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わが街の伝統産業  広島県・三原市

第55回 広島県三原市 〜「三原やっさタコ」は代々世襲制で引き継がれてきた『タコつぼ』漁から産まれた特産品

 広島県中央部に位置する三原市。人口は約87,000人。瀬戸内海に面した『タコつぼ』漁で知られる港町で、兵庫県・明石と並ぶ瀬戸内海でも有数のタコの産地です。

 三原沖は瀬戸内海でも小さな島が多く、水温が年間を通じてあまり変わらず、水質がきれい。よって、タコが好むエビやカニといった餌も豊富で、タコが住み着くには絶好の場所として、江戸時代から三原市では『タコつぼ』漁が行われてきました。

 『タコつぼ』漁はタコの身体に傷がつきにくいので、きれいなままの状態でタコを水揚げしています。約100個のつぼをつけた全長1000メートルにもなる1本のロープを5~10本程度海中に沈めて、ブイといった目印はなく、船上から見て沈めたロープを引き上げています。このような作業は長年の勘と経験による熟練の成せる技です。

 三原市の『タコつぼ』漁は、江戸時代から代々世襲制で引き継がれており、漁場を大切に保ちながら、熟練の技を駆使し、禁漁を毎年3月とタコの産卵期である9~10月と定め、捕りすぎないようにタコと共存する漁を目指してやってきています。このこだわりが三原市のタコ文化が発展してきた大きな要因でしょう。

 三原市漁業協同組合は、中国地方を代表する夏祭りである「三原やっさ祭り」にちなみ、三原市のタコを『三原やっさタコ』と名付け、2013年(平成25年)に商標登録しブランド化を図ってきました。市内の小学校で児童が描いたタコのイラストをPR用のデザインとして採用。出荷用の箱に貼るシールに用いています。

 三原市のタコは足が短くて太いのが特徴。三原近海は瀬戸内海の中でも特に潮の流れが早いことから、タコの身は引き締まっており、歯ごたえ抜群で美味しいとの評判が高い特産品です。

 タコめしやタコ天、さらにはタコ刺しといったタコ料理を現地で楽しむことができます。三原市では、毎年8月8日を「タコの日」として定めて、タコ供養を行い、お寺でタコの好物でもあるサツマイモを供え、漁の関係者が参列して恩恵に感謝する日としています。

 最後に三原市にゆかりある人物について。戦国時代の中国地方の覇者・毛利元就。その三男が小早川隆景。12歳で竹原小早川家に養子に入り、19歳で沼田小早川家を継いだ隆景は、三原湾内に浮かぶ小さな島をつなぐ城を築き、満潮時には城が浮かんで見える「浮城」と呼ばれる三原城を築いています。隆景は1596年にこの地で逝去。隆景が築いた三原城の遺構は山陽新幹線「三原」駅の下に眠っており、駅のそばが隆景広場となっています。

  提供:伝統産業ドットコム

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