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【NYM】進撃のゾンビ・メッツ

 ご無沙汰しております。前回のNoteを書いた時期と比べてみると、Metsのベンチには随分と違った顔ぶれが並んでいます(ヘッダー画像はこのツイートから)。26人中13人(野手に至っては13人中9人)がこれまで故障で離脱というまさに野戦病院状態です(一部直近数試合で復帰した選手もあり)。しかし、この瀕死の状態でも貯金を維持し、まさにリビングデッドのごとくナ・リーグ東地区の首位に君臨しています。↓はナ東の順位表(2021/05/28時点)。

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 一試合あたりの平均得点が3.4を下回るチームの好調を支えるのは投手力と守備力です。

投手陣―常に不完全であることを運命づけられた―

 抜群の制球と猫のような瞬発力を生かした守備力で決して試合を壊さないMarcus Stromanや、今シーズンはセーブがつく場面で一度も失点していない鉄壁の守護神Edwin Diaz、そしてなんと言ってもお忍びのリハビリ登板でSingle-Aの選手を震え上がらせたJacob deGrom防御率は依然0点台)といった投手陣の働きは各選手の成績を一瞥すれば明らかでしょう。これに週末の復帰が予期されるTaijuan Walkerや、故障中のCarlos CarrascoNoah Syndergaardが加われば最強のHard-throwing teamの完成だ!と期待が高まるとことですが、そう思ったようには行かないことは数年でもMetsを応援していれば明らかなことです。5月中旬に予定されていたCarrascoの復帰は少なくとも一月程度は遅れる見込みであるし、Syndergaardも6週間の投球停止が決まり復帰は早くとも8月になるとのこと。月末にはSeth Lugoの復帰が報道されていますが、なんとか無事に事が進んでほしいものです…

絶え間なく続くInjury reportsに対するあるファンのツイートがこちら↓。

 思い返すのは2015年、Metsが最後にワールドシリーズに出場した年。この年もJacob deGromMatt Harveyを始め脇を固めるBartolo Colon(最近メキシカンリーグで生存確認)にJohn Nieseと好調の投手陣の影で期待の若手Zack Wheelerを欠き、守護神候補Bobby Parnellは結局復帰せず、Blake Snellと並んで左腕トッププロスペクトであったSteven Matzは投げるたびにどこかしらの痛みを訴えるという故障離脱に溢れたシーズンでした(MatzはBlue Jaysで楽しくやっているらしく嬉しい。突然人が変わったように初回に打ち込まれる試合が続きベンチでストレス発散する姿も相変わらず)。続く2016年もWheelerは全休、そして離脱したdeGrom、これまた投げるたびに離脱するMatz、大幅に球速が低下したHarveyに変わってワイルドカードを争うチームを支えたのはSeth LugoRobert Gsellmanといった好調のルーキーたちだったのです。今後もMets投手陣全員が万全の状態で揃うことは期待しないほうがいいでしょう。世の中にはそのように生まれたチームも存在するのですよ。

野手陣ー抑え、抑えられる男たちー

 データを駆使した守備については過去の記事で再三触れてきましたが、ある程度の試合数を消化し、暫定の評価を行えるようになってきました。2021年のMetsは、極端なシフトを敷く割合がDodgersに僅差の2位である55.5%(2020年は21.4%)となっています。このシフト戦略はこれまで功を奏しており、シフトを行うことによって防いだ点数は11点と見込まれています(DRS基準)。好守のJeff McNeilLuis Guillormeのみならず、今年はPete Alonsoも守備でプラスを生んでいます(彼らは全員ゾンビランドサーガの一編を担う選手である。6月に復帰予定)。

 最大の貢献はFrancisco Lindorでしょう。彼にとってセンターへ抜ける当たりを放った相手打者に天を仰がせることは日課であり、日替わりの二・三塁手を鼓舞している姿はまさに内野陣の柱です。Jose Perazaもプラスの守備防御点を叩き出しています(彼らは貴重な健康ランドの人材。皆さんは奈良健康ランドを知っていますか?)。昨年までの課題であった捕手はJames McCannTomas Nidoともにプラスの守備指標(捕手は唯一の故障離脱がないポジションであり、近頃Metsは二人の捕手を同時に試合に出すことでゲームの緊張感を高める方法を思いついた:故障のAlonsoの替わりに一塁手McCann)。

 そして今年素晴らしいのは意外にも実はDom Smithであり、彼はDRSにして+3というMets外野陣の中で最高の数値を叩き出しています(彼もまた、故障からの復帰が待たれる一人)。彗星のように現れ、故障者リストに吸い込まれていった13年ドラフト11巡目の苦労人スピードスターJohneshwy Fargasもまた俊足を生かした素晴らしいディフェンダー。さらに、守備での課題を指摘されていたBrandon NimmoはDRSで+1(レフト)、スピードの衰えを指摘されていたKevin PillarもセンターでUZR+0.9、Albert Almoraも+0.4と皆が守備で正の貢献をしているのです(注:この一文に登場する3選手はすべて故障中である)。全員故障しているではないか? いえいえ、大丈夫です。トレードで緊急加入したBilly McKinneyは今年はフライボールへの嗅覚が冴えてすでにDRS+3。守備陣はこれからも変わらず(選手名は日替わりだが)投手陣を支える働きをしてくれるでしょう。

 困ったのは自軍の投手陣だけではなく、敵軍の投手陣をも支えてしまうこと。上述の通り試合当たり3.4点も入れておらず、今週のRockiesの先発投手はMetsが相手と知ってさぞ嬉しかったでしょう(しかし、旧友Harveyは無慈悲にも打ち砕いた)。

まとめ

 皮肉を散りばめつつも上機嫌で作文ができるのは何はともあれ五分五分以上には勝っているからです。BravesやPhilliesあたりが足踏みしている間になんとかゾンビパワーで(あとはおそらく半数は予期した日程通りに復帰する野手陣による攻撃力アップで)頭一つ抜けてもらいたいものです。

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