映画を観た記録40 2024年2月11日   アキ・カウリスマキ『希望のかなた』

Amazon Prime Videoでアキ・カウリスマキ『希望のかなた』を観る。

僕が今まで観たカウリスマキ映画で最高傑作かもしれない。

物語が重層的であり、カウリスマキ映画に特徴的なロック音楽も使われている。レストランの壁にはジミ・ヘンドリックスのポスターが貼られている。自動車もカウリスマキ映画のアイテムの一つである。

物語はシリアから追われ、はるばるフィンランドへ流れるようにやってきたカーリドとレストラン・オーナーのヴィクストロムの邂逅の物語である。カーリドは離れてしまった妹のことが心配である。カーリドは、友人のイラク難民の手を借りて、妹がリトアニアにいることをつきとめ、ヴィクストロムの手を借りて妹をフィンランドへ呼び寄せることができたのである。

アキ・カウリスマキ『希望のかなた』は、21世紀最大最悪の内戦であるシリア内戦を題材にしているというだけで重要な作品だと私は見ている。
主人公カリームは、ある日、家が破壊されているのを買物から帰ってきてショックを受ける「政府軍なのか、ロシアなのか、ヒズボラなのか、ISなのか。」と語る。
このセリフだけで、シリア内戦の最悪さがわかる。

フィンランドへ流れ流れて到着したシリア内戦から逃亡してきたカリードは入管施設でイラク難民と、すぐ会話ができる。アラブ語は中東の共通語だとわかるシーンだ。

アキ・カウリスマキ『希望のかなた』の主人公カリームはフィンランド当局へ難民申請していた、結果は、フィンランド外務省はシリアのアレッポでは戦闘が行われておらず、安全であり、難民申請を却下するという結果である。その結果、カリードは後ろ手に手錠をかけられ、収容施設へ送り込まれてしまう。
そして、テレビのニュースでシリアのアレッポの小児病院を政府軍が空爆するシーンが映し出される。
辛辣な編集である。

カリードもそのイラク難民も、フィンランド語は理解できないので、英語でフィンランド人とコミュニケーションをとる。

アキ・カウリスマキが単なるシネフィルではなく、現在の問題を受け止めることができる我々と同じ人間であることを『希望のかなた』で理解できる。

相変わらずのけだるいフィンランド語のロックが流れる。

夜がやけに暗い映画である。

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