クラリミコン3の提出作品解説

備忘録も兼ねて、こんな感じで作りましたの紹介です。


今回の楽曲について

クラリミコン3

 クランとリオン【初心者向けDTM動画】のYoutubeチャンネルで実施された、楽曲のリミックスコンテスト(クラリミコン3)に応募した曲です。

 今回は、クランとリオンさんの楽曲「The Last Song」がiTunesエレクトロニックチャートで第一位を獲得したこと記念して、同楽曲のリミックスコンテストが開催されました。
 ボーカルトラックが配布されるので、それを使って自由に楽曲を構成します。配布されたボーカルトラックを使っていれば何をやってもいいので、とても自由度が高いです。
 冒頭90秒だけですが、応募者全員の作品を聴く全曲試聴会が実施されます。参加者の人気投票の上位者には景品があります。

応募した楽曲

実際に応募した曲は次のとおりです。ギターメインのロックな感じ。これが好き、これしかできない。

参考にした楽曲

 今回はどんな感じにするかイメージがなかなか湧きませんでした。とりあえず思いつくままにギターを弾いて作ったというのが近いのですが、サビのリズムギターの譜割がP.A.FのLove & Fakeという曲と同じようになったので、ソロ後の落ちサビのアレンジあたりで参考にしたつもりでしたが、改めて確認したら全然違いました…
…ところでP.A.Fってご存知でしょうか?
PAFというのは、ギターメーカーのgibson社が1950年代に開発したピックアップ(エレキギターの音を拾うマイクみたいなもの)で、今でもそのサウンドを求めてクローンが造られ続けている、エレキギターサウンドの一つのスタンダードのような名器です。裏側に「Patent Applied For」(特許出願中)とステッカーが貼ってあったことからPAFピックアップと呼ばれています。
…というのは余談で、P.A.FはX JapanのギタリストPataが元Make-upのNoBと組んだバンド(で良いのかな?)です。僕は結構好きです。機会があれば聞いてみてください。

アレンジとかについて

コード進行

 コード進行的にはそんなに複雑なことはしていません。イントロとかAメロあたりに9thや分数コードがありますが、どちらかというとギターのフレーズにコードネームを付けたらテンションが乗っていたみたいな感じです。ちょっと見づらいですが、コード譜を作ったので載せておきます。ギターソロの後はサビの繰り返しと半音上がりの転調だけなので省略しました。

イントロ~サビ途中まで
サビ途中~ギターソロまで(以下略)

アレンジの考え方

 原曲だとCメロの歌詞に曲名が出てくるので、その部分から始まるアレンジを考えました。Cメロを全部冒頭に持ってくるとちょっと長すぎるので、Cメロの後半だけにしました。歌詞の内容的にも最初に説明しすぎない方がいい流れになるかな、と思いました。
 基本的には原曲の歌としての大きな流れは生かしたかったので、Aメロ、サビはコード進行は変えたものの主旋律はそのままです。
 Bメロについては、メロディアスにしたいなと思っていたので、ラップに行かずにメロディを被せて繰り返すことにして、歌詞の意味が繋がるようにつなぎ合わせました。結果的にラップを割愛する形になりましたが、代わりにリオンさんのボーカルが目立つので良いかなと。

セクションごとのアレンジ 〜イントロ

 イントロはAメロより後に考えていて、Aメロのコード進行をベースに、ちょっと進み方を変えた感じです。最初はリードギターは入っていなくて、コードバッキングとオクターブ奏法の2本だけだったのですが、もっと仰々しくしたかったので最後の最後でリードギターを入れました。

Aメロ

 Aメロのクランチのアルペジオはちょっと手癖的なフレーズです。ポジションを変えずに指を動かして1つか2つ音を変えることで、コード感を変えるみたいなフレーズになっています。
ベースが抜けているのと、深めのサチュレーションをかけた打ち込みのリズムでローファイ感を演出しました。
 2番のAメロは、シンプルにギターのパワーコードのバッキングで、コード進行も原曲の進行をさらにシンプルにしたものです。1番はちょっと捻ったので、2番はシンプルにした感じです。

Bメロ

 Bメロは、ちょっと展開する雰囲気が欲しかったので色々音を入れてみました。
 前半はシンセストリングスでコードトーンを旋律っぽく鳴らしたものと、リリースカットピアノ風の音色を真ん中辺りに、左からリバースさせたギター、右のギターはコードを弾いてますが、トレモロがかかっています。
 Bメロ後半は、サビに繋がるようにパワーコードのギターバッキングが入ってきます。
 コード進行は原曲の進行をつかってはいるのですが、ちょっと遊んでいて前半は各コードの長さを倍で取っていたり、後半は進行の途中でブレイクするのであまり原曲の進行っぽくはない感じになりました。

