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「Addictions」について


 EvilgloomのボーカルのDemiです。
 1stフルアルバム「Addictions」のライナーノーツのために大学の卒論ぶりに長文を書きます。MOROHAを聴いてバイブスが高まりに高まっている状態で書くので乱文ですが、最後までお付き合いいただけたら幸いです。

下のリンクから各種プラットフォームで楽曲が聴けますのでぜひ聴きながら読んでみてください。

1.Gnarly
 まずアルバムの一曲目の「Gnarly」から、
単語の意味としては、ねじ曲がったとか節くれ立ったという意味とイカしてるみたいな意味があります。

ハードコアのイベントに参加した際に、メンバーから「HCみたいにわかりやすくて(褒め言葉として)頭が悪い曲良いよね」という意見が出て、コンポーザーからHCリスペクトのイカしているトラックがあがってきたので、それを受けて歌詞の内容もHCスピリッツリスペクト系で作りました。


 内容としては、最近盛り上がりを見せているHCシーンに比べて、国内のメタルコアシーンはいまいち盛り上がっていないなと思っていたのと、(僕自身がメタルコアという音楽に対して明るくないということもあるのですが、)現行の国内メタルコアの新曲をチェックしていて、どれも同じように聞こえてしまっていて「お前らのNew shit本当のShitじゃーん」と感じていたのでこの2つを軸にしています。

 ポーザー(格好だけで中身が伴っていない人たちのこと)の言う「上に上がるんだ!」とか「〜がしたい」「〜に立ちたい」的な大量生産妄言はもういいからまずは、やることやってからそう言う言葉吐けよって感じです。お前らがかっこいいと思ってるものとか感じてるものを疑うとこから始めたら?って感じです。

 アルバムの一曲目にしては攻撃的な内容ですが、この曲以降で理解らせるための大見栄という位置付けとするなら一曲目に相応しいんじゃないかなと思います。


2.Anathema
 タイトルの意味は「呪い」です。
「AKUDAMA」っぽい語感で4文字のタイトルが付けたかったのと、曲が全体的にデバフ効果のありそうな雰囲気だったのでこのタイトルにしました。

 内容的には、他人のことはどうでもいいから自分たちは自分たちでっていう意志が込められています。
MCバトルやHIPHOPの曲の中で自分の事を大きく見せるために大口を叩いている人がまあまあいるんですが、そのバイブスで書きました。キングの座は俺のもんだ的な感じです。この曲を書いている時にMCバトルの動画を見漁っていたのでその影響を大きく受けて、ずっとお前より俺の方がすごい的なことを並べています。

あと小ネタとして、某Sixtonesの曲や某Mustardの曲、前作「Keter」の曲などからサンプリングしているラインがあります。


3.Malignant
 MVにするぐらい思い入れが強い曲で、リスペクトしている某Crystal Lakeの元ボーカルの脱退とそれを受けてのリスナーの反応を見ていて感じたことを歌詞にしています。


 その当時、いつか同じステージに立つことをキャリアのゴールの一つにしていた自分としては、とてもショッキングなニュースであり、それを受けてやるせなさと悲しさで感情がぐちゃぐちゃになっていました。
SNS等でも同じ思いのリスナーが国内外問わず大勢いて、胸に穴が空いた気分とはこのことかと実感しました。
 しかし数週間経つとあの時嘆き悲しんでいた人たちは何事もなかったかのように「〜の新譜めっちゃいい!」と言った具合にケロッとしていたことに驚きました。たしかに彼らの人生から見たら、1つのバンドの1つの時代が終わっただけなんだろうな、こうやって悲しみを忘れていくんだろうな、人間って強いなと思いました。まだその感情を忘れられない自分は彼の復活を強く望む気持ちをこの曲に込めました。無事にカムバックしてくれたのでめでたしめでたしですね。

 曲中に彼をリスペクトして寄せた歌い回しをしているところもあるのでそこもポイントとして探してみてください。

4.Buster Call
 曲名は漫画のONE PIECEより引用しています。
デモの段階でイントロの電子音がレトロシューティングゲームっぽいなと思ったので、シューティングゲーム→戦闘機→戦争→頂上決戦→バスターコールと言った具合の連想ゲームでこのタイトルにしました。

後付けではあるんですが、Bustにはラップをするという意味もあるのでこの曲からよりHIPHOP色が強くなったというところも相まって気に入っているタイトルです。
 内容としては、戦争というところから宣戦布告をイメージに過去を全部背負って全部蹴散らすからよく見とけっていう感じです。また、小ネタとしては某呂布カルマのパンチラインや、某RAPGODの曲などからサンプリングしています。theサビって感じのパートがある曲を久しぶりに作ったので個人的に結構好きな曲です。


5.(Lithium)
 このタイトルはまんまNirvanaのLithium からです。
 個人な話で、今年26才になるんですが、Nirvanaのボーカルのカートコバーンが亡くなったのが27才の時でそろそろ27CLUBに入れるかどうかの時期やなぁという所とバンドにハマるきっかけの一つの要因としてNirvanaの存在が大きかったというところが合致してこのタイトルにしました。

 聞いていて分かるかもしれないんですが、Lithiumやsmells like teen spiritの歌詞を引用しているラインやバースの中でその他の曲名やNirvanaのライブDVDの名前を使っているところがあります。

 曲の内容については、多くは語りませんがNirvanaの作品から拾ってきたものを上手くストーリーとして繋がるようにしています。自分なりのカートコバーンの思いや自死に至るまでの過程を想像して個人的な解釈を書きました。


