フェイクドキュメンタリーQの気になったところ:Q7

Q7「或るブログ」


「Q7」概要

・動画公開日2021/12/05
写真が趣味で、先輩の仕事先でレタッチや写真の合成編集のバイトをする男性のブログが映されている映像。ナレーションとディスプレイに映し出されているブログの映像やブログのスクリーンショットの画像で構成されている。

動画の始まりではブログの最後の日記が紹介される。
日付は「2011年11月03日」、タイトルは「顔」となっている。
内容は「曇り空の画像」
に「まずはこの写真をご覧ください たまたま見上げた空が 偶然この気持ち悪い顔の空 こんな事が最近 ずっと続いています。ずーっとです。やはり、僕の方にも何か問題が起こるかも。だからこれ以上ブログを更新する事はやめにします。何かあった時の為に全部残しておく事にしますので万が一の時はみなさんにお任せします」という内容。
何を言っているのかよくわからないが、内容から良くないことがブログ主に起きていることが伺える。
ブログ主には男性の声が当てられており、ナレーションは女性(Q1、Q3、Q6と同じ人物?)が声を当てている

・続いてナレーションで「これは実際に存在したとある男性のブログである」と流れ、タイトルが出てくる。
その後、ナレーションでブログのタイトルが 「オレンジロビンソンの日記」であることやブログ主のオレンジロビンソン氏についての素性をブログの画像とともに紹介していく。

・ブログの内容に変化が訪れたのが「2010年11月15日」というナレーション。ブログのタイトルは「退職からの就職」内容は「同僚の女性アルバイトが大手広告代理店への就職が決まっており退職する」という内容であり、さらに「オレンジロビンソン氏に写真合成の仕事が任せられ」それは「家族写真にある顔写真を合成するという」ものだ。
オレンジロビンソン氏は説明のため、この写真に目線を入れてブログにアップロードしている。顔写真は「顔がただれたような女性の顔写真」となっている。依頼主は「家族を怖がらせるサプライズのための写真」という理由で、合成を依頼している。先輩とオレンジロビンソン氏はこの依頼主を「Xさん」と呼び、毎回同じ写真の合成を依頼する「Xさん」に疑問や不気味さを感じるようになっていく。

・写真の依頼は約5ヶ月で74枚あり、オレンジロビンソン氏のブログにそれがアップされ続けている様子が映る。

「2011年04月18日」には「人生いろいろ」というタイトルで、先輩の心労によりバイト先が休業する旨が書かれている。また、先輩が街中で「Xさん」からの顔写真の人物を見かけたという出来事も書かれており、それに対してオレンジロビンソン氏が先輩に労る言葉を送っている。

・その後、ブログは「2011年05月08日」に更新されており、タイトルは「後かたずけ」。内容はオレンジロビンソン氏が会社のメールを久しぶりに確認し、仕事の依頼を断るメールを送るという内容と、「Xさん」からのメールがあったという内容。
「Xさん」のメールには「家族写真」「顔写真」の2枚の画像が添付されていたが、今回は「一枚の写真」だけであり、オレンジロビンソン氏はそれをブログにアップしている(運動会の家族写真が表示される、背景や家族全員の顔が歪んでおり、オレンジの不自然な光も写り込んでいる)そして、「ありがとうございました」という文面だけが添えられているメールのスクリーンショットが載せられている。

・最後にナレーションで「このブログに 書かれている事は本当なのだろうか」「オレンジロビンソンさんの 現在についても全て不明である」と動画は締めくくられている。


気になった所

映像について

 この映像は「オレンジロビンソンの日記」という個人ブログをモニターに表示させたものをカメラで撮影したカットと「オレンジロビンソンの日記」をスクリーンショットで画像ファイルにしたものを表示させているカットが使われている。

ブログについて

「オレンジロビンソンの日記」という個人ブログは「2009年5月」から「2011年11月」の間に更新が行われている。
ブログの説明には「写真が趣味の男子がなんとなく更新している日記です。コメント大歓迎。」とある。
ブログのURLは明らかにされず、またブログ自体もこの動画がアップされた時点ではグーグルで検索してもヒットしなかった。
ただし「OrangeRobinson」で検索した場合、「エキサイトブログ」のページが検索結果に出てくる。
エキサイトブログの紹介文には「エキサイトブログは写真家やプロカメラマンも愛用する画像にこだわる無料ブログサービスです
」とある。

