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[奇談綴り]補足:実家で飼っていた犬たちの話

ポツポツと書き留めている「奇談綴り」という話には、実家で飼っていた犬たちと、その子どもが出てくる話がいくつかあります。
補足として、簡単な紹介と時系列を書き留めておくことにしました。

最初の犬

初代は「タロウ」という北海道犬になります。
私が生まれる直前に、祖父が「長男太郎だ」といってどこからかもらってきたそうです。
祖父は大変自由な人で、数多い友人や知人を把握するのは祖母でも難しく、血統書まであるその犬をどこからもらってきたのかは最後まで言わなかったし、分からなかったそうです。北海道犬についてはソフトバンクのお父さん犬、といえば分かりやすいでしょうか。あれは白ですが基本は赤毛で、タロウも赤毛でした。
北海道犬は元がアイヌの熊狩りの犬で「ワンオーナードッグ」という特性があります。基本的に飼い主の言うことしか聞かないし、そのうえで飼い犬としての訓練が必要でした。
自由人の祖父がそんな事をしているわけもなく、祖父が早逝した後は父母がかなり苦労して飼っていました。
幼児だった私が「タロウの鼻をガッツリ噛んでマウントをかます」という事件の後、私さえいればそれなりに言うことを聞くようになったので、散歩に私を同行させることでコントロールしていたようです。
何度か背に乗せたりソリを引いてくれたりしたのですが、中型犬にはキツイ要求でしたね…鼻を噛まれた恐怖から私の希望に沿ってくれたようなのですが。
ごめんよタロウ。

二代目はおしかけワンコ

タロウが亡くなって数年。
二代目として飼うことになった犬は、元野良のMIX犬でした。
外見はウェルシュ・コーギー・ペンブロークとポメラニアンを足して2で割って、コーギー要素を強めにした感じ。
座敷に上がりたがった事とゴージャスな外見とを考え合わせた結果、どこか裕福な家でうっかり繁殖してしまい、ある程度まで飼われていたものが遺棄されたのではないか、と予想されました。

最初の出会いは小学校で、グラウンドで体育をしている時に同級生が見つけ、全員でなんとなく構っただけ、というものでした。
その後、朝と昼に校門に待機して小学生から余ったパンなどをもらう姿が見られるようになりました。
登校時間と昼休みが終わるとスッと消えるので、学校でも対応に困っていたようです。

半年ほどそうやって過ごし、やがて冬休みになりました。
用事があって学校の前を通りかかると、なんと犬が座り込んでいつものように子どもたちを待っています。
思わず「どうした? 冬休みだから人は来ないよ?」と声をかけると、うれしそうに近寄ってきました。
用事はその日でなくてもいいものだったので、よし、今日は犬と遊ぼう!ということになり、真冬のグラウンドで転げ回って遊びました。
もしや毎日居るのでは、と思い当たって翌日も同じ時間に学校に行くと、やっぱり校門で待っています。
それから毎日1~2時間ほど遊び、「また明日ね」というとスッとどこかへ帰っていくという繰り返しでした。少なくとも正面から着いてくることはありません。

それがそのうち、家に迎えに来るようになりました。
朝、一定の時間に玄関までやってきて、ドアを前足で叩くのです。何事かと思って玄関に行き、すりガラスの向こうで器用にドアを叩いている犬の姿を見た時の驚きと言ったら!
驚きはしたけれど子どもなので、なるほどかしこいな!と一緒に遊びに出掛けます。
この間、餌で釣ったことは一度もありません。ただ一緒に遊び、またね、と言って別れるという毎日でした。
犬が迎えに来るようになって半年近く。
気味悪がっていた両親が根負けして、犬は晴れて家で飼うことになりました。

玄関に捨てられた仔犬

二代目は犬を疑うほど賢く、気をつけていても人間かよ!というスキルで首輪抜けをして遊びにでかけていたのですが、それが裏目に出ました。保健所に野犬として捕獲されたのです。
祖母がそれを見ていたのですが、もともと頭が良すぎて気味悪い犬だと思っており、戻ってこないことを願ってワザと伏せていました。
かわいがっている孫である私が毎日深夜まで犬を探しに出ることに根負けして、間に合うギリギリで教えてくれて助けることができたのですが、あまりの恐怖に性格が変わってしまっており、その影は一生とれませんでした。
一年ほどでだいぶ戻りはしましたが。

その二代目が家に戻ってまもなく。
玄関から仔犬の声がするので見に行くと、すりガラスの向こうにプルプル震える灰色の仔犬が見えます。
慌ててドアを開けると、なんと荒縄で玄関脇にくくられています。
とりあえず玄関にいれて、寝床としてダンボールを置き、子犬用のフードがないので牛乳を与えるとすごい勢いで飲みます。
泥まみれで垂れた耳の先が血で固まっており、仔犬なのに肋骨が浮いています。

完全に捨て犬ですが、父母にも私にも思い当たることがありません。
しかし騒ぎを聞いて見に来た祖母が「そういえば」と言います。

二代目が保健所に囚われている間のこと。
祖母が知人との茶飲み話で「孫が保健所に連れて行かれた犬を毎日探して難儀している。もう間に合うかわからないし、新しい犬でも探したほうがいいだろうか。」という、今考えるとかなりひどい話をしたそうです。
ただの愚痴だったのに相手が「それならうちにいい犬がいる」と言い始めたので、祖母はしっかり断ったつもりだったそうです。
「もしかして」と慌てて連絡を取ると、やはりその知人が早朝に連れてきて、姿形がみすぼらしいので断られないようにこっそり繋いで帰ったのだとか。

その知人がそんな暴挙に出たのには事情がありました。
そのお宅では、真っ白くて長めの毛と真っ黒な瞳、真っ黒な鼻をもつ、MIXではあるものの日本スピッツにそっくりな犬を飼っているそうです。
それが仔犬を産んだのですが、一匹だけ母犬の毛並みを受け継がなかった仔犬が居ました。
毛並みが違うだけなら問題なかったのですが、母犬ときょうだい犬が、なぜかその仔犬だけをいじめるのだそうです。
食事を邪魔して食べさせない、噛んで威嚇して側に近寄らせない、集団で一匹に襲いかかる。
飼い主の方もがんばって保護はしたようなのですが、完全に生活空間を分けることもできず、このままだと死なせてしまうという恐怖感からこれ幸いと押し付けることにしたんだそうです。
それにしたって何も言わないで繋いで行くなんて、と祖母が抗議すると「戻されたら死んでしまう。お願いだから引き取ってくれ」と言われたそうです。

話の真偽が気になる所ですが、泥にまみれてやせ細り、耳の縁をボロ雑巾のようにしてプルプル震えている姿を見ては戻すわけには行きませんでした。
仕方がないので二代目の小屋へ連れていき、この仔をお願いするよというと、なんと拒否する素振りも見せずに鷹揚に毛づくろいをはじめました。
仔犬の状態があまりにもひどいので父母も返してこいとは言わず、そのまま正式にウチの犬になりました。

三代目の耳は切り裂かれた部分が元に戻らず、拾い食いも止みませんでした。
それでも栄養が行き渡ると驚くほどピカピカの美しい毛並みの犬に育ち、色々やらかしつつも健康に20年ほど生きました。

と、いうわけで、以上がうちの犬どもの紹介になります。
おじいさんと不思議な縁があったのはこの三代目の産んだ息子犬になります。
二代目の賢さもすごかったですが、三代目の運の良さというか「持ってる」感じも相当すごかったです。

◆二代目ワンコのエピソード

◆三代目ワンコのエピソード


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