村上春樹『クリーム』

先日、いつも劇場に来てくださっているお客様から村上春樹さんの短編小説集『一人称単数』をいただきました。
読んだ証として印象に残った一編について感想を書きます。

あらすじ

毎日暇を持て余していた浪人生の主人公は、小さい頃に同じピアノ教室に通っていた女の子からピアノリサイタルの招待状を受け取る。

特に親しくしていたわけではないが、好奇心に負けて招待状に記された日時に従って会場に向かう。

しかし、その会場でその日コンサートが行われる気配は全くなく、混乱した主人公はひとまず近くの公園に腰を下ろす。

するとそこで、不条理なことを言う老人に出会う。

感想

公園で出会うこの老人は急に「中心がいくつもあり、外周を持たない円のことを思い浮かべられるか?」と問う。
円の言わばアイデンティティでもある中心、外周。それらを持たない円。そんなものあるわけがない。
お名前を出すのは大変恐縮ですが、デルマパンゲさんの数字のネタを思い出しました。

さらに老人は「そういうことを考え続けることそのものがクリームや」と続ける。脈絡なく放り込まれるクリーム。不条理は不条理でも普遍的な話をしているかと思いきや、急にローカルなクリーム。
大富豪をしていたときに、7を出した友達が急にカードを1枚押し付けてきたときのことを思い出しました。

これらを総合的、好意的に解釈すると、結果ではなく過程に意味があるという教えだと思いました。
つまり映画を倍速で観る不届き者は根絶やしにされなければなりません。

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