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ロゴス #15

第15話『試みる者と試みない者』

「それをパンに変えて食べると良い。腹も満たされるし、何より…

あんたが”神の子”だということも一目瞭然じゃないか」

サタンは寄り添うように語りかけてきた…空腹で欠けた部分から忍び込むように、目先の自分への利益…堕落へ手招きしている。

嘘と誘惑がサタン(訴えるもの)の武器

それらを駆使し、堕落させ、信仰から遠ざけるのが目的であり、攻撃となる。
孤独、耐え難い飢餓、無人の岩山が、その攻撃をいっそう激しく執拗にする…サタンは武器を振りかざした。

イエスは答えて言われた。

「人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つの言葉(ロゴス)による」

旧約聖書 申命記 8章 3節「人はパンだけで生きるのではない、人は『主』の口から出るすべてのもので生きる、ということをあなたにわからせるためであった

「そう書いてある」

最初の武器、誘惑をイエスがすぐさま払いのけたので、サタンは差し伸べた手を引っ込め、舌打ちした。「面白くない」そんな表情であった。

「何故、我慢する必要がある?私には力がある、あんただってそうだろ?自分の為に自分の力を使って何が悪いというんだ?」

「私はしもべだ、主の定めた道をいく」

動じないイエスの態度に、サタンは苛立ち始めた…

「なら手伝ってやろう、その”道”を簡単にしてやる」

そう言うとイエスを取り巻く景色が瞬く間に変化した…

…目前に広がる光景は人工的な断崖

エルサレムの神殿、南東の壁の上。壁の下にはさらに谷底があり、合わせるとその高さは80mにもなった。立ち眩みするような高さである。

その頂にイエスを立たせて、サタンはこう言った

「あんたは”神の子”だ

どうだ?ここから飛び降りてみては❓

無事に降り立てば、ここにいる大勢の人間があんたをキリストだと間違いなく認めるだろう…神だってこう言ってる

『神は御使いたちに命じて、その手にあなたをささえさせ、あなたの足が石に打ち当たることのないようにされる』

旧約聖書 詩篇 91章 11〜12節「まことに主は、あなたのために、御使いに命じて、すべての道で、あなたを守るようにされる。彼らは、その手であなたをささえ、あなたの足が石に打ち当たることのないようにする」

見せつけてやりなよ、そうしたら…

今日からあんたが王だ」

サタンは巧妙に迫った。聖句を引用して、イエスを攻撃してくる。この攻撃は誘惑に”嘘”も含まれている。誤用と言っても良い。

詩篇に書き綴られているのは、信仰に歩む道での障害を石と例えて、「石に打ち当たらないようにされる」と書いているのであって、決して”好き勝手やっても助けてくれる”とされているのではない

サタンは意図的に「すべての道で」という部分を省くことで、意味を捻じ曲げ、欺こうとした。

イエスは言われた。

「『あなたの神である主を試みてはならない』とも書いてある」

旧約聖書 申命記 6章 16節「あなた方がマサで試みたように、あなた方の神『主』を試みてはならない

「理解できないな…何故そんな回りくどい道を歩む❓

力を示せよ❗️そうすりゃ簡単にひれ伏すさ❗️❗️

さっさと王になって、民衆を従えれば済むだろ❗️❗️」

サタンは迫った。崖から突き落とさんばかりの圧力だった。

「それは父の用意された道ではない」

そして、サタンを見据えて、こう付け加えた。

「お前が私を突き落とせないのも、その道が用意されていないからだ」

『この世の神』とも呼ばれるこの世を支配する者サタン…その力に対する侮辱。サタンは取り乱したようだった。サタンは手を伸ばし、イエスの胸ぐらを掴むと、そのまま崖へ引っ張り出した。しかし、落ちることはなく、そのまま高く高く飛び上がる。

「あんたの言う通りだ❗️❗️今、あんたを殺すことはできない…だが❗️」

着いた場所は山の頂上で、その眼下にはオアシスの街エリコが広がっていた。その街は非常に豊かで、まるでこの世の全ての栄華を見ているようであった。

特にエリコはバルサム(天然樹脂)が豊富で、富の源泉となっていた。ヘロデ大王もこれを持っていたので力があった。またクレオパトラもこれを欲しがったとされている

「俺はこの世の神だ❗️❗️この世の全てをあんたにくれてやってもいい❗️❗️❗️❗️」

煌びやかな街を”自分の物”と言わんばかりにひけらかして言った。

「俺を拝め❗️❗️全部やる❗️❗️この世の全てを❗️❗️❗️❗️」

サタンは全てをかけてイエスに挑んだ。珍しくそこに嘘はなかった。

イエスは答えて言われた。

「引き下がれ❗️サタン❗️❗️❗️

『あなたの神である主を拝み、主にだけ仕えよ』

そう書いてある❗️❗️❗️」

旧約聖書 申命記 6章 13節「あなたの神『主』を恐れなければならない。主に仕えなければならない。御名によって誓わなければならない」

「…後悔するんだな、これが最初で最後だっだ。この世は俺のものだ」

それだけ言うと、サタンはイエスを離れていった。

「見よ…サタンよ」

サタンが去ってすぐに、イエスの周りには御使いが仕えた。

「これが定められた道…

全ての世にあるもの

”肉の欲”

”目の欲”

”生活のおごり”

は、神からではなく、お前から出るのだ」

イエスの勝利の背後には信仰と聖霊があった。

そしてイエスは聖霊に導かれ、山を下っていく…

…16話へ続く