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はじまり:パラダイス警察署

 仕事の移動で車を運転していた午後3時頃。スマホが鳴った。登録されていない番号が表示された。誰からだろう? と思いを巡らせ、慌てて車を路肩に一旦駐車して電話に出た。

「ハイ。もしもし??」

「あのー、こちらパラダイス警察署ですが。これはデヴァヴァニさんの携帯番号でよろしいのでしょうか?」

「あ?? は?? は、はい。デヴァヴァニですが。」

警察署から電話が来るようなことを何かしでかしたか、心当たりが自分にはない。

滅多にかかって来ない所、しかも権威あるお役所関係からいきなり電話が来たら、きっと誰でもシドロモドロになるだろう。

「実は、お母様らしき人をこちらで保護していますので、署まで来ていただけないでしょうか?」

は? エイコがどうして警察署にいるのか?! 一瞬、頭が真っ白になる。不安と心配と色んな感情がブワァーっと一気にごちゃ混ぜになって気が動転しているのがわかる。

「す、すみません。い、いま、仕事中で直ぐには伺えないのですが…。たたたた、大変申し訳ありませんが、仕事が終わってから直ぐに向かいますので…。18時にはそちらに到着できるかと、お、おもいます。」

「わかりました。気をつけていらっしゃってください。」

「あ、あの、車の駐車場はありますか??』

「大丈夫ですよ。署の前に停めていただけますので。」

「本当にすみません。どうぞ、よろしくお願い致します。」


電話を切っても、しばらく何が起こったのか茫然自失。

『どうして、どうして、どうして、エイコが警察署にいるんだぁー??』 

言葉にならない雄叫びが同心円のように何度も何度も頭に木霊している。

今は仕事に行かなければならないし、何はともあれ、シンイチロウに電話をして、パラダイス警察署に行けるようだったら行ってもらおう。と連絡先のシンイチロウを探し出して、電話を呼び出す。

ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。

ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。

シンイチロウに電話をしても出て来やしない。

ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。ルルルル。

何度かけても出て来ない。

糞爺ィ。何処で何してるんだっ!?

カラオケスナックに入り浸って、ヘラヘラやってんじゃねーぞ。

この一大事に。クソ! 


急がないと、次の仕事場が間に合わない。。。急いでハンドルを握って、車を発進させたが、それからのことは綺麗さっぱり上の空で、頭の中はエイコの心配と、シンイチロウへの怒りに占領されて、心は糸が切れた凧のように定まらずにいたまま、日もとっぷり暮れた夕闇時にパラダイス警察署に何とか辿り着けた。






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