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教育視察ツアーin韓国 2016 Report#2

さて、2日目の本日。午前中の訪問先は『ソンミサン学校』です。
この学校は、ソンミサンマウルというコミュニティによって設立された代案学校。日本のきのくに子どもの村学園や東京シューレとも交流があり、韓国の代案学校の中でも名の知れたところの1つです。
到着すると、スタッフのサイダーさん(ニックネームで呼び合う文化とのこと)と12年生(高校3年生)の6名の生徒さんたちが出迎えてくれ、学校の成り立ちやカリキュラムのこと、自分たちの学びの経験やこの先の進路のことを教えてくれました。

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この学校は、『ソンミサンマウル』というコミュニティによって設立されました。このソンミサンマウルは共働きの親たちの共同保育の取り組みに端を発し、自分たちの暮らしを自分たちでよりよく、持続可能にしていくために、アレルギーの子どもたちが安心して食べられるアイスクリーム屋さん、住居に困っている若者のシェアハウス、エネルギーを自給するためのソーラー発電など、「こんなのあったらいいな」「もっとこんな暮らしがいいな」というアイデアをソンミサンというエリアを中心に実現していっているネットワークのようなものです。テーマ(理念)で集まったコミュニティでもあり、でもこのエリアを中心にした活動でもあるので地縁コミュニティでもある、という不思議な共同体。
その取り組みの1つとしてできたこの学校で、生徒さんたちは自然と遊び、暮らしの術を学び、まちづくりと一体となった生き方創造の実践を行なっています。学校にいる間も、暮らしづくりが学びなのだという感じなので、卒業してもその延長線上でソンミサンマウルで働き暮らしていくことができるのだそうです。自分たちのコミュニティのことを、淡々と、でも自分の言葉で語ってくれる生徒さんたちの姿が印象的でした。

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ソンミサンマウルの食堂で、ビュッフェ形式のおいしい韓国の家庭料理をいただいた後は、地下鉄に乗り、『青年ハブ』へ。
『青年ハブ』は、若者たちが抱える様々な問題を、若者たち自身の力を生かして解決していくことを目指してつくられたソウル市立の施設です。
日本同様、韓国でも若者たちは様々な問題を抱えています。例えば、就職先がない、貸与奨学金の返済のために卒業後も苦しい、家賃の高騰で家がないなどという問題です。引きこもりもあります。(余談ですが韓国でも引きこもりは「ヒキコモリ」と言い、日本語がそのまま韓国でも同じ意味で使われています。)

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しかし、青年ハブでは、若者を"問題にさらされている人"ではなく、"社会の問題を解決できる人"と見ます。若者を支援することで社会の問題を1つずつ解決できる、と考えているのだそう。
『青年ハブ』は、それ自体が何か取り組みを行なっているというわけではなく、「資源を提供する」「資源と資源をつなぐ」という役割を担っている、いわゆる中間支援のプラットフォームです。
具体的には、若者たちのグループ活動やプロジェクト立ち上げへの助成、シェアオフィスなど活動空間の提供、仕事づくりや次のステップにしっかりつながることを大事にしたインターンシップ、若者自身による若者施策への政策提言活動、などが行われています。
空間は工夫がこらされ、洗練されています。空間の使い方に関しても、「これはやっちゃだめ」と禁止したりルールや仕組みで縛るのは極力避け、「やってみたい」と思ったことを「どうぞどうぞ」「どんどんやろう」と後押しできるような文化をつくることを意識しているとのこと。過去にも、勝手に目立つところにポスター掲示が始まってそれが定着したり、ビニールと木材を持ってきた人たちが「屋内に小屋をつくりたい」と言ってそれが実現したり…と若者発信でいろいろなことが起こってきたそうです。笑

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最後は、『平和教育プロジェクトMOMO』
もともと『青年ハブ』内のシェアオフィスにあった団体ですが、今は同じ建物の3Fに移った、ということで私たちも上階へ移動。
素敵なオフィスで、「こんなところで働きたい〜」と感嘆の声も漏れます。

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『MOMO』は、平和教育の普及に取り組んでおり、教育者をトレーニングするプログラムを主催したり出前したりするかたちで実施しています。『青年ハブ』の中に少し前までオフィスがあっただけあって、メンバーの皆さんまだ20代・30代と若い!
"P.E.A.C.E pedagogy"という理念を掲げ、体験やアクティビティ、ワークを通して、「平和の感受性」を育てることによって、社会・世界の変容を起こすことを目指して活動をしています。
 
ちなみにP.E.A.C.Eとは、これらのことの頭文字です。

P:Participatory:参加して学ぶこと
E:Exchange:交流して学ぶこと
A:Artistic-Cultural:芸術的・文化的に学ぶこと
C:Critical- Creative:クリティカル・創造的に学ぶこと
E:Estranging:見慣れたものを違う視点で捉え直すこと

団体の活動についてレクチャーを受けた後は、実際に普段やっているワークの超短縮バージョンを無理を言って体験させていただきました。
詳しく解説するのは難しいですが、体を使ったアクティビティを通して、社会の構造や人と人との関係性などについて、頭だけでなく身体感覚や感情も含めて、見つめる時間になりました。

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ということで、大変長くなってしまいましたが、こんな感じで盛りだくさんの視察の日々を過ごしております。
この後、別投稿で振り返りセッションの様子も少しレポートします。
 
(2016/03/28 投稿: 武田緑)