アンビル星人の「東京おもちゃショー2024」レポート~今年のおもちゃショーを象徴するのは“キダルト”!?
取材・文●アンビル星人(安蒜利明)
従来ゴールデンウィーク後の初夏に開催されてきた「東京おもちゃショー」ですが、今年は夏休みラストの8月29日から9月1日に開催されています。
「東京おもちゃショー」を主催する日本玩具協会内では昔から“一般公開”が議論されてきました。それは当初の主な目的が“商談会”だったことと一部の大手メーカーとは異なり、協会の大多数である中小メーカーがこのイベントでのPRに効果を感じにくいなどの理由によるもので、一般公開を中止した時期もありました(横浜で代替えイベントを開催)。しかし最も集客が見込める8月末に変更されたのは、メーカー側の発信力が問われる現在を見据えて協会が一丸になった現れかも知れません。また商談会としては例年、東京玩具人形共同組合が2月に「春のおもちゃ商談会2024」、9月に「クリスマスおもちゃ見本市2023」を開催(どちらも一般非公開)してきましたが、今年は4月に開催した「夏~クリスマス おもちゃビジネスフェア2024」の1回に集約した様で、見本市の整理集約も目的の一つかもしれません。
外野の推測混じりのウンチクはこの辺にして、今回のおもちゃショーを俯瞰してみたいと思います。電撃ホビーウェブは現在仮住まいですし、Webは速報性が大事なので今年はかなりザックリとした内容なのをご容赦ください。肝心なものを見落としている可能性もあるので、詳細はここ「東京おもちゃショー2024速報レポート(まとめ)」をご覧ください。
男の子向けキャラクター玩具はトピックス少なめの印象?
まずは男の子向けから。キャラクター玩具はバンダイ/BANDAI SPIRITSのトップが例年通り「仮面ライダー」と「スーパー戦隊シリーズ」で抜群の安定感ですが、
特筆すべきは新製品「DX ROBO UNIVERSE」シリーズによるスーパー戦隊ロボの融合だと思います。スーパー戦隊シリーズの三世代化、ネットなどの常時配信で過去作品が“風化”しなくなり、それをウマく生かした製品でしょう。
機会があれば一般玩具の俯瞰でも詳しく書きたいと思いますが、今回のおもちゃショーで気になった「ブロック玩具要素」がホンノリ加わっているところも注目です。
バンダイさんのブースに限らず「怪獣」の代表、ゴジラシリーズの存在感がさらに増しているのが印象的でした。ゴジラ・ミレニアムシリーズの終了以来、海外製品の“逆輸入”こそありましたが(ハイエイジ向けも一旦置いといて)、国内製品はソフビシリーズなど地味な時期が続きました。しかし近年の『ウルトラマンシリーズ』の好調で子供達の「怪獣」への認識が上がり、昨年の『ゴジラ-1.0』を受けて怪獣の王である「ゴジラ」が完全に定着したようで男の子向けの製品がかなり増えています。展示されていた「ムービーモンスターシリーズ」も壮観でした。
夏休みのはじめ、知り合いの小学1年生男子が「ゴジラ映画はどれから観たらいいか解らない」と言うのでオススメリストを作ってあげたら、なぜかオススメに反して『VSビオランテ』を観やがってドはまり。夏休みの自由研究に紙粘土で「ビオランテ(最終形態)」を作り上げてビックリしました(笑)。
男の子の定番、スポーツ(ホビー)玩具は大手各社が競っていて、昨年はタカラトミーさんが復活の「ベイブレード」を大きく展開しましたが、今年はバンダイさんのターン(?)でハイパーヨーヨーシリーズの新製品「ハイパーヨーヨーアクセル」を展開。コーナー前でたまたまお会いしたおもちゃ界のレジェンド本郷武一さんも試遊したそうですが「オレでもスゴい技ができるんだよ」と嬉しそうに教えてくれました。
その他男の子向けで気になった製品がちょっと見当たらず、全体的に少し物足りない印象でした。特にタカラトミーさんは既に展開中の「トランスフォーマーレガシー」と公開待ちの『トランスフォーマーONE』以外は追加アイテム中心で、その分ハイエイジトイに注力している印象でした。
毎年どこかのメーカーが新製品を投入する電動走行アクション玩具ですが、こちらも今年はジョーゼン インターナショナルの「ランドバスターアンリミテッド」が目立つ程度でした。
とはいえ、電ホビ読者にとってもトピックスだったのは『魔神英雄伝ワタル』の流れをくむ新番組『魔神創造伝ワタル』の発表ではないでしょうか(詳しくは、こちら「【東京おもちゃショー2024速報レポート】バンダイ/BANDAI SPIRITS③」と、こちら「TVアニメ『魔神創造伝ワタル』が2025年1月よりテレ東系列6局ネットにて放送決定!新ビジュアルや新PV、キャラクター&魔神、プラモデルなど最新情報公開!」を)。
1988年版はタカラさん提供で、バンダイ側からその人気ぶりを眺めていました。もちろん「SD」というフォーマットは自分も編集長をしていた「模型情報」生まれのガシャポン育ちですが、玩具としては『ワタル』がメカSD玩具ブームの先駆者であり、「武者ガンダム」がガシャポンから玩具展開されアニメ化に向かう源流なので、今回バンダイさんからの新作発表には隔世の感があります。
女の子向けキャラクター玩具は岐路なのかも?
