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第2回 「絶対、どん底へ落ちない人はいない」

Interview /鈴木泰堂×デポルターレクラブ竹下雄真(全4回

Deportare Club
2020.1.17

鈴木泰堂(すずきたいどう) プロフィール
宗教法人示現寺代表役員/法華山示現寺住職/僧侶。1975年4月20日神奈川県出身。立正大学仏教学部仏教学科卒業。1987年、在家から出家し、命がけで仏道に邁進する父に憧れて出家し弟子となる。1998年、日蓮宗僧籍取得。2008年、先代住職遷化により住職に就任。以降法務を熟しながら、年間400人以上の相談者の「心の悩み」やスポーツ選手のメンタルをサポート。2014年、瞑想と写経を取り入れた「メンタルファシリテーション」を考案し、東京都渋谷区のコートヤードHIROOにて毎月実施。その他、各種団体主催のセミナー講師など活躍の場を拡げている。2019年12月、清原和博氏との対談『魂問答』を発売。

なぜ、成功する人はよくお墓詣りに行くのか

竹下雄真(以下:竹下)
デポルターレクラブの会員さんでも、お墓詣りが習慣という方はとても多いんです。
僕もその影響を受けて、最近、なにかあるとお墓詣りに行くようにしているんですよ。なにかに悩んだときとか、迷ったときとか。ヨコシマかもしれないけれど、「どうか、なんとかしてください」ってお願いしたりすることもあります(笑)
お墓詣りにどういう効果があるのかわかりませんが、みなさんの影響を受けて、今はそれが習慣になりました。どうして成功する方々は、お墓詣りによく行かれるんでしょうか。

鈴木泰堂(以下:泰堂)
なんとなくですが、お墓詣りって、自分を見つめ直したり、自分をリセットしたりすることと同じなんじゃないかなと思うんです。
竹下さんの車はオートマですか? それともマニュアルですか?

竹下:
マニュアルの免許は持っていますが、学生時代、配達のバイトをしていて「お前、これ運転しろ」って言われて軽トラをあてがわれたんですけど、無理でした(笑)
それ以来、僕はずっとオートマです。

泰堂:
(笑)
それでもマニュアルのやり方はわかるでしょう。ローギアからスタートして、セカンド、サード、トップにギアを切り替えていきますよね。
そうやってギアを切り替えていくとき、必ず通過する場所がニュートラルです。
トップからセカンドへ落とすときにも、絶対にニュートラルを通る。つまり、いつでもニュートラルが真ん中にあるんです。
僕は、人間もこれと同じで、ギアを入れる瞬間には、まずニュートラルにいれなくちゃいけないって思うんですよ。
ときどき、「俺は頑張る!」って言いながら失速してしまっている人がいるけれど、そういう人は大抵、ローギアで走っている。次のギアに変えてあげれば、間違いなく加速するのにって思うことが少なくありません。

竹下:
ギアを切り替える前に、一旦ニュートラルに入れる作業がお墓詣りということですか。

泰堂:
その通り。
お墓詣りをしてご先祖様と向き合いながら、手を合わせて自分の心に静かに問いかけてみる。こういう時間を持つことが、人間にとって、ギアをニュートラルに入れることだと思うんですよ。
あとは、ご先祖様に対して感謝をするということは、良い行いを積むということになりますから、「自分はいいことをしている」という実感が、人間の心を豊かにするということもあるかもしれませんね。
結果的に、お墓詣りをした後に心がすっきりしたり、迷いが晴れたりすることは、お墓詣りをしたことによるめぐみです。
そういう経験を繰り返すことで、自動的にお墓詣りが習慣化するのでしょうね。

竹下:
僕の祖父母はもう亡くなっているんですが、ふたりとも生前、「わかば」というタバコを吸っていたんですよ。
僕は普段、タバコをまったく吸わないんですが、お墓詣りに行ったときだけは、「わかば」を吸って、お墓に供えるようにしているんです。

泰堂:
それはとてもいいことですね。

竹下:
祖父母が「わかば」を吸っていたときの匂いを思い出すんですよ。そうすると、そのあとにはたいていいいことがある(笑)
だから僕はここぞというときには、お墓詣りに行くようにしています。

