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自転車にまつわる笑い話

今もお金に縁が無い生活をしていますが、若い頃はもっとひどくて普段からボロボロの自転車に乗って生活していました。

ある日、市街の大きな道を進んでいく途中で交差点で信号が赤になり、私は止まって自転車に乗ったまま青になるのを待ちました。

街中ですので一定の距離ごとに交差点があり通行量も多く歩いている人や車で賑わっています。

そして信号がようやく青になりました。

横道の自動車から見たら信号は赤で、自動車は止まっている状態です。

私は青信号と車が停車しているのを確認してから自転車のペダルに足を載せたまま立つ、いわゆる立ち漕ぎで交差点を渡ろうとしたその時、左手のハンドルに固定されているはずのグリップがスポンと抜けて、私の左手はグリップを掴んだまま宙を舞いハンドルから大きく離れ、バランスを失った私は人が大勢歩いて向こう側に進んでいる中を自転車と共に派手に道路に倒れこんでしまいました。

立ち漕ぎからの倒れこみですので、まさに崩れ落ちるといった表現がぴったりなぐらい見事な倒れっぷりでした。

幸い怪我はありませんでしたが、痛みよりも早くこの場を立ち去らなくてはといった気持ちの方が強く、体が痛いのをこらえて立ち上がり自転車を起こして交差点を渡ろうとしたその時には既に信号は赤になっていました。

今日はついてない、こういう日もあるさと思いつつ、あちこちからの視線を感じながら私はただ信号が青になるのをじっと待つしかありません。

待っている間、私は自転車の籠の中に入れ込んだグリップをぼんやりと眺めていました。

よくこういう時は数秒が数十分に感じると言いますが、あまりにありえない出来事の為に頭の中が真っ白になり割と時間が経つのは普通だったのを覚えています。

ようやく信号が青になり左手は直にハンドルの金属部分を掴み、左手が滑らないように気を付けながら立ち漕ぎで交差点を渡ろうとした瞬間に奇跡がおきました。

今度は右手のグリップが抜けたのです。

もちろんその場に自転車と共に倒れました。

そして直ぐに痛みをこらえて立ち上がり、自転車を起こした時には既に信号は赤でした。

デジャブーかよ。

思わず自分につっこみをいれつつ、やっとの事で青になった信号をちらりと見ながら私は颯爽と自転車を漕いでいました。

自転車が揺れる度に、自転車の籠の中に入っている二つのグリップが籠の中で揺れています。

初夏の暑さの中、時折吹いてくる風の涼しさだけが私の心を癒してくれました。


終わり。


それでは失礼します。

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