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僕が路面電車の運転士になるまで②


鉄道電気工事会社に入った

 内定を貰った時にかけていただいた担任の言葉を忘れ、なんとか無事に単位を揃えて卒業した後の
4月、僕は新卒で入った会社で10人の同期たちと共に関東の某県にある研修施設へ1年間の研修を言い渡される。
ここでは業務に必要な資格の取得の勉強や技能講習の受講して以下の資格を取得させてもらった

  • 玉掛け作業者

  • 小型移動クレーン

  • 高所作業車

  • 3級陸上特殊無線技師

  • 第一種電気工事士

ここで取得した資格たちはこの会社では当たり前に使うものばかりだったが、転職後も思わぬ所で役に立つとはこの時点の僕は知る由もないのである。
また、鉄道工事における基本的なルールや機器や工具の扱い方、メンテナンスの仕方についても1から教わった。
研修所では基礎講習が修了後に専門のクラスに分かれて講習が続くのだが、そこで僕は信号通信クラスに割り振られた。
僕の鉄道業界でのキャリアが信通屋から始まった瞬間だった。

鉄道信号ってなんだ?から始まる

 クラスでは鉄道信号の基礎から教わった。
それまでは鉄道信号というと赤青黄の信号機くらいしか思いつかなかったが、信号機だけでなく踏切設備や駅の連動装置、様々な緊急防護装置、鉄道電話、無線設備なども扱う。
総称して「信号保安設備」と言い、その保守に携わる人たちを「信通(しんつう)」「信通さん」などと呼ぶ。信通とは「信」の略語でおそらく鉄道関係以外では使われていない言葉だと思う。

信号保安設備は複雑な論理回路(リレー回路)や電子機器によって構成され、車両の在線状況やスイッチ操作により動作する。
信号保安設備の自動化は元々全て人の手で行われていたものを合理化・省力化するためのものでもあるが、それ以上に求められる重要な役割が
「絶対に間違えない事」だ。

機械は間違えない...?


 鉄道が発明されてからこれまで、国内外問わず様々な鉄道事故が発生し多くの人命が犠牲になっている。要因は様々だが、中には人為的なミスがきっかけのものが少なくない。
信号保安設備の自動化は、人間の注意力による作業を極力排除し、万が一人が操作ミスを犯しても安全な方へ動作する事を目指している。
例えば、操作ミスにより列車が在線しているホームへ他の列車を入線させようとしても進行信号が出ることはないし、機械の故障により正しい動作が行えない場合は停止信号から変わる事はないといった感じだ。
このような設計思想を「フェールセーフ」と呼び、鉄道の世界では基本的に全てこの思想が根底にあると言っても過言ではない。
鉄道は「とりあえず全て止めてしまえば安全」だからである。

ただ、「機械は間違えない」と言ってもそれは「正しい知識を持った人間が、正しい操作や保守を行った場合」であり信号保安設備が原因の事故がないわけでない。
信号について知る事と同じくらい「正しい作業をする事」もまた大事なことであり、それを学ぶのがこのクラスでの研修の意義だった。

続く…


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