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中山功太(OKOWA 2020 FINAL)

「怖いだけが怪談じゃない」の全く新しい形を見せて頂きました。
準決勝はとにかく悲しくて、涙が止まりませんでした。
人目を憚らずあれだけ泣いたのは高校生以来です。

功太さんの、重さを感じる擬音表現が本当に素晴らしいです。
階段を下りるトントントントン。
お皿を置くコトン。
「小さい」ではなく、ふわっと浮き上がるような軽さを感じて、上質な音楽のようだとも感じました。

登場人物の性別ごと声のトーンを変えることなく終始功太さんの声なのに、ちゃんと女性が話しているように聞こえる、息継ぎの呼吸音と唇が少しだけ震える、口の端を歪めてニヤッと笑うような表情、残酷だけど小気味良い言葉、そういった細やかな技術から紡がれる、怖談の端々から聞こえてくるのは慟哭でした。
何とも言葉にできない怖さが確実にありました。

功太さん自身が本当に泣いてしまうんではないかと言うほどの人物の描写は、お芝居とも落語とも違う、FINALという場で、功太さんの技術と思いが昇華した形であると思います。

功太さんが最強の2代目王者として君臨していたことが、TOKYO6 からファイナル決勝までの上里さんを引き出したのだと思います。

どうして功太さんの怖談はあんなに悲しくて、涙がでたのか、その理由が喪失の痛みと悲しみだとやっと分かりました。
親、きょうだい、友人知人。
誰にも必ず訪れて、避けることのできないそれに恐怖し畏れるのだと思います。
無敗の最強王者が初めて膝を折りOKOWAを去る姿は、最後まで鮮烈でした。

初代王者三木上人は、生きること辛く厳しいけれど、それ以上に素晴らしいことを。
2代目王者の功太さんは、それでも襲ってくる喪失の痛みと悲しみを語られました。
そして3代目の上里さんからは自分の意思を貫き通す折れない心、不屈の闘志を感じました。
歴代王者の偉大さは、まさにOKOWAの象徴であると思います。

強く、誇り高い二代目王者には、最後の最後まで魅せられました。
本当にありがとうございました。

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