂きました。

8巻目とありますが、掲載作13作の多くが短編読み切りですので

「8巻目では今から購入しても掲載作に追いつくのは骨が折れますね」

とご心配の方もご安心。100円という破格なので、この機会にぜひお手に取って頂けますと幸いです。

バイ、ナウ。

購入いただけましたね?

ありがとうございます。

拙作もお読みいただけましたね?

恐悦至極に存じます。

というわけでここからは拙作『オゴロムラ-【奥御領村】-』のライナーノーツになります。

■『オゴロムラ-【奥御領村】-』ライナーノーツ

はじまりは某所で開催された怪獣小説企画に応募するためのネタ出しをしていたころ。

怪獣がいる悲惨な日常を書きたいと思い、海から巨大クラゲが川を伝って人里に侵攻する様子を想像した。そこに、以前赴いた天竜川の渓谷を思い出し

「渓谷の尾根の間に鉄骨で屋根掛けて、ダムで塞げば対怪獣の要塞化できるんじゃね?」

との発想から設定を書き連ね、そして没った。

理由は

「なんで天竜川だけ要塞化するんですか」

お世辞にも重要拠点とは言いづらい。上古の時代にも都落ちした貴族が隠れ住んだ伝説のある地域だ。怪獣禍の疎開地としても狭いし便が悪い。残念ながら怪獣小説賞参加は見送った。

■大枠の決定

これをリブートするにあたり、要素をてんこ盛りにすることにした。
当時のメモは以下の通り。

怪獣×因習村×秘密基地×巨大戦

戦隊モノを見まくってる影響で巨大戦のイメージはするっと出てきた。結果として巨大戦というにはやや小ぶりの怪物たちが殴り合うこととなったが。

作中に出てくる怪物狩りの怪物こと”御先祖様”は10m級のイメージで、クラゲはタテ3~5mヨコ5m(最低)。相手はものすごい数のブロブ様クラゲ。核でなくともウンtの爆弾で空爆すれば対処できるかもしれないが、市街地の被害が凄まじいことになる。御先祖様の地道な駆除活動はそれなりに有効だろう。

繰り返しになるが天竜川の某所あたりには都落ちした貴族がいたという伝説がある。この血筋を代々を守り続けている村落があってもいいんじゃないか、と現地住民の方には失礼な発想を持った。

幸い、文章媒体だけならホラーや陰惨ネタは嫌いではない。

その結果、異形の怪物を崇め、よそ者を拒み、場合によっては殺人も厭わない村が出来上がった。

■行政の決定

村ができると行政の対応が必要になる。政府は「怪獣対処が非公式に行われている地域」である村落周辺をなんとか面倒ごとを避けつつ怪獣対策政策に取り込みたいはず。その発想から経済特区ならぬ民俗神道系準宗教団体観察地区というワードを捻りだした。初期メモは

特別認定神格保存地区

だがいかにも中二くさい。この案について当時のメモでは

特別:例外中の例外だよしょうがねえだろ
認定:説明できるわけねえだろ認めるしかねぇ
神格:改変予定。神なんて法律に定義できねえ
保存:改変予定。政府と法律にできることなんて何もねぇ
地区:エリア整備に予算出すためには地域ごと特別扱いするしかねえ

とある。それなりに悩んでいた模様。その後、国土交通省管轄の河川保護区域にするか、環境省の自然保護区にするか悩んだ。
が、「神」にたぐいするうさん臭さはどうしても欲しかった。

そこで調べるうちになんと文部科学省の「宗教年鑑」に行き当たった。天文年鑑は知っていたがこっちは知らなかった。ざっと流し読みすると地域特有の土着神を信仰する仏教だか神道の亜流も記載されていた。というわけで結論は出た。

民俗神道系準宗教団体:宗教年鑑を読んでる最中に当たったキーワードから極力当たり障りのないよう
観察地区:強制力も法的拘束力もぼんやりと、けども役所が動ける程度の名目で

こうしてオゴロムラは怪獣が跋扈する世界の異常集落として日本国に公式認定された(脳内)。

■御先祖様

御先祖様のイメージはAIで出力しようと決めていた。正体不明の怪物をふんわり出力するのにこれほど相応しい道具は無い。おあつらえ向きに手指や四肢の数を間違えてくれる。