サビ

 サビは元のコード進行を頭に入れつつ、メジャーで明るい雰囲気になるようなコード進行にしました。ちゃんと分析せずに雰囲気でコードを置き換えたので、もしかしたら歌メロとぶつかっているところがあるかもしれませんが、概ね大丈夫だと信じています。
 サビはギターがシンプルかつ休符混じりで隙間があるため、パッドっぽい音色でシンセがコードを刻んでいる他、原曲の間奏メロディをそのまま裏メロ的に鳴らしています。これも音がぶつかっている部分がありそうですが、雰囲気重視であえてそのままです。
 ギターソロ後の落ちサビ的な部分も、ギターは歪みを減らして同じパターンを弾きつつ、他の楽器を抜くことで雰囲気を変えています。落ちサビ後半からベースとドラムが入ってくるのですが、ここのベースラインは上手くハマったので個人的に気に入っています。

その他のセクション

 曲の冒頭、原曲のCメロにあたる部分は、元のボーカルトラックは主旋律のみだったのですが、ちょっと寂しいのでピッチシフターを使ってハーモニーを作りました。複数回声を重ねた雰囲気を狙って、ピッチシフトしたトラックの発音タイミングやピッチカーブを少しづつ変えたりしましたが、もう少し大胆にやらないと効果が分かりづらかったかなと思います。

 ギターソロのバッキングについてはシンプルにギターで刻んでいるくらいです。コード進行については、最後G→Aとダイアトニック以外のコードが出てきてサビ頭のBコードに繋げたかったので、そこに繋がる流れを考えました。
ディグリーネームだと♭Ⅵ→♭Ⅶになるのかな?
この響きが好きで良く使うのですが、理論的にどうなってるのか分かっていません。

歌が一通り終わった最後に、原曲のCメロがまるっと出てきて終わる流れについても、割と最初のうちから考えていました。どちらかと言うと、Cメロが印象的だったので、Cメロのフレーズを起点に構成を考えた感じです。
途中で半音上がる転調をしているので、ピッチシフトしていますが、ここは儚げに終わりたかったのでハーモニーはつけていません。

楽器類について

 前節のコード進行は実音で記載していますが、実際に楽器を鳴らすときは半音下げチューニングでCメジャーのキーと考えています。打ち込みのシンセ類についても、Cメジャーキーでフレーズを考えて、シンセ側で半音下げたりピアノロール上で一つ下げたりしています。

ドラム

 生ドラムの音はaddictive drums2を使っています。black velvetのセットをベースに、スネアだけ14×6.5″ Pork Pie Bell Brassに変えて、ピッチとかも多少弄っています。
 フレーズ的にはaddictive drumsに入っているリズムパターンから、イメージに近いものを持ってきて調整する方法で組み立てています。
 リバーブは控えたつもりだったのですが、改めて聴くと深くかかってました。スネアのリバーブについては、残業音にコンプレッサーをかけて強調しています。

 Aメロのドラムだけ、UJAMのbeatmaker KANDYを使っています。音色もリズムパターンもプリセットをベースに、少し弄って作っています。サチュレーションを深めにかけてあります。

ベース

 指弾きをした時の弦を叩く金属音(スラップではなく左手でミュートしながら弦を弾いて出る音)が欲しかったのと、シンプルなベースラインで何とかなりそうだったので、自分で弾きました。
 D.Iとして、MXRのBass D.I+を噛ませてラインで録っています。Bass D.I+のプリアンプ回路は通していますが、ディストーションはOFFです。
 サウンド的には、D.Iそのままのラインの音と、bias fx2で若干歪ませたアンプシミュレートの音を混ぜて音作りしています。また、bias fxの中でも並列処理していて、アンペグのモデリングと、キーボードアンプのシミュレートをブレンドしています。アンプ感のある太い音を出しつつ、ラインのクッキリした音の共存を狙っています。

 フレーズ的にはシンプルにしたとはいえ、同じパターンの繰り返しになってしまったため、もう少し工夫をした方が良かったなと思います。
 落ちサビの後半のベースラインはルート音を基に、滑らかに繋がるイメージで弾けたので気に入っています。

バッキングのギター

 ギターについてはほぼパワーコードを弾いているだけです。Aメロのアルペジオも、普通のバレーコードの延長で弾ける感じなので簡単です。
ラインで録っていて、歪みサウンドのアンプシミュレーションはSoftubeのAmp roomを使っています。JCM800をチューブスクリーマーでブーストした音です。
 クランチのアルペジオについても同系統のサウンドで、ブースト量を減らした上でギターのボリュームをちょっと絞った音です。
 Aメロのクリーンのアルペジオはbias Fx2を使いました。こっちもマーシャル系アンプでクリーンな音を作ってコーラスをかけています。

