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くろう

くろうは飛びたかった
だがやつには羽はなかった

くろうは疲れていた
だからやつには休憩が必要だった

くろうはやつれていた
なぜならごはんを食べていなかったから

くろうは寂しかった
でもやつが選んだ道だった

くろうは死にたかった
だがそれは許されなかった

くろうは苦労した
生きてていいと許されたかった

くろうは苦悩した
右脳も左脳もショートした
なにもない、なにもなかった
無になり、為もなく、
そこにあるだけの存在に

くろうは今日も地べたを這いずり、じっと動かず、
誰かの食べカスをかじり、ひとりでそこに、

ただあるだけで

こいつはなんだ、
人ではない何か、
黒く汚く滑稽な何か
力なく脅威でもない
ただそこにあるだけの誰にも見出されないただの肉塊

生きているのか、死んでいるのか
その目には何もうつらない
うつす機能を失ったようだ

もう何もない、あぁもうすぐ、ひかりもきえる
全身から何かが抜け落ちていく

このまま、このまま、永く永く、このまま、このまま

そのうちにくろうはもうそこにはあらなかったようだった

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