『デゼル』という名の”名牝”

私と競馬

 『デゼル』の話をする前に、まずは私と競馬について。競馬好きな父と母の間に生まれた私は小さい頃から競馬に魅せられてきました。私は自身のことを「まさにサラブレッドだ!」とも思っています。

 小さい頃はよく競馬場に連れて行かれました。その際は、父に頼んで馬券を買ってもらったことがあるようなないような(馬券は20歳になってから買いましょう)。当時の私は、競走馬も騎手も競馬の知識も皆無に等しかったです。唯一知っていたのは、誰もが知っているであろうレジェンドジョッキーの”武豊”さんです。なので、馬券を買ってもらう際は、武豊さんが乗る馬だけを選び、買ってもらっていました。

 それから父の転勤の影響で、小学校二年生まで海外で暮らすことになり、私と競馬の関係は広大な海によって遮断されました。帰国してからも、小学校では地元のサッカークラブ、中高では部活に所属し、競馬が開催される土日は練習や試合で競馬を見る機会はほとんど無くなっていました。深夜に放送されている競馬番組の録画をたまに見ることで、私と競馬の関係は首の皮一枚つながっていました。

 転機が訪れたのは、コロナが流行り始めた2020年です。家にいる期間が増え、土日に親と一緒に競馬中継を見るようになりました。それから瞬く間に、私は競馬に魅了されていきました。ギャンブルと思っていた競馬が、スポーツの競馬へ、私の見方もどんどん変わっていきました。

 今思うと、競馬についてわからないことがあっても、”競馬好きな親”という最高の先輩で、かつ最高の師匠にマンツーマンでご教授/ご教示してもらえたという環境は物凄くありがたかったです。

 死ぬまで続けるであろう趣味に巡り会えたことに感謝。

デゼルという馬

 タイトルに書かれている『デゼル』というのは、競走馬の名前です。デゼルは牝馬(人間で言う女の子)で、私が競馬沼にハマって初めてできた推し馬です。

 突然ですが、馬券には、単勝や馬連、3連単といったいくつかの買い方があり、その中に”WIN5”というものがあります。これは対象の5レースすべての1着馬を当てることで的中となる馬券です。”WIN5”を的中させることは難しく、過去の最高払い戻し額は5億5444万6060円と、最も夢のある馬券です(ちなみにですが、私は一度的中させたことがあります。”WIN5”としてはだいぶ安い方ですが…)。そんな”WIN5”を初めて買い、そして初めて一着馬を当てることが出来た、私にとっての記念すべきレースは、2020年5月3日東京第11レースのスイートピーステークスでした。そうです、このレースを制した馬こそが『デゼル』ちゃんです。後方から物凄い末脚で追い込んだ姿に一目惚れし、それからずっと応援し続ける存在となりました。

 応援してからも、デゼルちゃんはいつも最後に良い脚(末脚)を使っていました。ちなみにですが、末脚を決め手とする馬は、勝ち負けには展開がとても重要になります。ですが、負けても清々しいです。勝った時なんかは、もっと清々しいです。特に、ゴールのタイミングで差し切った時なんかは、言葉にならないくらい気持ちいいです。

デゼルは名牝ではない?

 名牝とは「牝馬の名馬」を指します。名牝の定義はきっと定められていないはずですが、やはり最高峰のG1と呼ばれるレースを最低でも一つは獲っていることが条件となるでしょう(G1は2023年時点で24つあります)。

 デゼルはスイートピーステークスを勝った後、G1の優駿牝馬(オークス)に出走しました。2番人気に推されたが、結果は11着と不甲斐ないものでした。その後、勝ち数を着々と増やし、G2の阪神牝馬を制すると、再びG1の舞台へと還ってきました。しかし、そこでも良い結果を残すことが出来ず、それからは3着と着外を繰り返し、引退を迎えました。G1のレースには計4度出走しましたが、一度も勝つことはありませんでした。

 「では、デゼルはG1レースを獲っていないのだから『名牝』と呼ぶのは間違いなのではないのだろうか。」その質問には、激しく「Yes!」です。私が言うのもなんですが、デゼルは名牝ではありません。でも、大好きなので『名牝』なのです。まあ、いわゆる”推し補正”っていうものですね。「推しなんだから一番尊い!」これに尽きます。

 だから、誰が何と言おうと、デゼルちゃんは『名牝』です。

憧れのデゼルちゃんに会えた日

 こんな私ですが、デゼルちゃんに会うことが出来たのは、一度だけです。

 2022年5月15日 ヴィクトリアマイル(G1)/東京競馬場

 感無量でした。2020年の5月3日に好きになってからなので、ほぼ2年が経ち、ようやく憧れの女の子に会えたのです。しかも、最高峰のG1の舞台で。もう感無量が降り注ぐに決まっています。

 ここで満を持して、デゼルちゃんの画像を皆様にお見せしょう。

画像①自分のスマホで撮影したデゼル(パドック時)
画像②お友達がカメラで撮影してくれたデゼル(パドック時)
画像③お友達がカメラで撮影してくれたデゼル(ターフ時)

「どれも可憐でたくましくて、可愛い!」ですね!ね?
記念の応援馬券も買ってレースを見届けることにました。現地で買った応援馬券は今でも大切に保管しています。家宝です。

画像④家宝(ヴィクトリアマイルでのデゼルの応援馬券)

 このレースは15着に敗れました(この時、もしデゼルちゃんが3着以内に入っていたとしても、馬券の払い戻しはしなかったでしょう)。結果は良いものでありませんでしたが、生で走っている姿を観れた事への感動と「とにかく無事に走ってくれてありがとう」という感謝の気持ちでいっぱいでした。このレースを最後にデゼルはターフを去りました。現役引退後は、お母さんとして繁殖します。デゼルの子どもが走る日もそう遠くはないでしょう。楽しみです、待ち遠しいです。

子どもが走る時、またデゼルの面影を追いかけて。

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