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夜間光データと人口データを利用してタンザニアの未電化地域を可視化してみました(+電化率の算出)

はじめに

途上国のデータを使った分析をゴリゴリしたいと思いながら、なかなか実現できないでいる日々を過ごしています。

そんな日々に悶々としていると、アフリカでご活躍中のWASSHAさんが新たな資金を調達されたとのニュースがツイッターのタイムラインを沸かせていました。

そのタイムラインを見て、「そういえば、タンザニアの電化状況ってどうなっているんだろう」「タンザニアの未電化地域を可視化してみたら面白そう」とふと思ったので、頑張ってみました。

分析環境

今回使用する分析環境は、我らが最強のGISデータ分析オンラインプラットフォームGoogle Earth Engineです。最初は衛星データの処理・分析のためにリリースされたプラットフォームでしたが、後に衛星データ以外のGISデータも追加されました(現在進行形)。

Google Earth Engine(GEE)は、Java Scriptと呼ばれるプログラミング言語で動きます。もちろん、PythonでもRでも動かせます。Rでも動かせますが、僕はよく分からない理由で使えていません。

本題

と、分析環境を紹介したところで、早速、本題に入っていきましょう。

夜間光データを活用したタンザニアの電化状況の可視化

まずは、夜間光データを使ってタンザニアの2014年と2020年の電化状況を可視化してみます。

左図:タンザニアの2014年の電化状況
右図:タンザニアの2020年の電化状況

2014年と2020年の電化状況を比較すると、首都を中心とした各都市で電化された地域が拡大していることが分かるかと思います。また、都市以外の場所でも電化された所が点在していることが分かるかと思います。

タンザニアは電力事業を実施してきているので当然の結果といえば当然の結果なのですが、「電化率~%!」といった数値だけで見るよりも、こうして可視化すると、どの場所が電化されているのか/いないのか分かるので面白いかなと思います。

上2つの図から、国全体が電化されていることは確認できましたが、2014年から2020年にかけて実際にどこの地域で電化されたのかをもう少し分かり易くみたいところです。

ということで、2014年と2020年のデータで差分を取りたいと思います。差分(2014年から2020年にかけて増加した場所)を黄色で示したのが下図となります。

2014年から2020年にかけて電化された場所(黄色)

新たな発見!ということでもないですが、国全体でどこが電化されたのかハッキリと分かるようになりました。

それともう一つ、今回の主対象である未電化地域ですが、上図を逆の発想を持って見て、黄色くなっていない場所が未電化地域となります。すると、未電化地域がまだまだ存在することが分かります。ただし、タンザニア北部にあるヴィクトリア湖といった居住地域以外の地域もグレーに塗られているため、上図では未電化地域が多く見えることには注意が必要です。

人口データを活用した未電化地域に住む人々の可視化

では、これからは居住地域のみに焦点を当てて未電化地域を確認していきたいと思います。居住地域に絞るためのデータとして①人口データ、②建物データの2つあるのですが、今回は電化率を求めたいため、前者の人口データを利用します。

※電化率とは、電気にアクセス可能な人口を国全体の人口で割った数値となります。ちなみに、世銀のデータによると、タンザニアの2020年の電化率は39.9%とのことです(https://data.worldbank.org/indicator/EG.ELC.ACCS.ZS?locations=TZ)。

未電化地域にいる人々を可視化するため、タンザニアの2020年の人口データに対して上で提示した2020年の電化状況のデータを掛け合わせます。その結果が、下の右図となります。

左図:タンザニアの2020年の人口データ
右図:人口データに2020年の電化状況のデータを掛け合わせて産出されたデータ

人口が少ない場所も明るく表示されるように色設定しているため、左図と右図で違いがないように見えるかもしれませんが、首都などの都市の場所を確認すると、右図では黒色(実際にはグレー?)になっていることが分かります。

つまり、右図は、未電化地域に住んでいる人々の分布を示しています。意外と(?)、2020年においても電気へ十分にアクセスできない人々が大勢いることが分かります。

では、電気へ十分にアクセスできない人々は、どのくらいいるのでしょうか。

この疑問に対しても、人口データは解を提示することが可能です。それは上で述べたとおり、人口データには、人々が住む位置を示すのみならず、その位置にどれくらいの人々がいるのかといったデータが含まれているからです。

ということで、上の右図を基に、人口データを算出します。

結果は、約3,090万人となりました。

同じ人口データを基にタンザニアの全人口を計算したところ約5,140万人という結果が得られました。

それら2つの数値を用いるとタンザニアの未電化率は約60%(3,090÷5,140)にも及ぶことが分かります。

この結果は、世銀が発表しているタンザニアの電化率39.9%(つまり未電化率は60%)とほぼ一致しているため、大きくは外れていないと思われます。

まとめ

ということで、今回の記事の目的であった、タンザニアにおける①未電化地域の可視化、②電化率の算出、は無事に達成されました。めでたしめでたしです。

今回の分析にあたって、タンザニアの電化状況をマッピングした地図ないかなと思って軽く探したところ、World Resources Instituteが2016年のEnergy Access Situation Surveyを使ってマッピングしているものしか見つけられませんでした(https://www.wri.org/data/tanzania-energy-access-maps)。

そう考えると、今回の分析はタンザニア政府にとっても役立つものなんじゃないのかなと思ったり思わなかったり(僕のアイデアレベルであれば既に誰かやっていそうですし)。

ただ、今回の分析方法は、他の国でも適応できるので、電化事業の計画・モニタリング・評価をする際には使えるんじゃないかなと思っています。もちろん、分析単位も今回は国レベルでしたが、より小さな行政レベルでも分析可能ですし、それ以上に小さい地域でのレベルでも分析可能となっています。

長々と書いてもあれなので、以上で終わります。コードはこちら→https://code.earthengine.google.com/6087b3324f52122f2282255b87850c9e

時間がある時に、今回の分析の解説・マニュアルを載せようと思います。

※タンザニアの2020年の全人口が約5,140万人となっていましたが、国際機関のデータでは約5,900万人となっていました。人口データも機械学習を用いた予測値なため多少のズレが発生しているのかなと考えています。ただ、電化率は世銀のデータともほぼ一致するため、今回の分析内容・結果には大きく影響しないと考えています。

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