人間は、誰も病から逃れられない

竹下:
泰堂さんはご自身の健康について、どうお考えですか。

泰堂:
僕の父は命がけで仏教に邁進するような人で、その父の影響を受け、僕自身も12歳のときに在家から出家しました。それ以後、ずっと修行を重ねてきましたが、正直いえばあまり自分自身の健康についてちゃんと考えたことはなかったような気がします。
むしろ、少々熱があっても、頑張って修行を続けていたら元気になるようなこともあったから、結局は自分の気持ち次第なんだって思って、無理していた部分もあったかもしれないですね。

竹下:
泰堂さん、最近痩せましたよね。

泰堂:
少し、食欲を圧縮して“小欲”にしたので……(笑)

竹下:
なるほど、別にモテようとしたわけじゃないんですね(笑)何キロくらい痩せたんですか。

泰堂:
16キロくらいです。専門家に相談に乗っていただいて、主に食事をコントロールしました。
こうやって食事を改めて見直してみると、自分は今まで、一体、どれだけ食べていたんだろうって驚きますね。

竹下:
前に、「カレーラーメンを食べようか、どうしようか」って真剣に葛藤していたこともあったのが嘘みたいですね、しかもハンバーグのあとに。

泰堂:
そんなこともありましたね(笑)
いま、世間では未病といって、病気を未然に防ぐことがとても大事、という風潮が高まっていますよね。でも、これを仏教的に考えると、病気にならないようにするために気をつけたり、努力したりすることはできるけれど、絶対に「病気にならない」というのは難しいんです。
そもそも仏教では「四苦」、すなわち、「生老病死」はすべての人に平等に与えられた苦しみとされていて、その3つ目が「病」ですから。

竹下:
誰もが病気になることから逃れられない、ということですか。

泰堂:
そう。だから、病気になることはごく当たり前のこと、誰も避けることはできない。
病気になることを先延ばしにしたり、現代医学というご縁を使って小難で済ませたり、といったことはできるかもしれないけれど、病気にならない人は誰もいません。
つまり、病気になることは誰にでも起こりうることで、それは決して不幸の始まりではないということなんですね。
だから仏教的視点で健康を考えると、たとえ体が病気になっても、「俺は世界一不幸だ」とか、「なんて俺はついていないんだろう」とか、世の中を違ったようにみてしまうことが、実は一番不健康なことになるんです。

竹下:
なるほど。人間は病気になるのが当たり前。
それを不幸に思う心こそ、病である、ということですね。
そもそも「健康」という言葉の定義については、WHOが明確に定めていて、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」と述べています。
このうち、「肉体的」は僕らの専門分野、そして、「精神的」は泰堂さんのご専門ということになるでしょう。
それから「社会的」はソーシャル、つまり、他人や社会と建設的でよい関係を築けること。
そして、これは今でも検討事項ではあるのだけど、「スピリチュアル」。
1999年、WHOは健康の定義に新しく「スピリチュアル」を含めようと検討して、結局それは宗教行為を助長するとか、代替医療がWHOのお墨付きを得たような形になってしまうんじゃないかという懸念も出て、流れてしまったのだけど、僕は、これも健康の大事な要素だと思うんですよね。
日本語にいえば「霊的」、つまり、気が満ちているということで、これらの4つの要素がダイナミックに動いている状態こそ、本当に人間は健康であると思うんです。

泰堂:
肉体的、精神的、社会的、それから霊的という4つの要素のうち、どれが欠けても、健康になるのは難しいということですね。

スーパースターからどん底へ。清原和博氏との対談集『魂問答』

竹下:
そうなんです。
泰堂さんは2019年12月、元プロ野球選手の清原和博さんとの対談集『魂問答』を出版されましたが、はじめに清原さんに泰堂さんをご紹介したのは、実は、僕なんですよね。
僕はパーソナルトレーナーとして駆け出しだったころ、アシスタントとして清原さんのトレーニングをサポートさせていただきました。そのとき、清原さんはとても可愛がってくださったんです。
そのときの清原さんは文字通りのスーパースター。
当時はジャイアンツの選手として、まさに日本のプロ野球を代表するような活躍をしていました。フィジカルはもちろん素晴らしかったし、メンタル面でもチャンスにめっぽう強くて、誰よりもたくましかった。
そのうちご結婚して、お子さんもできて、ソーシャル的にも充実していた。