『ちいかわ』が席巻する女の子市場ですが、伝統的な“なりきり玩具”は『わんだふるぷりきゅあ!』の「ダイヤモンドリボンキャッスル(バンダイ)」と『ひみつのアイプリ』の「ハートPod&アイプリマイク(タカラトミー)」が頑張っているくらいで、他には目立った展開がみられませんでした。
そんななか(詳しい皆さんには既知だと思うのですが)少し驚いたのは『アイカツ!』がその舞台をYouTubeに移していたことと、(株)リリックが韓国で人気の『キラキラ キャッチ!ティニピン』を展開していたこと。ディズニーのプリンセスシリーズなど作品の方向性が異なる米国女の子向けキャラクターの日本展開は珍しいことではありませんが、日本発祥のフォーマットに準じたと思われる海外作品がバンダイさん、タカラトミーさん以外で展開されるのに驚いたのは自分だけではないでしょう。
キャラクター以外の女の子玩具はホビー玩具も含めほぼ“疑似大人体験”のおもちゃで、いずれも「日本おもちゃ大賞」のベーシック部門とデジタル部門、バラエティ部門で大賞を受賞した「シールランドリーナ ちいかわ(メガハウス)」「ちいかわフォン(バンダイ)」「#バズゅCamむてきパープル/ときめきミント(セガ フェイブ)」がそれを象徴しています。「#バズゅCam」のキャッチコピー「~インフルエンサーごっこが楽しめます!」にはオジサンちょっとついていけません(笑)。それにしても『ちいかわ』はスゴいですね。
その他、コロナ禍で定着した女の子向けホビー玩具は今年も各社新製品を投入、数社でお話を聞きましたがコロナ後も落ちることなく安定しているようです。各社その流れをキャッチアップすべく新製品を投入。その一例が写真上:クッキンビーズ(バンダイ)、下:くるくるあむるん(タカラトミー)ですが各メーカーのアイデア合戦が面白いジャンルです。
公式に使われ始めた“キダルト”が女の子玩具のキーワードに
今年の「東京おもちゃショー」を象徴するのは女の子玩具だと感じています。その象徴はセガ フェイブさんの「ぷにジェル サンリオキャラクターズ 推し活ぷに」と、昔からおもちゃショーのヒロインとも言うべき「リカちゃんシリーズ」です。
「ぷにジェル サンリオキャラクターズ 推し活ぷに」は写真の通り一見女児向けホビー玩具ですが、キダルト(Kids+Adult)部門にエントリーされ「優秀賞」を受賞しています。女の子が純玩具で遊ばなくなり、一方成人女性達がキャラクターや玩具から卒業しなくなる。女の子玩具はある意味混沌としたジャンルになりつつあることが読み取れます。
そんな混沌をどうビジネスに取り込むか模索を続けているのが「リカちゃんシリーズ」でしょう。
「リカちゃん」が球体関節を取り込んだのは、個人的にも大ニュースだと思いましたが(TVでも報道されるほどとは思いませんでした…笑)、リカちゃん本体が成人女性向けにアレンジされるのは既に平成の昔から多々ありました(過去は衣装だけですが)。自分が一番驚いたのは女性に人気のインテリアブランドFrancfrancとコラボしたリカちゃんシリーズの「ハウス」新製品です。ガチャなどの他社コレクション玩具であれば大人向けインテリアのミニチュアは今や定番ではありますが、とうとう「リカちゃん」シリーズが本格的に成人向けに舵を切った事は必然とは言え驚きました。今後の展開に注目です。
そんななか、海外需要と成人女性、そして本来の女の子をバランス良く取り込み、安定した人気で我が道を行くのはエポックさんの「シルバニア」ではないかと思います。そんな自信の表れか今年のブースは招待者・事前登録だけのクローズでしたが、お願いして拝見しました。昨年も書いた通りコロナ中にブレイクしたシルバニア「赤ちゃんコレクション」が引き続き好調で、今年は下写真のブラインド商品「 -赤ちゃんお花畑のお友達シリーズ-」もその人気を牽引しているそうです。大型商品「シルバニアファミリー お空のゆめいろフェアリーキャッスル」も「日本おもちゃ大賞」の優秀賞を受賞しています。
事前登録なしにも関わらずご案内頂いた広報さんに感謝の意を込めて、広報さんオススメの「スーパーマリオ 手さぐり ハテナブロック パーティー」もご紹介(笑)。
この週末に足を運ぼうと思っている電ホビ読者の指標になればと思い書き始めましたが、ここでタイムリミットが来てしまいました。
タカラトミーさんのハイエイジトイ全般はもちろん、今回一番「なるほど!」と思ったバンダイさんの女性向けハイエイジトイの展示についてや、知育系で期待大の商品についても書きたかったのですが、編集部から「まあ事後でも良いから続きを書いて」って言われたら書きますので、期待せずお待ちください!
なお個人的に期待しているのはこの二つ。
●アンビル星人 プロフィール
バンダイを経て、元電撃ホビーマガジン編集長 (2009~2013)。「東京おもちゃショー」は、1985年のバンダイ入社以来、ほぼ皆勤賞。“敬語キャラ”なので少し鬱陶しい文体はご容赦を。
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