当時のメモによると御先祖様は

大蛇の下肢。熊の上腕。トビウオのヒレ。タコの頭部?トンボの頭部?
「いるか様。おつとめご苦労様でございます」

蘇我入鹿から、いるか様と仮定していた。

その後、都落ち系設定の時代をぼかすために単に御先祖様とすることで落ち着いた。

■人間

某所に応募するための企画として男性向けの性的要素をにおわせることは決めていた。洋の東西、いまむかし問わず重要な要素だ。

無理にそういうシーンを入れるのは個人的にNGだが、因習村の設定が入ったことも追い風となる。有名な津山事件も男女の痴情のもつれが背景にあったようだし、イメージはある。

まっさきに思いついたのは「血統」を重んじ、避難民に自身の血統を見境なく分け与えようとする汚いオッサンだったが、あんまりにもあんまりなので没にした。

そこでこのキャラを分割し

・男性の力強さの象徴=主人公の補佐をする食いしん坊のオッサン
・血を重んじる家=気味の悪い、フヒヒとか笑いそうなヒロイン
・村の権力者=つかみどころのない村長とその妻

以上の4人とした。

村長は貴閨 言重郎(キネヤ ゲンジュウロウ)
タイトルをオゴロムラとする前、貴いお方の閨と書いてキネヤムラとする案があったのだが、機動戦士ガンダムZのアウドムラの語感の強さからオゴロムラが近いと感じたので、キネヤの方は村長に与えた。

補佐の良略 輌治(ラクラ リョウジ)
武闘派の雄略天皇から御名をちょうだいした。食いしん坊になったのはシーンの都合。巡査がうろたえてる間、酒を飲むのは村長。ニタニタ笑うのは後述する茅沼。となると消去法でご飯食べさせるしかないとなった。

茅沼 深寿(カヌマ ミコト)は描写が少なかった。反省している。
血沼とかワニ(シャチ)に毛皮を剥がれた兎のイメージから。正直、一万字の短編で登場人物は主人公含め2人が自分の限界だと思った。

村長婦人のフリコはそれなりに気を使っていやらしい女になるよう書いたつもり。酒をすすめるシーンはちょっと冗長だったかもしれないので今後に生かしたい。

■逆噴射フォーマット800字

最後に冒頭800字部分のシーンについて。

戦隊ものを見ていいな、と思ったシーンから引用した。番組はじまったとたん戦隊ロボが悲壮なBGMを背景に爆発するシーンだ。こうしてはじまる話は戦隊の中でも好きな話が多い記憶がある。

というわけでまず真っ先に御先祖様をカメラに収めようと思った。

続けてススキ巡査が磔になっているシーン。これは大好きな映画、マットデイモン主演のマーシアン(オデッセイ)から冒頭のセルフ手術シーン。主人公がひどい目に遭ってそこを解決することで視聴者が主人公に感情移入するというもの。

ぶっちゃけ今回のオゴロムラではこの試み、盛大に失敗している。マーシアンではそのシーンの前に主人公の人となりがさらっと触れられているのだが、オゴロムラでその要素はない。この辺と、説明的過ぎる描写が逆噴射小説大賞選外となった理由だと考えている。

リキが入っているのはこのあと、村長と村人のシーン。村人にとって日常的な光景が続くかと思いきや御先祖様がイレギュラーな行動に出た。それを村長が巧みなアドリブでごまかすシーンだ。この場の主人公は間違いなく彼だろう。

村人が背景で歌っているのだが初期考はこのシーンはっきりと御詠歌と書いていた。どうみてもSIRENなので没。

■未来へ…

以上が拙作『オゴロムラ-【奥御領村】-』のライナーノーツとなります。

基本的に設定考えるの大好きなので800字書くための地固めにこんなことを考えています。ほかの逆噴射小説大賞参加作品もこんな感じです。まぁ冒頭だけで完結してないので無駄な作業となってしまっています。

しかし、ここにパルプ雑誌『無数の銃弾』があるのです。
発表の場をご用意頂いた編集長、城戸圭一郎様に感謝しております。今後も過去の逆噴射小説大賞参加作品を完成させ、投稿させていただくことがあると思います。

小説を買う時に、まずあとがきから読むという層がいらっしゃると噂に聞いたことがあります。

なのでこのライナーノーツからご興味を持っていただき、パルプマガジン『無数の銃弾』をお手に取っていただければ、これに勝る喜びはございません。

そこの逆噴射小説大賞参加者様。貴方もおひとつ、いかがですか?

サポートなど頂いた日には画面の前で五体投地いたします。