憎っくきテレビ通販番組

認知症エイコは深夜のテレビ通販サイトを見ては、

深夜から朝方にかけて、家の固定電話で

通販のフリーダイヤルに電話して、不要な物を注文する。

そして後日、通販で買った商品が届くと、

私、そんな物買ってない。と嘯く。

テレビの通販番組は罪作りだ。

認知症の家族を抱えている側にしてみれば

憎っくき通販だ。

ただでさえ、認知症でも無くても、

不思議と通販番組を見ていると欲しくなってしまう。

人間の欲望心理を上手く利用して、

番組を何気に見ている視聴者が

思わず欲しくなる気分にさせるのがテレビ通販のやり口だ。

私もまだ使える羽毛布団を使っているのに、

テレビ通販を見てて、あまりにもその羽毛布団が素晴らしく思えてしまって、

思わず買ってしまいそうになったことがある。

（結局、思い止まって買う事はしなかったが。）

認知症の家族と関わった事がない人間には分かるまい。

不要な物を魅惑的に見せびらかして、売るのが通販番組。

テレビの通販番組の制作会社は汚い商売をしている。と思ってしまう。

そもそもが、家族の問題で、通販番組は悪くない。

他人はそう言うだろう。

じゃぁ、親にテレビを見せなければいい。

じゃぁ、親に電話させなければいい。

じゃぁ、親を老人ホームに入れてしまえばいい。

他人はいくらでも、安易なことを言うだろう。

人間は、自分で経験しなければ、

その渦中にいる人の気持ちを推し量ることはできない生き物だと思う。

想像はできたとしても、未経験者には所詮、他人事なんだ。

自分も無知故に、人の気持ちが分からず、

表層的な印象と浅い知識で判断し裁いて生きてたと思う。

特に、若い頃はそうだった。

なんでもそうだ。

バカとナイフは使いよう。と言うが、

テレビも有益な番組もあれば、無益な有害な番組もある。

昨今は、ネットの動画の方が多様化していて

視聴者のニーズに合っているから若年層はテレビを見ないと言う。

かく言う私もテレビは、見たい番組しか見ない。と言うか

ほとんど見たい番組が、今のテレビには無い。

ネットで自分の趣味や気分に合ったチャンネルや動画だけを見る。

コマーシャルが流れれば、音声を消去し、

広告も5秒まで待って直ぐにすっ飛ばす。

自分が選んだ動画を見て、テレビ通販のように

余計な物を買うような衝動も起こらないし、

無駄なコマーシャルを何度も見せられて、

知らない間に変んな洗脳をされることもない。

子供にスマホを持たせるにしてもフィルタリング機能があるのに。

どうして、テレビにはフィルタリング機能が無いんだ？？

これから日本は老人大国まっしぐらで

爆発的に団塊世代の高齢者が増えると言うのに、

きっとウチのエイコだけではない、

垂れ流しの売りっぱなしの無責任なテレビ通販番組は

社会問題の一つになるだろう。

因みに、令和2年10月現在は、テレビショッピングに関して言うと

クーリングオフ制度は適用されていない、らしい。

認知症エイコがテレビ通販で買った商品。

これをまた送り返す手間が面倒臭い。

しかも返品発送代はコッチが負担。

くだらない馬鹿馬鹿しい出費にしか思えない。

私がまだ両親と同居する前は、家はゴミ屋敷と化していた。

飲みもしない粉末青汁の箱が沢山。

飲みもしない高額な野菜ジュースの箱が沢山。

どうしてこんなに飲みもしない物を買うんだ？　

とエイコに聞くと、

シンイチロウに飲ませるのだ、と言う。

シンイチロウにそれを言うと、

野菜ジュースはカリウムが多い。

カリウム過多は腎臓に良くない。医者から禁止されている。と言う。

認知症エイコは、シンイチロウの病気を認識できていない。

ほぼ家庭内離婚のような生活を長年やってきたエイコとシンイチロウは、

戸建ての一階（エイコのテリトリー）と二階（シンイチロウのテリトリー）で、

お互い口も聞かず、目も合わせず、別々の生活を何年も送り続けてきた。

エイコはシンイチロウから年金の生活費をもらっている手前、

（お金のやり取りでさえ、階段にメモを置いて口を一切聞かない。）

食事だけでも作らなければと自分に言い聞かせ、

朝晩の食事をシンイチロウのために作っては、

階段に作った食事をお盆に乗せて、置いておくのが常の生活になっていたのだが、

エイコはいつの間にか認知症になっていたのだった。