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ロゴス #17

第17章『ヨハネからイエスへ』

ある時、ヨハネは二人の弟子と共にいた

一人は『アンデレ』もう一人は『ヨハネ』(このヨハネはバプテスマのヨハネとは別人物で、後に使徒ヨハネと呼ばれる人物。『ヨハネの福音書』を後世に残す)

イエスが前を歩いて行かれたので、バプテスマのヨハネは二人の弟子にこう告げた。

「見なさい。あの方が”神の小羊”(メシア)だ」

彼らのラビ(先生、師)であるヨハネがそう言うのを聞いて、二人の弟子は早速イエスについて行った。

イエスは、二人がついて来るのに気がついて言われた。

「あなた方は何を求めているのですか?」

彼らは言った。

「”先生”…今どこにお泊まりなのでしょう❓」

「…来なさい。そうすればわかります」

その様子を見て、ヨハネは満足そうに頷いた。

この瞬間、ヨハネの二人の弟子は、イエスの弟子となった。

その日、彼らはイエスと一緒にいて、イエスの話を夜遅くまで聞いて過ごしたのだった。

次の日、アンデレはまず自分の兄弟シモンを見つけて

「ついに❗️…私たちは❗️会ったんだよ❗️❗️メシアに会った❗️…」

と言った。二人の弟子は、イエスの話を聞いて、この人こそがキリストであるとの確信を持ったのである。

興奮気味のアンデレに、シモンはびっくりして、後退してしまった。

「ちょ…ちょっと落ち着け、わかったから…」

シモンはアンデレを諌め、少し疑うような質問を投げかけてくるので、アンデレはじれったく感じ、シモンの手を引いた。

「もう!!いいから!!とりあえず会ってみなさい!!そうしたらわかるから!!」

彼はシモンをイエスのもとへ連れていくことにした。自分の拙い言葉より、直接見てみることが、何よりの”しるし”になると考えたからである。

イエスの前に連れてこられたシモンに、イエスが目を留めて言われた。

「あなたはヨハネ(バプテスマのヨハネでも使徒ヨハネでもない)の子シモンですね。あなたを

ペテロ

と呼ぶことにします」

ペテロとは訳すと”岩”という意味。ペテロは、そのあだ名の意味を理解できなかったが、後々になって与えられた名前の意味を知ることになる。

マタイの福音書 16章 18節 「わたしはこのの上にわたしの教会を建てよう」

後にこのペテロと名付けた人物が、キリスト教初代教皇となり、イエスの教えを広める最重要人物となるのだが、この時すでに、ペテロの本質、役目を見抜いていたのだろう。

しかし、ペテロはこの時点はまだ未成熟。直情的で動揺しやすかった。

アンデレの熱意や、イエスの神秘的な雰囲気と、意味深な言葉などにすっかり感化され、この人こそメシアであると安易に盛り上がってしまっていた。イエスにはわかっていたが「今の時点ではそれで良い」と心の中に留めておかれた。

三人目の弟子としてペテロが加わった。

その翌日、イエスはガリラヤに行こうとしていたのだが、一人の男に目が止まった。ピリポというその人物に近づくと、すぐさま言われた。

「私に従って来なさい」

普通だと、弟子からラビ(師)へ言い寄っていくのが当時の慣習、自然な流れであるが、今回は逆である。

ピリポは後に使徒として素晴らしい働きを見せるが、その資質を見抜いたから、直々に声をかけた…というより、ピリポの素直な性格と、物怖じしない愚直さを感じ取ったので、このような形をとった、という方が正しいであろう。イエスからのシンプルな呼びかけに、ピリポすぐさま従った。素直であったからだ。彼はベツサイダの出身で、アンデレやペテロと同じ街の出身であった。

四人目の弟子としてピリポが加わった。

ピリポは弟子として、すぐに行動を起こした。素直なところが彼の良い所。友人のナタナエルを見つけるとすぐに伝えた。

「聞いてくれ❗️モーセが書き、預言者たちも書いている方に会ったのだ❗️」

ナタナエルは驚いた。そして食い気味にピリポに質問した。

「本当か❗️❗️それはどんなお方だ?今どこにおられる?エルサレムか?それともヘブロンか❓❗️」

ナタナエルは物事を斜に構える、めんどくさい性格ではあったが、メシアの到来は心待ちにしていたので、友人の話に大いに沸き立った。しかし、その次のピリポの言葉に、肩透かしを食らったように消沈するのだった。

「その方はナザレの人で、ヨセフの子イエスという方だ」

ナタナエルの表情は曇った。

「❗️は❓…ナザレ❓❓…馬鹿言うな❗️❗️あんな小さな町からメシアが出るわけないだろう❓❓お前はナザレがどんな町か知ってるのか❓」

ナタナエルの古里はカナという小さい田舎町であった。ナザレはその隣の街で、これまた同じように小さい。似たような二つの町は事あるごとに争っていたので、ナタナエルは実際以上にナザレを軽んじて考えてしまっている。

話になりそうもないと早々に感じ取ったピリポはナタナエルを引っ張って行った。

「いいから来いって❗️❗️」

「わかったよ❗️痛いから、手を離してくれ、自分で歩くから…」

どうせ普通のラビだろう?…そんな事を考えながら、ナタナエルはイエスの元へ向かったのだった…

…18話へ続く