6.INTERLVDE
 前作「Keter」の「092」と同様にアルバムを作るなら構成としてバンドサウンドの曲オンリーではなく一曲はビートとラップだけの曲がやりたいという僕のワガママによりできた曲です。あとこのアルバムでEvilgloomを知ったという人たちを「INTERLVDE(間奏)なのにめちゃくちゃ本気ですやーん」って驚かせたいなという意図もありこのタイトルになりました。

 この曲のフックにある「092 to the +81」というラインについて、「092」は福岡の市外局番で、「+81」は国際電話識別番号で日本を表す番号のことです。福岡という地方都市から日本をRepしてやるぞという意気込みと、それすら超えて世界へ出るぞという気持ちを込めています。

 また、世界的に見ると日本の音楽シーンはガラパゴス化している印象を受けていて、Billboardチャートのほとんどが白人や黒人の音楽で埋め尽くされています。日本という極東に生まれた黄色い肌の自分たちもかっこいい音楽が作れるということを示したい気持ちもあって、「blackもwhiteもturn it  upしてyellow」というラインを入れています。

 あと「無駄なライム吐かないダサい靴も履かない」のラインについて、ラップスタア誕生の審査員サイファーのなかでIO(KANDYTOWN)が「ダサい靴と弱音はかない」というリリックを歌っていたのですがこれは意図せず一緒になってしまったのでご了承ください。実質僕がIOかもしれないってことでお願いします。
 小ネタとしては、わかりにくいところで言えば、某aespaや某JP THE WAVYから引用しています。


7.N.W.O.
 タイトルは「NO WAY OUT」の略で逃げ道がないという意味です。
 曲のイメージは、精神的にバッドに入っているときの思考回路です。何やってもダメだなぁって考えて鬱になるときは誰にでもあると思うんですけど、そうやって堂々巡りになって抜け出せない精神状態をモチーフにしています。問題解決の糸口や希望を見つけても他人からの横槍や自己批判などでもっと奥底に沈んでいく様を曲の終盤に表現しています。

 ドロップとしてチョップを入れているのも、曲の冒頭で言っている言葉を細切れにして意味がないようにしていることを表現しています。


8.Glitch
 タイトルの意味は「異常、バグ」です。
 この曲もMCバトルバイブスで書いているので、「お前はザコ、俺の方が強い」的なことを言っています。あとよく題材として用いられている評論家気取りのリスナーについてのディス曲でもあります。日本人の声帯じゃダメだのお前ただのワナビーじゃんみたいなことをガタガタぬかすゴミどもはさっさと○ねと歌っています。

 このアルバムは、1〜8曲目までで一つのまとまりだと考えていて、1曲目が他バンドの影響を受けたHCリスペクトの曲で始まって、最後にEvilgloomの前任ボーカル時の楽曲に近い雰囲気で締めるというのが一つのストーリーになっています。個人的にはコンポーザー乙なことするなぁと思っています。 

 小ネタとしては、U-22MCBATTLE2018、SPIRALとU-Mallowの試合の中でのU-Mallowのパンチライン「ブラックもイエローも切ったらレッド」を少し変えて引用しています。


9.Addictions
 アルバムのタイトルでもある「Addictions」です。
 意味は「中毒者」や「中毒になっている曲」みたいな意味があります。この曲自体の意味合いは前者、アルバムタイトルは後者の意味合いでつけました。

 タイトルはSylarの「soul addiction」からの引用でSylarっぽいフローと歌メロが混ざるサビが作りたいなという気持ちからつけました。が、歌詞を書いているうちにその内容からタイトルの意味合いも変化していきました。

 ここまでの解説では、攻撃的な言葉を使ってリスナーやバンドをディスる内容の曲がほとんどでしたが、僕自身の本当に伝えたいことはこの曲にこそあります。

 この曲は、大志を持って何かに熱中していたけれど、それを志なかばでやめてしまった/やめざるを得なかった人たちに向けたの歌です。
 部活でも仕事でも趣味でもなんでもいいんですけど、先のことも考えずに熱量を持って打ち込めていたことが段々とその熱量が無くなっていったり、プライベートな事情等で紆余曲折あってやめないといけない状況になっていたりでその活動ができなくなる人が少なくないなと思います。自分の大学時代の友だちや先輩で、自分よりも高い熱量を持って音楽をしていた人間が、仕事や生活によって忙殺されて好きだった音楽ができていない状況にある、そんなシーンをたくさん見てきました。

 SNS等でも、コロナなどの影響により活動休止や解散に追い込まれてしまったバンドが、その報告をする場面を何度も目にしました。

 それはもしかしたら、ネガティブな要因で歩みを止めたのかもしれないし、逆に他に打ち込めることができて別の道にいったのかもしれない。全部が嫌になって逃げ道に走ったのかもしれない。それは全て当人たちにしか分からないことです。ですが、彼らの活動に多かれ少なかれ影響を受けた人間は必ずいます。僕もその1人です。世界の長い歴史から見たら、彼らも僕もきっと何者でもないんでしょうが、色んな傷を負って、それでも何者かになろうとする姿は他には代えがたく、とても美しいものだと僕は思います。

 そんな人たちに向けて必ずまたどこかで会いましょうという思いを込めてこの歌詞を書きました。

 中毒になれるぐらい熱量を持って何かに打ち込もうとするときでもいいし、それに疲れて立ち止まった時でもいいので、この曲のことを思い出してくれたら最高に嬉しいです。


以上がボーカル視点での曲解説になります。
駄文×超長文でしたがお付き合いいただきありがとうございました。
Gt.YuUの方ではコンポーザー目線での解説が読めますのでぜひご覧になってみてください。



Demi (Evilgloom/Vo.)

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