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ロゴス #7

第7話『続く”しるし”』

ヨハネと同様に八日目の割礼の日に

イエス

と名付けられた幼子は、生まれてから40日たったので、エルサレムへ全焼の生け贄を捧げるために上った。

旧約聖書 レビ記 12章 6〜8節「彼女の清めの期間(出産後40日は汚れるとされるため、行動が制限される期間)が満ちたなら、それが息子の場合であっても、その女は全焼の生け贄として一歳の子羊一頭と、罪のための生け贄として家鳩のひなか、山鳩を一羽、会見の天幕の入り口にいる祭司のところに持って来なければならない。祭司はこれを【主】の前に捧げ、彼女のために贖いをしなさい。彼女はその出血から清められる。これが男の子でも、女の子でも、子を産む女についての教えである。しかし、もし彼女が羊を買う余裕がなければ、二羽の家鳩のひなを取り、一羽は全焼の生け贄とし、もう一羽は罪の生け贄としなさい。祭司は彼女のために贖いをする。彼女は清められる。」

生け贄を捧げることで、神への献身と罪(人は生まれながらに原罪を持つとされているため)への贖いとする為である。(彼女達は裕福ではなかったので、二羽の家鳩のヒナを生け贄として用意した)

そして

初子イエスを神から買い戻す為であった

旧約聖書 出エジプト記 13章 2節「イスラエル人の間で、最初に生まれる初子は全て、人であれ家畜であれ、わたし(神)の為に聖別せよ(捧げよ)。それはわたし(神)のものである。
本来は初子ならば人であっても捧げる必要があるが、モーセの律法により、代価を払うことによって、買い戻すことが出来るとされている。この習慣を怠ると、初子は殺されるとされているので、マリアとヨセフはこの代価を払う目的もあった。(代価は銀5シェケル=銀50グラムほど)

それは突然のことであった

イエス達一向が神殿の境内に入った時、一人の男が立ちはだかった。そしておもむろにイエスへ手を伸ばして来たのだ。それを見たヨセフは危険を感じ、咄嗟に制止しようとしたが、それよりも早く、マリアはイエスをその男に手渡してしまった。

ヨセフは驚いたが、マリアは「大丈夫」と言わんばかりの目でヨセフを制した。マリアはこの男の意図、意味をすぐさま理解していたのである。男は口を開く。

「今こそ❗️

今こそあなた(神様)は私を安らかに眠らせてくださいます❗️❗️

私はあなた(神様)の”救い”を見ることが出来たからです❗️❗️

”救い”は全ての人の為に備えられたもので、異邦人を照らす啓示の光、イスラエルの光栄です❗️❗️」

この老人の名をシメオンという。

マリアとヨセフはその言葉の意味にも驚いたが、何より

イエスの名を呼んだこと

に驚いた。

イエスの名の意味は”神は救い”である

二人はエルサレムに着いてからイエスの名を呼んではいない。次にシメオンは母マリアに向き直し、こう続けた。

「この子はイスラエルがまた立ち上がる為に定められ、また

反対を受ける”しるし”

として定められています。

それはあなたにとって心を剣で刺し貫かれるような苦しみとなるでしょう」

これは預言であった。この言葉の意味をその場にいた人たちがどれだけ理解したかはわからない。シメオンも全てを理解していたわけではないかもしれないが、それは確かに、イエスの辿る生涯そのものとなるのである。

シメオンは長い間ずっとイエスを待ち望んでいた。

と言うよりも、シメオンに告げられたお告げは「メシアを見るまでは決して死ぬことがない」というものであったので、やっと自分の役目を終えたと感じたシメオンはホッと胸をなでおろしたのだった。

この出来事により、マリアは当初の予定を変更することにした。確信が深まったからである。夫ヨセフに言った。

「…あなた、銀は持って帰りましょう」

「?なぜ?イエスが”主”に殺されてしまう」

「この子…いや、この”お方”は殺されない

私たちの子ではないのだから

”主”の子を無事に育てるのが私たちの使命…

”主”から買い戻す権利なんて元々ないわ」

マリアとヨセフは生け贄を捧げると、代価の銀を支払うことなくエルサレムを後にした。

この一部始終を見ていた人がシメオンの他にもう一人いた。

アセル族のパヌエルの娘で女預言者のアンナという老女であった。

彼女もまた、イエス(キリスト)の到来を長年待っていた人物である。彼女はイエスらがエルサレムから帰った後に、イエスのことをエルサレム中の人々に語り伝えた。”メシアの到来を見た”と。

シメオンとアンナの言葉により、エルサレム中の人々にイエスの名が知れ渡った。聞いていた人々はそれを心に留めて

「一体その子は何になるのでしょう❓」


と言った。ヨハネと同様に、イエスもまた、生まれて間も無く国中の注目集める事となった。その波紋は広がり、やがて

時の権力者達の耳にも届くようになる…

…8話へ続く