泰堂:
そうですね。

竹下:
さっき話したWHOが健康の4つめの定義として検討した「スピリチュアル」ですが、僕はこの意味は「アイデンティティ」というか、「絶対自分はこうなるんだ」と決め、それを実現することを意味するのかなって思うんですよ。
“気”が充実していないと、絶対にできないことだから。
そういう意味では、当時の清原さんは肉体的にも、精神的にも、社会的にも、それから霊的にも、ものすごく高い状態をキープしていて、だからこそ、スーパースターの活躍をされていたんじゃないかと思うんです。
でもそのあと、薬物使用で逮捕されて、僕が知人を通して約10年ぶりに清原さんとお会いしたときには、彼はものすごく変わっていた。
体はボロボロで、メンタル的にも弱くなっていて、家から一歩も出ない状況で。目標も見失って、スピリチュアル的にも全然よくない状態だった。
清原さんはずっと「死にたい、死にたい」ばかり繰り返していて、僕は絶頂期の清原さんを間近で見て知っていたから、そのギャップがあまりにも大きくて困惑したんです。
これはもうえらいことだと思って、それで、信頼できる泰堂さんを清原さんにご紹介しました。泰堂さんなら、きっと清原さんの助けになるんじゃないかと思って。
初めて清原さんにお会いしたとき、どうでしたか。

泰堂:
まさにいま、竹下さんがおっしゃった通りです。
以前、テレビや新聞などで見ていた姿に比べたら、激しく衰弱しているというか、気が不足している状態だと思いました。
僕が清原さんと初めてお会いしたのは今から7年前くらいのことですが、その後、5年間はあまり連絡を取らずに過ぎたんです。
その間に彼も社会的制裁を受けたりしたんじゃないのかな、実際、僕が清原さんと親しくお付き合いさせていただくようになったのは、今から2年くらい前のことです。

竹下:
聞くところによると、泰堂さんのところに毎日清原さんから電話があって、3時間くらいお話をされたそうですね。

泰堂:
いや、そこまでじゃないけれど、短いときで30分くらい。長ければ3時間くらいお電話でお話ししたでしょうか。
毎日お電話が来ることもあったけれど、期間が空くときは1か月くらいお電話がないこともありましたよ。
僕はご本人にもお話ししましたが、「清原さんが苦しいとき、坊主はとてもお役に立つと思います。でも、清原さんがお元気になられたら、僕はもう要らなくなるでしょう」って。
これは、一般の方から悩み相談を受けるときもそうなんですけど、坊主は本当に苦しいときにはとても役立つ存在ですが、永遠にそれが必要というわけじゃない。
お元気になられたら、用がなくなる存在ですし、僕もそれでいいというか、むしろそうあるべきと思うんです。

竹下:
文字通り、お坊さんは苦しいときの駆け込み寺なんですよね。
僕は正直なところ、仏教をすごく熱心に信仰しているわけじゃないし、キリスト教やイスラム教にも興味がある。もっといえば、新興宗教もどうなっているのか関心があるし、宗教家の方達の討論をテレビで見て、とても興味をひかれることもあります。
でも僕自身、宗教は「自分を健康にしてくれるもの」「心身を整えてくれるもの」という認識があって、これまでもそれが必要なシーンで泰堂さんにお世話になってきました。
今回、僕が泰堂さんをご紹介したときの清原さんは、まさにどん底にいたわけだけど、誰だってそういう状態になることがある。僕だって、泰堂さんだって、いつどん底の状態になるかわからないし、誰でもそういう可能性を持っている。
だからこそ、誰もが駆け込み寺を持っていることはとても役立つし、そういう存在がこの世に必要なんじゃないかなって思うんです。

(つづきます)

2020.1.24

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CONTENTS
第1章 「超人」に憧れる現代人
第2章 超人化計画1 運動でミトコンドリアの量を増やす
第3章 超人化計画2 解毒でミトコンドリアの質を上げる
第4章 超人化計画3 食事でミトコンドリアの質を強化する
第5章 Q&A超人をめざす人のために
対談 超人たちをつくってきた二人清宮克幸×竹下雄真

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