Amazonと楽天は実は競合じゃない?同じECサイトでも対極のデザインになる考察
Amazonと楽天は同じECサイトで同じように商品をWeb上で販売していて、一見すると同じような業態でAmazon VS 楽天のような図式を見かけることがありますが、よくよく考えてみるとAmazonと楽天って全然違うもので実は競合じゃないんじゃない?その場合、デザインも全く違うものになるよね。という考察を書いてみたいと思います。
Amazonは東急ハンズ。楽天はドンキホーテ。
もの凄くざっくりいうとそんな感じ。同じ店舗販売ですが全然違いますよね。ユーザー層も。訪れる動機も。これだけ違うともちろんデザインは全然ちがうものになります。Amazonと楽天。なにがどう違うのか?もうすこし詳しく説明します。
Amazonの真の価値は「商品」ではなく「問題解決」
Amazonには魅力的な商品がたくさんありますが、よくよく考えてみるとAmazonに訪れる理由ってなにかしら解決したい問題があって、その問題をすばやく解決するために利用していないでしょうか。例えば「この木を切りたい」とか「ネジを締めたい」とか「足が痛くなる」とか「料理に手間がかかる」etc.. そういった日常の困りごとを失敗せずに素早く解決することにAmazonは特化しています。ですので検索バーがメインで、問題が解決できるか判断するためのレビューあり、ワンクリックで注文でき、すぐ届く。そして困りごとが解決される。その素早い解決こそが価値であり、実のところ商品自体はさほど重要ではなく問題さえ解決できればある程度どんなものでもかまわないわけです。
よく言われる「ユーザーはドリルが欲しいわけではなく、穴が欲しい」を地でいっている感じ。Amazonに訪れた時点で必要なものは7割方決まってるわけです。問題解決にそんなに選択肢があるわけじゃないんですよね。だいたい王道で事足ります。それらを実現するためのデザインがAmazonには施されています。
楽天の真の価値は「商品」ではなく「楽しみ」
対して楽天はどうでしょうか。ある程度は問題解決要素もありますが、楽天がもつコンテンツで力が入っているものって「ご当地グルメ」とか「絶品スイーツ」とか「名物食材」とか「サマーワンピース」とか「ぶさかわクッション」etc... みたいなもので、それは物理的な問題ではなく心の満ち足りなさを補うなにか。日常の退屈な時間を補う、グルメパークとかアミューズメントと同じような感じで、それはむしろAmazonとは対極の方向性。なので楽天では検索バーがメインだとは限らない。セールのバナーやサムネイル。特集やポイントバック。人気商品ランキングとかおすすめストア。そもそもメルマガから直接店舗に訪れたりと、楽天のTOPすら行かないことも。それで特に気になる商品が見つからず「まぁいっか。」となっても本人さえよければそれで何も困らないわけです。心の問題なので。
Amazonの場合はユーザーの滞在時間が短ければ短いほどよいですが、楽天の場合は購買機会が増えるので滞在時間が長いほうが良いです。なので「15週ランキング1位!」「いまならもう一個プレゼント!」「ほかのものとは旨さが違う!」「生産者の声!」など楽天メソッドという、畳み掛けるような超絶長い購入ページが良いかたちで機能するわけですね。ページスクロールは本来は短いほうが良いと言われているので楽天だけの特殊なデザインだとおもいます。
それじゃあ真の競合とは?
楽天では
真の競合は「楽天を見る時間を奪うもの」すべてが競合だといえます。近いところではメルカリやヤフオク。ソーシャルゲームや漫画。Youtube、Hulu、Netflixなどの映像コンテンツ。スポーツ観戦、コンサート。etc... 心が満たされていれば楽天に時間を割く機会は減っていくので好ましくないですよね。楽しいことほど競合になります。
チケットなんかは楽天でも取り扱っているのでそういったものも包括的に楽天化させていく方針が見えてきます。しかし楽しいことはどんどんユーザーに提供されるので、楽天は常に競合との戦いになるので大変です。しかし楽天には「日本の食文化の豊富さ」という最大の強みがあるとおもいます。47都道府県各地の超強力なグルメが家にいながら体験できるというのは非常に魅力。販売網を開拓し辛い生産者にとって全国のユーザーがお客になるというのも魅力。そういった消費者と生産者をつなぐというデザインはとても良い効果を発揮していると思います。ただ資源ありきなので海外では上手く機能しにくいという弱点もあって、楽天がどうやって広げていくのか興味深いです。
Amazonでは
真の競合は「世の中の既得権益にしがみつくもの」が競合なんじゃないかなと。Amazonは世界レベルでトップのサービスなので同業態で敵う競合はいない絶対王者です。しかしAmazonの目指しているものを想定すると戦う相手はまったく別の分野になります。AmazonはECサイト以外にもAmazon Echoといった商品開発、AWSというサーバー、Amazon GOといった実店舗など多岐にわたる取り組みをしていますが、それらを俯瞰してみてみるとAmazonが目指そうとしていることが見えてきます。
それは「世の中の無駄をすべて無くしていく」という思想です。なので1クリックで買えるし、操作は声で、翌日には届くし、配送もドローン、倉庫管理もロボット、支払いレジも無し、今は当然のように行われている手続きやタスク。でも今は都合上そうなっているだけで本当は必要ないんです。その無くてよいものを本気で無くそうとしているのがAmazonのビジョン。それらが実現されればされるほど、人類はより有益な時間を過ごせるようになり地球レベルで様々なものが節約できるわけです。恐ろしいスケールでのデザインですよね。ただ国や既得権益団体は簡単には引き下がらない、そこは絶対パワーで押しつぶす形で壊していくことになりますが、個人的にはどんどんぶっ壊して欲しいなと思ってます。でも多少の犠牲はあるかも…。Amazonの今後に期待したいです。
このように同じECサイトといえどコンテンツによってあるべきデザインは全く異なります。そして良いデザインをおこなうには提供するコンテンツの真の価値はどこにあるのかを十分に吟味してコアとなるものを軸にすることでデザインの価値やパフォーマンスが天と地の差ほど変わってきます。単にAmazonや楽天のデザインをコピーしたところで真の価値は得られないということですね。デザインをオーダーする側。デザインをビルドする側。双方がお互いの理解を深めながらプロジェクトを進めることで同じコストでも結果は大きく違ってくるものだと思います。ただの絵ではなく是非是非そういった視点からデザインのオーダーが来るようになるとより日本のデザイン業界が良くなっていくのではないでしょうか。期待。
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