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掌編小説

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犬街ラジオなどで朗読したうちリクエストがあったものを中心にテキストを載せています。
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#11月

偉大なるクマの歩行録 序文

 春からもう何周もしているはずの海外文学の棚で「偉大なるクマの歩行録」という金文字に目が止まったのは、11月も半ばを過ぎて風が一気に冷たくなってきた頃だった。午後3時でも窓の外は薄暗くて、そのぶん蛍光灯がやけにしらしらと眠たい光を放っている。去年まで閲覧室をあたためていた古めかしい石油ストーブはエアコンに取って代わられて、酷かった夏の嵐を100倍に薄めたような、暖かな唸りのなかであなたは身震いをひとつした。  毛足の長い、深い緑色のベルベットで覆われていた。上部に「偉大なるク