オレンジロビンソン氏について

動画内のブログの情報によると「専門学生で先輩の仕事先でバイトを行っている」事がわかる。おそらくクリエイター系の専門学校だろうか。
バイトの学生とはいえ、クライアントの依頼の写真をブログに「目線隠せば大丈夫」とアップしてしまうことから、軽率な性格を感じさせる。

依頼の写真について

・「顔のただれたような女性の写真」
ナレーションでは「女性を正面から撮影した写真」と紹介されている。ボーダーのTシャツのようなものを着ているように見える。背景は屋外で、場所は不明だがフェンスや木が写っているように見える。髪の毛が長い人物に見えるが、背後に立つ影のようにも見える。オレンジロビンソン氏は「失敗した写真や特殊メイク」だと思っているようだ。

「家族写真」
母親、父親、男の子、女の子のおそらく4人家族の写真。誕生日や旅行の写真。「おしりかじり虫」と書かれた絵本?を持つ女の子の写真(動画の9:07)があることから、2007年以降の写真だと分かる。また、写真の中の子供の成長具合から、数年間ぐらいの期間のものであると感じる。

・「Xさんが最後に送った写真」
上の家族写真らしい人物が写っているが、その顔はすべてただれたようになっている。また、写真の左端にはオレンジの影のようなものが写っている。
また、依頼で送られてきた写真とはちがい、この写真だけ家族4人が写っており、撮影者がいることが分かる。また、写真は運動会の様子をとったものであり、これは
(動画の09:04)付近の写真である可能性が高い。

Xさんについて

この話の中で一番の謎が多い人物は、家族写真に顔写真を合成してほしいと依頼してきた「X」という人物だ。「顔のただれたような女性の写真」「家族写真」の持ち主であり、2010年11月15日から約5ヶ月で74枚の写真合成の依頼をしてきた人物である。依頼の理由は「家族を驚かせたいから」という理由であるが、頻度と枚数が明らかに常軌を逸している。また、2011年05月08日の写真では、合成の依頼ではなく自ら合成・加工を行ったような写真を「ありがとうございました」という文面とともに、メールで送りつけている。

先輩とオレンジロビンソン氏の身に起きた異変

2011年4月18日の更新で、先輩は「心労により」事業をたたむことになったことが綴られている。先輩は少し前に「Xさんの依頼にある顔のただれたような女性の写真」の人物の顔を街中で目撃するようになったという。そして動画の冒頭にあった、オレンジロビンソン氏の最後の日記でも、先輩と同じく空にまで写真の人物の顔が見えるようになってしまった様子が分かる。
精神的な不調なのか、それともまた別の要因があるのかは不明である。

ブログは存在したものなのか?誰が見つけたブログなのか?

現在動画に使われているブログは検索結果に引っかからないため、提供者がページごと保存したものである可能性がある。または、提供者がブログそのものをでっちあげ、フェイクドキュメンタリーQへ提供した可能性もある。

依頼の目的

「Xさん」は約5ヶ月にわたり「家族を驚かせたい」という理由から、74枚の写真合成の依頼をしている。家族写真に顔のただれたような女性の写真を合成するというシンプルなもので、一見するとソフトと素材があれば簡単にできる作業のように思える。「家族を驚かせたい」というには執拗であり、不自然に思える。
「Xさん」は最後に「顔がただれたような家族写真」だけを「ありがとうございました」というメッセージとともに添付している。
「ありがとうございました」というメッセージから、目的が達成されたことが分かるが「家族を驚かせたい」というものとは食い違っているように思える。
「顔がただれたような家族写真」が出来上がったことで「ありがとうございます」ということなのだろうが、ならば何故最初からこのような加工を依頼しなかったのだろうか。

ブログの最後の日記について

オレンジロビンソン氏が「顔がただれたような家族写真」を見てから約6ヶ月後にアップされた日記。
「まずはこの写真をご覧ください たまたま見上げた空が 偶然この気持ち悪い顔の空 こんな事が最近 ずっと続いています。ずーっとです。やはり、僕の方にも何か問題が起こるかも。だからこれ以上ブログを更新する事はやめにします。何かあった時の為に全部残しておく事にしますので万が一の時はみなさんにお任せします」とある。
この文面から
オレンジロビンソン氏は先輩と同じように「顔のただれた女性」が視えてしまっている状態にある事がわかる。