リードギター

 リードフレーズは何回か出てきますが、メインは2番後とアウトロで2回あるギターソロです。
 最初のギターソロについては、前半はペンタトニックスケールをベースに徐々に上がっていくイメージで、最後のG→Aの進行のところはスケール外のコードなのでコードの構成音を主体に弾きました。
 アウトロのソロは、バッキングがサビと一緒なのでペンタトニックスケールを主体にしてタッピング混じりで弾いています。タッピングについては前半16分音符から後半6連符に移行するつもりが、勢い余って後半の一拍目以外が32分音符になってしまいましたが、勢い重視でそのままにしました。
 リードギターの音色はbias fx2を使っています。アンプはメサブギーのモデリングで、ちょっとエッジのある音を狙いました。ディレイ、リバーブはセンドリターンでかけています。

その他楽器類

 Bメロとサビでシンセの類を鳴らしています。     
 Bメロはパッド系の音色、シンセストリングス、リリースカットピアノが鳴っています。パッドの音がUJAMのUSYNTH、シンセストリングスの音がkorgのM1、リリースカットピアノはHALion sonicです。基本的にプリセットの音を調整して使っています。

 サビはコードを刻みと、原曲の間奏メロディを裏メロ的に鳴らしています。コードを弾いているのはkorgのtriton、メロディはAvengerです。メロディの音は原曲の音に近くなるように調整しました。

 曲の最初と終わり、原曲のCメロに当たるパートについては、cubase付属のpadshopが鳴っています。daw付属の音源って結構使いやすいので、僕みたいにメインはギターとか生楽器で、シンセ類は添え物的な使い方の人は付属音源だけで十分な気もします。

感想

自分の曲について

 今回は色々悩みましたが、最終的には自分らしいものができたし、気に入ったものができました。特に「こうしたらウケがいいのでは?」などと欲を出さずに、「自分ならこうする」という点にフォーカスして作業できたのが良かったのかなと思っています。
 一方で、ちょっと忙しかったのもあって、十分にアイデアを練りきれなかったのは反省点です。同じフレーズの繰り返しが多かったり、フィルイン的なフレーズのバリエーションがなかったりと、ちょっと単調になってしまったかな、というところがあります。また、ギターの音をもう少し理想に近づけたかったのですが、いまいち方法がわからなかったのと、全体のバランスを再調整する余裕がなくて、妥協したところもあるので、この辺りは今後しっかりやれるようになりたいところです。

 僕は音楽理論はあまり理解できてないし、基本的には感覚で作っているのですが、こうやって振り返ってみると、ある程度は考えて作っていていたんだなと思いました。もちろん、考えているとは言っても浅いところしか見られていないし、他の人はもっと緻密に考えて作っているとは思いますが、感覚だけでは作れないなと改めて認識した感じです。

クラリミコン3について

 クラリミコンでは、全曲試聴会が実施されるので、参加者全ての作品を聞くことができます。
 クランとリオンさんの音楽性から見ると、チャンネルを見ているのはダンスミュージック系の方が多いのかなと思っていたのですが、実際の応募楽曲は幅広くて、ギターロックがあったり、シティポップがあったり、ジャジーなものやメタル、王道ポップスもあります。ダンスミュージックについては疎いのですが、コンテストのコメントを見ているうちにドラムンベースやトランス、ハードコアテクノとか色々ジャンルがあることもわかってきました。
 全体としてはみんなクオリティが高いなというのが率直な感想です。月並みな表現ですが、どの作品も何かしら光るところがあって、聴いていて楽しかったです。個人的にはわかりやすく特徴的な作品が好きなので、クランとリオンのコンテストに何度も出ていて自分のスタイルを確立している方の作品には肩入れしがちですが、初参加の方や、アプローチを変えてきた方など、「こんな手法があるのか」という発見や、「この人こういうこともやるんだ」という驚きがあるのもコンテストの魅力です。
 ここで個別の作品についてコメントはしませんが、人気投票上位のミコ吉さんや、youthUKさん、トワドさん、ぽっぽさん、Namidameさんの作品は上位になるのも納得のサウンドでした。かといって、ほかの方のサウンドが良くなかったわけではなく、だれが上位でもおかしくなかったなと、改めて思います。
 あと、ミコ吉さんが保護した猫ちゃん可愛い。先住猫の三毛猫も可愛い。三毛猫ちゃんの名前がミコ吉なのでは?と思っています。

終わりに

 つらつらと書いてきましたが、気が付いたら結構な文字数になってしまいました。長いわりに中身がない。
 自分用に書いているところが多いので別に問題はないのですが、ほかの人に見せるために書くのならもう少し内容の精査と、画面の画像とか入れるときっとわかりやすいんだろうなと思います。

 そういえば使ったプラグインエフェクトとか書いてないけど、特別なことはしてなくて、インサートでコンプとEQくらい、センドリターンでディレイとリバーブをかけたくらいです。

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