ロゴス #24
第24話『異邦人への宣教』
「あなたと話している私がキリストです」
と、イエスが断言した時、丁度弟子達が帰ってきて、イエスが女の人と話しているのに気が付き、驚いた。
サマリア人の、しかも公の場でラビが女と会話しているというのは、当時の社会的慣習からは逸脱し過ぎている。
弟子達は不思議に思ったが、そのことに異見することもなく、また「どういう目的で彼女と話しておられるのですか?」と質問することもなかった。
が、その場の空気はなんとも言えない緊張感で包まれていた。ここはサマリヤの地ではあるが、なぜかユダヤ人の方が多いという不思議。
先に動いたのは女の方であった。女は水がめを置いて町の方へ行ってしまった。その場の状況に耐えられなかったということもあるが、それだけではない。女は
一刻も早く人々に伝えなければ
という思いに強く駆られたのだ。町に帰った彼女は大勢の人に呼べかけ、注目を集めた。彼女は息が上がっていたが、興奮で溢れるように言った。
「ちょっと❗️誰か来て❗️…見て欲しい人がいるんです❗️私の事を全部言い当てた人がいるんです❗️ひょっとしてだけど…
この方がキリストなんでしょうか❓」
〜
その頃、弟子達はイエスに食料を差し出し「先生、召し上がってください」とお願いした。そうすると、イエスはそれを断り、答えて言った。
「私には、あなた方の知らない食物があります」
弟子達が食料を調達に向かった時、確かにイエスは疲れていて、お腹も空いているようだったが、今はどうだ?…疲れは微塵も伝わらないし、本当に空腹も、渇きもないように思える。自分たちがいない間に、一体何が起こったのだろうと、謎は深まるばかりであった。
とりあえず、弟子達は互いに「誰か途中で食べ物を届けたのだろうか」と確認したが、誰にも心当たりはなく、首をかしげた。
「”私を遣わした方”の計画を行い
それを成し遂げることが、私の食物です」
その言葉を理解できないようだったので、イエスは言葉を続けた。
「あなた方は…
『収穫までまだ4ヶ月ある』
とは言ってませんか?
しかし…」
そう言ってイエスは町の方を指差した。
「目を上げて畑を見なさい…
色づいて、刈り入れるばかりになっています」
イエスの指差す方向を見ると、先ほどの女に連れられて、多くのサマリア人がイエスの元へと向かって来るのが見えた。
「さあ、私の言う事を聞きなさい
今が収穫の時です」
弟子達は状況が飲み込めず困惑した。
「先生…これは一体?」
「収穫するのは永遠の命の実…
収穫するのは収穫するのはあなた方です
種を蒔いたのは私ですが、あなた方の収穫を喜ぶために蒔きました
あなた方は労苦をしないで収穫を得るが、それは、蒔く者も収穫する者も共に幸せだと知るためです
ずっと先、あなた方を遣わすのは
あなた方が蒔くためなのです」
町の人々がイエスの元に来ると、自分たちの所に滞在してくださるように願った。「私の事を全て言い当てた人がいる」と証言した女の言葉で、イエスを信じたからである。そこでイエスらはその町に二日間滞在し、さらに多くの人が信じた。そして人々は彼女に言った。
「もう、私らは、あんたの話した事によって信じているんじゃないよ?
自分の耳で聞いて、確信したんだ…
この方が本当にこの世の救い主…
キリストだと知っているよ」
それまでのユダヤの教えでは、救われるのは選ばれし民であるユダヤ人だけであるというものだった
しかし、サマリヤ人への宣教によって、民族関係なく、信仰によって全ての人は救われるという事を、イエスは弟子達と異邦人に示したのだった。
この時、サマリヤの一つの町スカルに蒔かれた種は、サマリア全土に実をつけて広がり、これから数年後、伝道者ピリポなどによって多くの収穫(伝道の成果)を得ることになる。
『サマリアでのリバイバル』 イエスがサマリヤに立ち寄ると言ったのは、慣習にもとる不自然なことであるが、歴史的に見ると、このことは必然であったといえる。イエスの教えは異邦人から大きく広がっていくことになるのだが、その一つとしてサマリヤでのリバイバルは大きい。その様子は、エルサレムでも見られないような熱狂ぶりであったという。その出来事の背景には、今回の事が大きく影響したと考えられている。
…25話へ続く