映画を観た記録159 2024年8月25日    ラオール・ウォルシュ『死の谷』

Amazon Prime Videoでラオール・ウォルシュ『死の谷』を観る。
原題は『Colorado Territory』である。
Coloradoとは、ジョエル・マクリー演ずる脱獄犯の恋人の名前である。
出番は、Colorado(コロラド) を演ずるヴァージニヨ・メイヨ演ずる女優より、ウェス・マックイーン演を演ずるジョエル・マクリーのほうが多い。
本作の特徴は、一つ一つのカットが短めであるということと、ディゾルブで編集をつなげていくということであることと、スター映画なので、ジョエル・マクリーやヴァージニヨ・メイヨが出演しているカットは、短いとはいえ、長めである。他に長めは馬が出演するカットである。西部劇は主人公、馬、脇役の序列である。
スター映画なので、スターを中心にドラマや演出が組み立てられてある。ジョエル・マクリー演ずるウェスは脱獄犯なので、過去にも何度か強盗をしている凶悪犯なのだが、そこはスター映画なので、人格は良い人になっており、その人格にヴァージニヨ・メイヨ演ずるコロラドが魅かれていくという話である。
結局は、この2人は追ってきた保安官に殺されてしまい、お互いの手をさわり、死ぬのである。
手の演出はゴダールがよくやるが、ウォルシュに参照すべき演出があったということである。60年代アメリカン・ニューシネマより先に男女の逃避行で、最後は死ぬという物語はすでにウォルシュがやっていて、アメリカン・ニュー・シネマの特権でもない。
本作は1949年製作、だが、その前にニコラス・レイが1948年に『夜の人々』として男女の逃避行、そして死ぬ物語を発表している。アメリカン・ニューシネマとの違いは、この両作品はヒロイックに描いていないということだ。アメリカン・ニューシネマはむしろヒロイックに描いてしまい、それはむしろ、ニューではなくオールド、映画の退行なのである。
繰り返して述べるが、1つ1つのカットが短い、ということは、俳優のボロがでないということなのであるし、客も展開が早いので、退屈はしないのである。
映画の古典期の模範のような作品である。

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