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292日目(聴くか読むか)

普段は音楽を聴くことはほぼ無く、ポッドキャストを聴くことが多い。
その中で最近聴き始めたポッドキャストで「さむいぼラジオ」というのがあって、実録事件ものポッドキャストの中でも語り主の関西弁イントネーションの聞きづらが良いのと自分が今まであまりフォローしてこなかった和物実録事件メインなので、更新される度に聴いている。

その中でも知らなかった事件で「栃木リンチ殺人事件」というのがある。
聴くだけで胸糞なその事件概要もさることながら周辺の登場人物や組織も悉く胸糞というもので非常に興味がそそられた。
そんなことを言っていると、竹内君がまだ読んでいないけどその事件のルポ本を持っていて、読んだ後に貸してくれることになった。

先週末の忘年会の際に本を借りて月曜と火曜の2日で読了。
ポッドキャストで概要は聴いていたものの、特にリンチの場面の描写を延々と読まされる「リンチ」の章はなかなかにキツく、それ以上にパズルのピースが一つずれていなかったとしたら、この事件が表面化しなかった可能性さえある現実に愕然とする。

文庫本でもなかなかのお値段になってるけど興味のある方はブッコフパトロールをするか、竹内君に貸してもらってはどうだろうか。

そして、本を読んだ上でもう一度「さむいぼラジオ」の栃木リンチ殺人事件回を聞いたが、15分足らずの口述と300ページ近い本とではその情報量は違うものの、明らかに誤認している箇所が何箇所かあったのだ。
犯人グループのパーソナリティーであったり、その他細かいものだけど本の内容とは微妙に違う箇所が確認できた。
おそらくはWikipediaやネット記事からの情報を噛み砕いて口述しているのだと思うが、Wikipediaの情報も黒木昭雄が書いたルポ本と違う箇所が何箇所かある。

例えばWikipediaでは

栃木県警察警部補を父に持つ犯人A(当時19歳)は幼いころから粗暴な行為が目立ち、通信制の高等学校を退学した後は暴走族に入り、恐喝や傷害などの事件を度々起こしていた。
Aは日頃から、日産自動車社員のB(当時19歳)・無職のC(当時19歳)から金銭を巻き上げていたが、やがてBは会社の同期で性格がおとなしいXを身代わりにたてることを思いついた。そして1999年9月29日、BがXを電話で呼び出すと、AらはXを拉致し、サラ金から次々と借金をさせて、自分たちの遊興費にあてた。

とあるが、この三人(後に四人になる)の犯人グループは常日頃からつるんでいた印象を受ける。
だが、ルポ本では同じ中学だったこの三人のうちAとCは職場が同じだった時期もあったりつるんでいたのだが、被害者を紹介することになるBはこの時期付き合いがなかったと書かれている。
AとCが事故を起こして会社を休み保険金で遊び歩いていると言うBの噂を聞きつけ金を借り(恐喝)に行くが、それを無碍に断られた後にヤクザの威光を見せつけてBとCに数十万円を借りさせた。
Aに関してもネット記事やポッドキャストでも凶暴性のある暴君のように伝えられるが、ルポ本では小心者だが嘘が上手い狡猾で卑怯な人物として描かれている。

ルポ本を書いた黒木昭雄は元警察官という視点からの若干の警察に手心は感じられるものの、少なくとも供述調書や関係資料といった1次資料にあたっていたり被害者両親と交流したりすることから、後半の推察部分以外の事件概要としては正確に近いように思う。

まるで白竜に出てくるようなエピソードになっていく後半部分については「あるんだろうなあ」というフィーリンと「さすがにそこまではないだろう…」みたいなフィーリンがせめぎ合う。
現に犯人グループのようなわかりやすい「悪」に対しては社会的な鉄槌が一応下されたものの、今でもヌクヌクとしている「巨悪」に対しては社会的鉄槌がなされていないところからも恐ろしいというフィーリンであるし、著者の推察上のフィクションであってくれというフィーリンでもある。

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