さらに「やはり、僕の方にも何か問題が起こるかも。」とあるが、
この文面から事業を畳んだ後に先輩の身に何か起きた事がわかる。

そして「だからこれ以上ブログを更新する事はやめにします。何かあった時の為に全部残しておく事にしますので万が一の時はみなさんにお任せします」
とあり、「オレンジロビンソン氏はブログを更新することで良くないことが起きたと考えている」ようだ。「何かあった時の為」「万が一」とあるため、自身の身に良くないことが起きると予期していることがわかる。また「みなさん」というブログの読者に向けた内容になっていることが分かる。

考察

「オレンジロビンソン氏=Xさん」

Xさんの依頼が来てからのオレンジロビンソン氏の行動に違和感がある。それは「なぜXさんの依頼で作った写真をブログにアップし続けたのか」ということである。依頼者の写真を勝手にネットにアップするという点以外にも、不気味な写真を自分のブログにアップし続ける(動画の8:22)という点でも違和感がある。
結論から言うと「オレンジロビンソン氏はブログに顔のただれた女性の写真を読者に見てもらうために自らXさんとして写真合成をバイト先に依頼した」と考える。
いきなり女性の不気味な顔写真をブログに何枚もアップしても不気味がって誰も見ないが、「こんな依頼が来た」という体裁であれば何枚もアップロードしても自然に見てもらえるとオレンジロビンソン氏は考えたのだろう。

「オレンジロビンソン氏の目的」

Xさんが最後に送ったような「顔の崩れたような家族写真」もオレンジロビンソン氏なら合成によって作ることができると考える。
ならばオレンジロビンソン氏が「Xさん」として、最後の家族写真を送ったのは何故なのか?
それは「先輩が顔の幻覚をみるようになったことを確認した」(4/18)からであり、「顔写真をブログに載せる必要がなくなった」と判断し、Xさんの目的が「女性の顔写真で家族に呪いをかける」という目的を果たしたと見せかけたかったから(5/8)だと考察する。
オレンジロビンソン氏はとにかく「顔のただれた女性の写真」を他人に見てもらいたかったのではないだろうか?

「顔のただれた女性の写真」

この女性の写真は誰が撮影したのかというと、やはり写真の趣味があるオレンジロビンソン氏が撮影したものであろう。いつ撮影したものかは不明だが、オレンジロビンソン氏が撮影してしまった心霊写真の類なのだろうか?
先輩やオレンジロビンソン氏がこの女性の顔を幻覚で見ていることから、曰く付きの写真であると見てよいだろう。家族写真はおそらく無関係のブログなどから拝借したものだろうか?

「最後の更新」「この動画」

事の発端がオレンジロビンソン氏の写真からであるなら、オレンジロビンソン氏は既に女性の顔の幻覚に悩まされていたのだろうか。オレンジロビンソン氏は先輩にこの女の写真を繰り返し見せ、ブログにもアップすることで、この呪縛を他人に押し付け逃れようとしたのだろうか。
オレンジロビンソン氏が最後に更新した日記は、5月にXさんの依頼を終わらせてから6ヶ月空いている。オレンジロビンソン氏は呪縛から逃れることができなかったようだ。

「まずはこの写真をご覧ください たまたま見上げた空が 偶然この気持ち悪い顔の空 こんな事が最近 ずっと続いています。ずーっとです。やはり、僕の方にも何か問題が起こるかも。だからこれ以上ブログを更新する事はやめにします。何かあった時の為に全部残しておく事にしますので万が一の時はみなさんにお任せします」

この文章からは諦めのようなニュアンスが見えてこないだろうか?
呪縛から逃れることを諦め、他の人にこの呪縛を託したのだろうか?

この動画に登場するブログは今は消えているようだが、たまたまブログを見つけた「お任せされたみなさん」の内の1人が保存し、「フェイクドキュメンタリーQ」に提供したのかもしれない。その人物にも、女性の顔の幻覚は見えているのだろうか?
全て不明である。

その他気づいたこと

・プロフィール画像の物体は何なのか?アクセサリーだろうか。
キーホルダーのリングが見える気がするが・・・・(動画の1:19)
・バイト先のキーボードの「6」が外れている?バイト先の経済状況はあまり良くなさそうだ(動画の2:34)

まとめ

SNSが登場する前の個人ブログという「一昔前のインターネット」の雰囲気が感じられる回だと思いました。限られた情報の中で、不気味さ、不可解さが加速していく感じが印象的でした。当時の震災の感じをブログで述べているところが、個人的にはすごく現実的に思えました。
調べていて「OrangeRobinson」の文字列でエキサイトブログ公式ページが検索結果に出てきたときは、息を呑みました。