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ロゴス #14

第14話『宣戦布告』

水から上がられたイエスは、ヨハネの衣服、立ち姿を今一度見て

「それはそうと…」

少し微笑んだ。

「あなたの姿はまるでエリヤだ」

預言者エリヤ 旧約聖書『列王記』に名が見え、バアル崇拝への熱心な反対者、ヤハウェ信仰の守護者として描かれる。信仰的暗黒時代において、偶像礼拝を悔い改めるよう、アハブ王に直接迫った。ユダヤ人の信仰の鑑
旧約聖書 列王記 1章 8節「彼らが『毛衣を着て、腰に皮帯を締めた人でした』と答えると、アハズヤは『それはティシュべ人エリヤだ』と言った」

「光栄ですね…その想いです」

そう言うと、ヨハネは少し笑って見せた。

それから一言、二言と他愛もない会話をした二人だったが、イエスの表情が急に厳しくなったので、ヨハネは言葉を控えた。そして、服がまだ乾き切ってもいないのに、荒野を上ろうと歩き出したので、ヨハネは尋ねた。

「どこへ行かれるのですか?」

まだ周りには、バプテスマを目撃した民衆たちが残っていて、好奇の目でイエスを見ていた。狂熱とした視線に晒され、イエスの表情は曇っている。

「”奴”がわたしを見つけた…」

その時、民衆の一人が乗り出した…

「あなたがキリストか❓」

その動きを皮切りに、次々と人がイエスへ群がって行った…その状況に危うさを感じたヨハネは、民衆をイエスから追い散らす。

民衆は引き剥がされた後もイエスを拝み、崇拝しながら去って行った。人々はキリスト信じた…それは良い事だと思うが…ヨハネは何故か釈然としないのだった。

「あなたは、正しい」

唐突なイエスの呼びかけに、ヨハネはうまく言葉を返すことができなかった。イエスは振り返り言った

「わたしから行く」

その視線の先には山しかなかった…言葉の意味もわからない。

陽も落ちそうな時であったので、ヨハネは呼び止めたが、イエスの意志が揺らぐ事はなかった。

イエスは荒野深く分け入り、山を上って、40日間そこへ篭った…

旧約聖書 出エジプト記 34章 28節 「モーセはそこに、四十日四十夜、主とともにいた。彼はパンも食べず、水も飲まなかった。そして、彼は石の板に契約のことば、十のことばを書きしるした」

重要な局面を迎える時、この時代の敬虔な信徒は、断食を行い、主と向き合う慣習があったので、ヨハネには、イエスの行動の重要性は理解できたが、その目的は未だ解らずにいた。

一体、゛何゛に見つかり、゛何゛に向かったというのか?

イエスの戻るまでの40日間、不安を感じながらも、無事を祈りながら、民衆へのバプテスマを続けた。

… … …

さて、イエスが山へ上り、断食を初めてから二日目の夜…荒野深くの洞窟の中でのこと

暗闇がイエスに語りかけた

「腹が空いたろう?何故我慢する?」

イエスは目を見開いた…゛奴゛が現れた

「黙れ、サタン」

暗闇から、1つの石がイエスの前へと転がってくる…

「それをパンに変えて食べると良い。腹も満たされるし、何より…

あんたが”神の子”だということも一目瞭然じゃないか」

”自分の為に力を使え”

これがサタンからの一つ目の誘惑である。

サタン(訴える者)との戦いが始まった…

…15話へ続く