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位置と高さの基準 - 土木計画学における空間情報の扱い方

土木計画学では、土地利用、地形、交通分析など、位置と関連付けられた情報(空間情報)が重要な基盤となります。これらの情報を適切に取得・分析・管理するためには、位置の基準が必要不可欠です。本記事では、位置と高さの基準について解説します。

1. 世界測地系とは

地球上の位置を正確に表現するためには、測地系の定義が不可欠です。測地系とは、地球に固定された座標軸(測地座標系)と、地球の形状を近似する回転楕円体(地球楕円体)の組み合わせを指します。

かつては各国や地域ごとに独自の測地系が使用されていましたが、GNSS(全球測位衛星システム)による測位技術の普及に伴い、世界共通の座標系を採用することのメリットが増大しました。そこで、国際機関により定義された世界測地系が広く採用されるようになりました。


測地座標系

測地座標系は、地球上の位置を三次元的に表現するための直交座標系です。その原点は地球の重心に置かれ、以下のように座標軸が定義されています:

  • Z軸:地球の自転軸の北緯90度の方向

  • X軸:経度0度の経線(グリニッジ子午線)と赤道の交点の方向

  • Y軸:東経90度の方向(右手系)

日本では、2002年の測量法改正により世界測地系が導入され、国際地球基準座標系(ITRF)の一つであるITRF94が測地座標系として採用されています。

準拠楕円体

地球の形状を表現する上で重要な概念の一つがジオイドです。ジオイドとは、等重力ポテンシャル面のうち、平均海面とよく一致する面のことを指します。

ジオイドを数学的に扱いやすい形状で近似したものが、地球楕円体です。日本では、準拠楕円体としてGRS80(Geodetic Reference System 1980)を採用しています。

2. 位置の表現方法

準拠楕円体を測地座標系に固定することで、地球上の任意の点の位置を緯度と経度で表現することができます。

  • 経度:グリニッジ子午線を基準とし、ある地点を通る子午線までの角度

  • 緯度:ある地点において準拠楕円体の法線が赤道面となす角度(測地緯度)

位置を正確に記述するためには、使用する測地座標系と準拠楕円体を明確にすることが重要です。日本では、「測地成果2000」や「測地成果2011」という用語を測量成果に適用し、使用している測地座標系と準拠楕円体を明確にしています。

3. 高さの基準

測地座標系と準拠楕円体に基づけば、高さは準拠楕円体からの法線方向の高さ(楕円体高)で表現できます。一方、測量法では、高さの基準は標高として定められています。

標高は、ジオイドからの鉛直方向の高さであり、楕円体高とは異なります。また、準拠楕円体からジオイドまでの高さをジオイド高と呼び、一般に、以下の関係が成り立ちます:

標高 ≈ 楕円体高 - ジオイド高

日本では、東京湾平均海面(T.P.:Tokyo Peil)を標高0mと定義しています。また、日本水準原点が東京都千代田区永田町に設置されており、その原点数値は測量法施行令で東京湾平均海面上24.3900mと定められています。


4. 地形図の投影法

三次元座標で定義される地球上の位置を地形図などに表現するためには、平面に投影する図法が必要です。現在よく利用されている図法には、メルカトル図法とガウス・クリューゲル図法があります。

メルカトル図法

メルカトル図法は、全世界がシームレスに表現できるという利点があり、Web地図での表示に広く利用されています。例えば、Google MapsやGoogleマップ、国土地理院の地理院地図などで採用されています。

ガウス・クリューゲル図法

ガウス・クリューゲル図法は、日本の1/10000・1/25000・1/50000地形図や1/200000地勢図をはじめ、世界的にも同程度の縮尺の地図に用いられています。この図法を基に、UTM座標系や平面直角座標系が定義されています。

5. 日本の地図体系

日本では長年、1/25000地形図を基本図として整備・更新を行ってきました。しかし、2007年の地理空間情報活用推進基本法を受け、新たな基本図として電子国土基本図が整備されました。

電子国土基本図は、基盤地図情報に土地の状況を表す情報を統合したもので、2013年度に全国整備が完了しました。これにより、地物などの変化に応じて適宜修正が行われ、随時提供されるようになりました。

現在では、「地理院地図」というサイトを通じて、電子国土基本図をベースとしたさまざまな地理空間情報がインターネット上で閲覧可能となっています。


この記事を通じて、土木計画学における空間情報の扱い方の基礎となる、位置と高さの基準について理解を深めていただければ幸いです。測量や地理情報システム(GIS)を扱う際の基本的な知識として、ぜひ活用してください。


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